ガベージコレクション (ガーベージコレクション) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ガベージコレクション (ガーベージコレクション) の読み方
日本語表記
ガーベージコレクション (ガーベージコレクション)
英語表記
Garbage Collection (ガーベージコレクション)
ガベージコレクション (ガーベージコレクション) の意味や用語解説
ガベージコレクションは、プログラムが動的に確保したメモリ領域のうち、プログラムから参照されなくなった不要な領域を自動的に検出し、解放して再利用可能な状態に戻す機能である。英語ではGarbage Collectionと表記され、しばしばGCと略される。Java、Python、C#、JavaScriptといった現代的なプログラミング言語の多くがこの機能を備えている。ガベージコレクションの主な目的は、開発者が手動で行うメモリ管理の負担を軽減し、メモリ関連のバグを未然に防ぐことにある。手動でのメモリ管理では、不要になったメモリを解放し忘れることで発生する「メモリリーク」や、既に解放したメモリを再度解放しようとする「二重解放」といった、発見や修正が困難な問題を引き起こすリスクが常に伴う。ガベージコレクションはこれらの処理を自動化することで、開発者がアプリケーションのロジック開発に集中できる環境を提供する。 ガベージコレクションの動作原理は、「到達可能性」という概念に基づいている。プログラムにおいて、グローバル変数や現在実行中のメソッド内にあるローカル変数など、確実にアクセスできるメモリ上の起点が存在する。これらを「ルート」と呼ぶ。ガベージコレクタは、このルートから参照を一つずつたどっていき、到達できるオブジェクトを「生存しているオブジェクト」と判断する。一方で、どのルートからたどっても到達できないオブジェクトは、プログラムから今後アクセスされる可能性がない「不要なオブジェクト」、すなわち「ガベージ」と見なされる。この到達不可能なオブジェクトが解放の対象となる。 ガベージコレクションを実現するための具体的なアルゴリズムは複数存在するが、その基礎となる代表的なものに「マーク&スイープ」方式がある。この方式は二つのフェーズで構成される。最初の「マークフェーズ」では、前述のルートから参照をたどり、到達可能な全ての生存オブジェクトに印(マーク)を付けていく。次の「スイープフェーズ」では、メモリ全体を走査し、マークが付いていないオブジェクト、つまりガベージを解放して空き領域として回収する。この方法は単純で実装しやすいが、解放されたメモリ領域が飛び飛びになる「断片化(フラグメンテーション)」が発生しやすく、大きな連続したメモリ領域の確保が困難になる場合があるという課題を持つ。 断片化の問題を解決するアルゴリズムとして「コピー」方式がある。この方式では、メモリ空間を二つの同じ大きさの領域(From空間とTo空間)に分割する。新しいオブジェクトはFrom空間に確保される。ガベージコレクションが実行されると、From空間にある生存オブジェクトだけがTo空間にコピーされる。その後、From空間に残っているオブジェクトは全てガベージと見なされ、From空間全体が一括でクリアされる。これにより、To空間には生存オブジェクトが詰まった状態で配置され、断片化は完全に解消される。ただし、常にメモリ領域の半分しか使用できないため、メモリ使用効率が悪いという欠点がある。 マーク&スイープの断片化問題と、コピー方式のメモリ効率の問題を両立させるアプローチとして「マーク&コンパクト」方式が考案された。この方式のマークフェーズはマーク&スイープと同じで、生存オブジェクトに印を付ける。しかし、スイープフェーズの代わりに「コンパクトフェーズ」を実行する。コンパクトフェーズでは、マークされた生存オブジェクトをメモリの一方に詰めて移動させ、断片化された空き領域を一つにまとめる。これにより、大きな連続した空き領域を確保できる。オブジェクトの移動コストがかかるものの、メモリ効率と断片化解消を両立できる。 近年の多くのガベージコレクション実装では、これらの基本的なアルゴリズムを組み合わせた「世代別ガベージコレクション」が採用されている。これは「多くのオブジェクトは生成されてから短い時間で不要になる」という経験則に基づいた最適化手法である。メモリを、新しく生成されたオブジェクトを配置する「若い世代領域」と、複数回のガベージコレクションを生き延びたオブジェクトを配置する「古い世代領域」に分割する。若い世代領域では、オブジェクトがすぐにガベージになりやすいため、コピー方式を用いたガベージコレクション(マイナーGC)が頻繁に、かつ高速に実行される。ここで生き残ったオブジェクトは古い世代領域に移動する。古い世代領域には長期間生存するオブジェクトが溜まるため、マーク&スイープやマーク&コンパクトを用いたガベージコレクション(メジャーGCまたはフルGC)が、より低い頻度で実行される。これにより、システム全体としてのガベージコレクションの効率を大幅に向上させることができる。 ガベージコレクションは非常に便利な機能だが、パフォーマンス上の注意点も存在する。代表的なものが「Stop-the-World」と呼ばれる現象である。これは、ガベージコレクションが正確にメモリ状態を把握するために、アプリケーションの全ての処理(スレッド)を一時的に停止させることを指す。この停止時間が長くなると、ユーザーの操作に対する応答が遅れたり、システムの処理が滞ったりする原因となる。この問題を軽減するため、ガベージコレクションの処理を複数のCPUコアで並列実行する「パラレルGC」や、アプリケーションの処理と並行してガベージコレクションの一部を実行する「コンカレントGC」といった、Stop-the-Worldの時間を極力短くするための高度な技術が開発されている。システムエンジニアは、担当するシステムの特性を理解し、必要に応じてヒープサイズや使用するGCアルゴリズムといったパラメータを調整(チューニング)することで、ガベージコレクションによるパフォーマンスへの影響を最小限に抑える役割を担うことがある。このように、ガベージコレクションはメモリ管理を自動化する強力な仕組みであるが、その内部動作と特性を理解することは、高性能で安定したシステムを構築する上で不可欠である。