関数型言語 (カン スウ ガタ ゲンゴ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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関数型言語 (カン スウ ガタ ゲンゴ) の読み方

日本語表記

関数型言語 (カン スウ ガタ ゲン ゴ)

英語表記

Functional programming language (ファンクショナルプログラミングラングウィッジ)

関数型言語 (カン スウ ガタ ゲンゴ) の意味や用語解説

関数型言語とは、プログラムの実行を数学的な「関数」の評価の連続として捉えるプログラミングパラダイムに基づく言語である。これは、プログラムの状態を変化させる命令の連続として捉える「命令型プログラミング」とは対照的なアプローチだ。関数型言語では、プログラムの中心にあるのは、入力値を与えると必ず同じ出力値を返す「純粋関数」であり、その実行によってプログラムの状態が直接的に変化することは避ける。この性質は「副作用がない」と表現され、データの不変性(一度作られたデータは変更されない性質)を重視する。これにより、コードの予測可能性が高まり、特に複数の処理が同時に実行される並行処理において、バグの発生を抑制しやすくなるため、現代の複雑なシステム開発において注目されている。 関数型プログラミングの根幹をなすのは「純粋関数」の概念である。純粋関数とは、以下の二つの条件を満たす関数を指す。第一に、同じ入力値が与えられれば、常に同じ出力値を返す。これは数学の関数が持つ性質と全く同じであり、プログラムの実行順序や外部の状態に結果が左右されないことを意味する。第二に、関数の実行がプログラムの外部の状態を一切変更しない。例えば、グローバル変数の値を変更したり、ファイルに書き込んだり、画面に何かを表示したりといった操作は行わない。このような操作は「副作用」と呼ばれ、純粋関数は副作用を持たない。純粋関数によって記述されたコードは、その動作が極めて予測しやすく、単体テストが容易であり、バグの特定や修正も格段に楽になる。 純粋関数がもたらす重要な特性に「参照透過性」がある。参照透過性とは、ある式をその式が評価された結果の値で置き換えても、プログラム全体の動作が変わらない性質のことである。純粋関数は、常に同じ入力に対して同じ出力を返すため、その呼び出しを結果の値で置き換えることができ、参照透過性が保証される。この性質は、コードの読みやすさや理解しやすさを向上させるだけでなく、コンパイラがプログラムの最適化を行う上でも非常に有利に働く。 データの「不変性」も関数型言語の重要な特徴の一つだ。不変性とは、一度作成されたデータは後から変更できないという原則である。もしデータを変更したい場合は、元のデータを基にして新しいデータを作成し、その新しいデータを使う。これは、命令型プログラミングで一般的に行われる、既存の変数の値を直接変更する「可変性」とは異なるアプローチだ。不変なデータは、複数の処理が同時にそのデータにアクセスしようとしたときに、意図しない変更による競合状態(データレース)が発生するリスクを根本的に排除する。これにより、並行処理プログラミングの安全性が大幅に向上し、デバッグの複雑さが軽減される。 「高階関数」は、関数型言語の表現力を高める強力な機能である。高階関数とは、関数を引数として受け取ったり、関数の戻り値として別の関数を返したりできる関数のことだ。これにより、共通の処理パターンを抽象化し、より柔軟で再利用性の高いコードを書くことが可能になる。例えば、リストの各要素に同じ操作を適用したり(`map`に相当)、特定の条件を満たす要素だけを抽出したり(`filter`に相当)といった処理を、簡潔な記述で実現できる。これにより、コードの記述量が減り、意図が明確になるため、保守性が向上する。 さらに、「遅延評価」という評価戦略を採用する関数型言語もある。これは、式が必要とされるまで評価を遅延させる方式である。例えば、無限リストのような大きなデータ構造を定義しても、実際にその要素が必要とされるまでメモリを消費したり計算を実行したりしない。これにより、特定のケースでパフォーマンスを向上させたり、メモリ効率を高めたりすることが可能になる。 関数型言語が現代のソフトウェア開発で再評価されている主な理由は、前述の特性がもたらす「並行・並列処理との相性の良さ」と「コードの信頼性・保守性の向上」にある。マルチコアCPUが一般的になり、複数の処理を同時に実行する並行処理が求められる現代において、副作用のない純粋関数と不変なデータ構造は、複雑な同期メカニズムを設計する必要なく、データ競合のリスクを低減する。結果として、より安全で高速なシステム構築に貢献する。また、予測可能なコードはテストとデバッグを容易にし、大規模なシステムにおけるバグの混入を防ぎ、長期的な保守運用コストの削減にもつながる。 代表的な関数型言語には、Haskell、Lisp、Erlang、Scala、F#、Clojureなどがある。これらの言語は、純粋関数型プログラミングを全面的に採用しているものもあれば、命令型プログラミングの要素と組み合わせた「多パラダイム言語」として提供されているものもある。また、JavaScript、Python、Javaといった広く使われている言語にも、ラムダ式やストリームAPIのような関数型プログラミングの要素が取り入れられており、その思想は主流のプログラミングにおいても影響力を増している。システムエンジニアを目指す上で、関数型言語の基本的な考え方を理解しておくことは、現代の複雑なシステムを設計・開発するための重要な視点となるだろう。

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