ゲッターメソッド (ゲッターメソッド) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ゲッターメソッド (ゲッターメソッド) の読み方
日本語表記
ゲッターメソッド (ゲッターメソッド)
英語表記
getter method (ゲッターメソッド)
ゲッターメソッド (ゲッターメソッド) の意味や用語解説
ゲッターメソッドとは、オブジェクト指向プログラミングにおいて、クラスが内部に保持しているデータ、すなわちフィールドの値を取得するために用いられるパブリックなメソッドである。一般的に「getter」と略されたり、値設定用のセッターメソッドと合わせて「アクセサメソッド」と呼ばれたりすることもある。その主な目的は、クラスの外部から内部データへ直接アクセスすることを防ぎ、定められた手続きを通して安全にデータを読み取らせることにある。 このゲッターメソッドの役割と必要性を理解するためには、オブジェクト指向における重要な基本原則である「カプセル化」の概念を先に把握することが不可欠である。カプセル化とは、データとそのデータを操作する手続きを一つのオブジェクトにまとめ上げ、オブジェクトの内部構造やデータを外部から隠蔽する考え方である。具体的には、クラスのフィールド(インスタンス変数)を、外部から直接参照したり変更したりできないように、`private` などのアクセス修飾子を用いてアクセスを制限する。これにより、データが意図しない形で書き換えられることを防ぎ、データの整合性を保護することができる。また、クラスの内部実装を外部から切り離すことで、将来的に内部の仕様変更が必要になった場合でも、外部のプログラムへの影響を最小限に抑えることができ、ソフトウェアの保守性や拡張性を高める効果がある。 しかし、フィールドを `private` にして完全に隠蔽してしまうと、クラスの外部からその値を知りたい場合に一切アクセスできなくなってしまう。そこで登場するのがゲッターメソッドである。ゲッターメソッドは `public` なメソッドとして定義され、外部からの呼び出しに応答する窓口の役割を果たす。このメソッドの内部で `private` なフィールドの値を返し、外部のプログラムにその値を間接的に提供する。これにより、カプセル化の原則を遵守し、データを保護しながらも、外部に対して必要な情報だけを安全に公開することが可能になる。 ゲッターメソッドの命名には一般的な規約が存在する。多くの場合、「get」という接頭辞の後に、対象となるフィールド名をキャメルケースで続けた形式が採用される。例えば、「userName」という名前のフィールドがあれば、そのゲッターメソッドは「getUserName()」という名前になる。この命名規則は、JavaBeansの仕様をはじめとする多くのプログラミング言語やフレームワークで標準的な慣習として定着しており、コードの可読性を高める上で重要な役割を担っている。 ゲッターメソッドを導入することには、単に値を取得させる以上の利点がある。第一に、フィールドへのアクセスを読み取り専用に制限できる点である。フィールドへの値の設定を行うセッターメソッドを用意せず、ゲッターメソッドのみを公開すれば、そのフィールドの値は外部から変更することができなくなり、不変なデータとして扱うことが保証される。これは、システムの安定性を確保する上で極めて重要である。第二に、値を返す際に何らかの加工や処理を施すことができる点も利点として挙げられる。例えば、内部的には数値データとして保持している値を、外部に返す際には特定の書式を持つ文字列に変換したり、複数のフィールド値を組み合わせて一つの算出結果として返したりすることが可能である。これにより、クラスの利用者は内部の複雑なデータ構造を意識することなく、必要な形式でデータを取得できる。第三に、前述のカプセル化の利点とも重なるが、内部実装の変更に強いという特性を持つ。将来、フィールドのデータ型や保持方法を変更したとしても、ゲッターメソッドの戻り値の型とメソッド名さえ維持されていれば、そのクラスを利用している外部のコードに修正を加える必要はない。ゲッターメソッドが内部の変更を吸収する緩衝材の役割を果たすため、システムの柔軟性と保守性が向上する。 対になる概念として、フィールドに値を設定するためのセッターメソッドが存在する。ゲッターメソッドが値の「取得」を担うのに対し、セッターメソッドは値の「設定」を担う。この二つを適切に組み合わせることで、フィールドへのアクセスをきめ細かく制御できる。ゲッターメソッドとセッターメソッドの両方を提供すれば読み書き可能なフィールドとなり、ゲッターメソッドのみであれば読み取り専用、セッターメソッドのみであれば書き込み専用となる。システムエンジニアは、クラスを設計する際に、各データがどのように扱われるべきかを考慮し、これらのメソッドを適切に定義することが求められる。ゲッターメソッドは、オブジェクト指向プログラミングにおけるデータ保護と柔軟なシステム設計を実現するための基本的ながらも非常に強力な仕組みである。