ゲーム理論 (ゲームリョウリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ゲーム理論 (ゲームリョウリ) の読み方
日本語表記
ゲーム理論 (ゲームリロン)
英語表記
Game Theory (ゲームセオリー)
ゲーム理論 (ゲームリョウリ) の意味や用語解説
ゲーム理論とは、複数のプレイヤーが互いに影響しあう状況下で、各プレイヤーが自身の利益を最大化するためにどのような行動をとるべきかを分析する理論体系のことである。元々は経済学で発展したが、政治学、社会学、生物学、情報科学など、幅広い分野に応用されている。システムエンジニアリングにおいても、ネットワーク設計、リソース管理、セキュリティ対策など、様々な場面で役立つ考え方である。 ゲーム理論の基本的な構成要素は、プレイヤー、戦略、利得の3つである。プレイヤーとは、意思決定を行う主体のことである。個人、企業、国家などが該当する。戦略とは、プレイヤーがとりうる行動の選択肢のことである。例えば、ある企業が新製品を投入するかどうか、ある人が会議に出席するかどうかなどが戦略に相当する。利得とは、各プレイヤーが戦略を選択した結果として得られる利益や損失のことである。利得は数値で表現されることが多い。 ゲーム理論は、ゲームを協力ゲームと非協力ゲームの2つに大きく分類できる。協力ゲームでは、プレイヤー同士が協力して共同の利益を目指す。例えば、複数の企業が合併して新たな事業を始める場合などが協力ゲームに該当する。一方、非協力ゲームでは、各プレイヤーが自身の利益を最大化するために独立して行動する。例えば、複数の企業が市場で競争する場合などが非協力ゲームに該当する。システムエンジニアリングで応用されるのは、主に非協力ゲームである。 非協力ゲームの中で最も有名なのは、囚人のジレンマである。囚人のジレンマとは、2人の容疑者が別々に取り調べを受けている状況を想定したゲームである。各容疑者は、黙秘するか、自白するかのいずれかの戦略を選択できる。もし2人とも黙秘すれば、軽い罪で済む。もし2人とも自白すれば、重い罪になる。もし片方が黙秘し、もう片方が自白すれば、自白した方は無罪放免となり、黙秘した方は最も重い罪になる。この状況下では、各容疑者は相手がどのように行動するかに関わらず、自白する方が自身の利益を最大化できる。なぜなら、相手が黙秘していれば自白することで無罪放免となり、相手が自白していれば自白することで重い罪を回避できるからである。しかし、2人とも自白すると、2人とも黙秘した場合よりも悪い結果になる。これが囚人のジレンマである。 システムエンジニアリングにおける応用例として、ネットワークの輻輳制御を考えてみよう。各ノードは、自身のトラフィックを送信する速度を調整することで、ネットワーク全体のパフォーマンスに影響を与える。各ノードが自身の利益だけを考えて過剰にトラフィックを送信すると、ネットワーク全体が輻輳し、全体のパフォーマンスが低下する可能性がある。これは囚人のジレンマと似た構造を持っている。各ノードが協力してトラフィックを調整することで、ネットワーク全体のパフォーマンスを向上させることができる。 また、セキュリティ対策においてもゲーム理論が応用できる。攻撃者と防御者は、それぞれ自身の利益を最大化するために戦略を選択する。攻撃者は、システムの脆弱性を発見して攻撃することで利益を得ようとする。防御者は、脆弱性を修正したり、侵入検知システムを導入したりすることで、攻撃を防ごうとする。この状況は、攻撃者と防御者の間の非協力ゲームとして捉えることができる。ゲーム理論を用いることで、防御側は攻撃者の行動を予測し、より効果的なセキュリティ対策を講じることができる。例えば、攻撃者が最も可能性の高い攻撃経路を特定し、その経路に対する防御を強化するなどの対策が考えられる。 さらに、クラウドコンピューティングにおけるリソース割り当てもゲーム理論の応用例である。複数のユーザーがクラウドのリソースを共有する場合、各ユーザーは自身のニーズに応じてリソースを要求する。クラウドプロバイダーは、各ユーザーの要求を満たしつつ、全体のリソース利用効率を最大化する必要がある。この状況は、各ユーザーが自身の利得(パフォーマンス)を最大化しようとする非協力ゲームとしてモデル化できる。ゲーム理論を用いることで、最適なリソース割り当て戦略を導き出すことができる。 このように、ゲーム理論は、システムエンジニアリングにおける様々な問題解決に役立つ。特に、複数の主体が互いに影響しあいながら意思決定を行う状況においては、ゲーム理論的な分析が有効である。ゲーム理論を理解することで、より戦略的で効果的なシステム設計や運用が可能になる。