ジオメトリ (ジオメトリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ジオメトリ (ジオメトリ) の読み方
日本語表記
ジオメトリ (ジオメトリ)
英語表記
geometry (ジオメトリ)
ジオメトリ (ジオメトリ) の意味や用語解説
ジオメトリとは、IT分野において、点、線、面といった空間的な形状や位置関係を表現するデータの総称である。この用語は、元来、数学の一分野である「幾何学(geometry)」に由来し、図形の性質や空間における配置を研究する学問を指す。ITの文脈では、この数学的な概念をデジタルデータとして具現化し、コンピューターで処理可能にしたものを指す。特に、地理情報システム(GIS)、空間データベース、コンピューターグラフィックス(CG)、CAD(Computer-Aided Design)といった分野で頻繁に用いられる重要な概念である。 詳細に説明すると、ジオメトリは物理的な世界、あるいは仮想的な世界の形状や位置を、特定のデータ構造を用いて記述する。これにより、私たちは現実世界のオブジェクトをデジタル空間上で表現し、分析、操作、可視化することが可能となる。 地理情報システム(GIS)や空間データベースの文脈では、ジオメトリは地球上のあらゆる地理的特徴を表現するための基本要素となる。最も基本的なジオメトリの種類として、以下のものが挙げられる。 まず、「点(Point)」がある。これは緯度と経度(あるいはX座標とY座標)の単一の組によって表現される、位置を持つ最小単位である。例えば、特定の建物の場所、街灯の位置、観測地点などが点として表現される。 次に、「線(LineStringまたはPolyline)」がある。これは複数の点(頂点)を順に結んだものである。道路、河川、鉄道、送電線、国境線の一部など、線状の地理的特徴を表現するために用いられる。線の各点は順番に並べられ、それらの点の間にセグメントが形成されることで、連続した形状が定義される。 そして、「面(Polygon)」がある。これは閉じた線(リング)によって囲まれた領域を表現する。土地の区画、建物、湖、国境、行政区域など、面積を持つ地理的特徴を表すのに適している。面は、その境界線によって明確に定義され、内部と外部を区別する。また、中抜きされた形状(ドーナツ状の湖島など)を表現するために、内部リング(ホール)を持つことも可能である。 これらの基本的なジオメトリは、さらに複合的なジオメトリを形成することもできる。「マルチポイント(MultiPoint)」は複数の点の集合を、「マルチラインストリング(MultiLineString)」は複数の線の集合を、「マルチポリゴン(MultiPolygon)」は複数の面の集合を意味する。これらは、例えば、点在する複数の島々を一つの地理的特徴として扱いたい場合や、複数の道路セグメントからなる複雑な道路網を表現したい場合などに利用される。これら全てを包括的に「ジオメトリコレクション(GeometryCollection)」と呼ぶこともある。 空間データベースでは、これらのジオメトリデータは専用のデータ型として格納される。例えば、PostGISのようなオープンソースの空間データベース拡張機能では、Geometry型やGeography型が提供され、空間データの効率的な格納、インデックス作成、そして空間クエリの実行を可能にする。これにより、「特定の地点から半径1km以内にある建物を検索する」といった空間的な検索や、「二つの土地の重なり具合を計算する」といった空間分析が可能になる。 これらのジオメトリデータの表現には、共通の標準規格が用いられることが多い。Open Geospatial Consortium (OGC) が定めるSimple Features Access (SFA) は、ジオメトリの表現と操作に関する国際的な標準の一つである。この標準に基づき、Well-Known Text (WKT) や Well-Known Binary (WKB) といったデータ形式が定義されており、異なるシステム間での空間データの相互運用性を保証する上で重要な役割を果たしている。WKTは人間が読解しやすいテキスト形式であり、WKBはコンピューターが効率的に処理できるバイナリ形式である。 一方、コンピューターグラフィックス(CG)の分野では、ジオメトリは3Dモデルの形状を構成する要素を指す。ここでは、頂点(Vertex)、辺(Edge)、面(Face)が基本的なジオメトリ要素となる。3Dモデルの多くは、これらの要素からなるポリゴンメッシュ(多角形の網目)として表現される。頂点は3次元空間における位置(X, Y, Z座標)を持ち、辺は2つの頂点を結び、面は3つ以上の辺で囲まれた領域(通常は三角形や四角形)を構成する。これらのジオメトリを組み合わせることで、複雑なキャラクター、建築物、風景などの3Dオブジェクトがデジタル空間上に構築される。CGにおけるジオメトリは、モデリングソフトウェアで作成され、レンダリング(画像生成)やアニメーション、物理シミュレーションの基盤となる。 CADソフトウェアにおいても、ジオメトリは設計図や部品の形状をデジタルデータとして表現するために不可欠である。直線、円弧、円、楕円、スプライン曲線、平面、ソリッド(立体)などのジオメトリが用いられ、精密な寸法や形状情報を持つ製品設計や建築設計に活用される。 まとめると、ジオメトリとは、ITの各分野において、現実世界や仮想世界の空間的な形や位置をデジタルデータとして表現し、コンピューター上で処理可能にするための基本的な概念であり、その表現形式は用途に応じて多様である。点、線、面といった基本的な要素から、それらを組み合わせた複雑な構造まで、ジオメトリは空間情報の効率的な管理と高度な利用を可能にする。