グローバルサーバロードバランシング (グローバルサーバロードバランシング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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グローバルサーバロードバランシング (グローバルサーバロードバランシング) の読み方

日本語表記

グローバルサーバーロードバランシング (グローバルサーバーロードバランシング)

英語表記

Global Server Load Balancing (グローバルサーバーロードバランシング)

グローバルサーバロードバランシング (グローバルサーバロードバランシング) の意味や用語解説

グローバルサーバロードバランシングとは、複数の地理的に離れたデータセンターやクラウドリージョンにまたがるサーバ群に対し、インターネットからのアクセスを効率的かつ賢く振り分ける技術である。一般にGSLB(Global Server Load Balancing)と略されることが多い。これは単一のデータセンター内で複数のサーバに負荷を分散する「ロードバランシング」の概念を、さらに広範囲、すなわち世界規模に拡張したものと理解すると良い。GSLBの主な目的は、ウェブサービスやアプリケーションの可用性を向上させ、ユーザーエクスペリエンスを最適化し、さらに予期せぬ障害や災害に対する回復力を高めることにある。ユーザーからのリクエストを、地理的に最も近いデータセンター、あるいは最も負荷が少なく健全なデータセンターへと誘導することで、応答速度の向上とサービス品質の維持を実現する。 詳細に説明する。現代のITサービスは、国境を越えて多くのユーザーに利用されることが一般的であり、そのサービスを安定して提供するためには、単一のデータセンターに依存することの危険性や限界が顕在化している。例えば、特定の地域での大規模な自然災害や通信障害が発生した場合、その地域にあるデータセンターが機能停止に陥ると、サービス全体が停止してしまう可能性がある。また、地球の反対側にいるユーザーが日本のデータセンターにアクセスする場合、ネットワークの物理的な距離に起因する遅延(レイテンシ)は避けられない。このような課題を解決するために、GSLBは不可欠な技術となっている。 GSLBの基本的な仕組みは、ドメインネームシステム(DNS)と密接に連携することで実現される。ユーザーがウェブサイトにアクセスする際、まずそのドメイン名に対応するIPアドレスをDNSサーバに問い合わせる。このDNS問い合わせの際に、通常のDNSサーバではなく、GSLBの機能を備えたDNSサーバ(またはGSLBアプライアンスが制御するDNSサーバ)が応答を返す。GSLBシステムは、事前に設定された複数のデータセンターにおけるサーバの稼働状況、現在の負荷、ネットワークの遅延時間、地理的な位置情報などをリアルタイムで監視している。これらの情報に基づき、GSLBはユーザーからのDNSクエリに対して、最適なデータセンターのIPアドレスを返す。 最適なデータセンターを決定するためのアルゴリズムには、いくつかの種類がある。例えば、単に順番にIPアドレスを返す「ラウンドロビン」、各データセンターの性能やキャパシティに応じて重み付けを行う「重み付けラウンドロビン」、最もセッション数が少ないデータセンターを選択する「最小コネクション数」、地理的に最も近いデータセンターを選択する「地理ベースルーティング」、あるいは各データセンターで稼働しているサーバの状態を定期的に確認する「ヘルスチェック」の結果に基づき、障害が発生しているデータセンターをルーティング対象から除外するといった方法が用いられる。これらのアルゴリズムや監視結果を組み合わせることで、GSLBは動的に最も適切なサービス提供元を判断し、ユーザーを誘導する。 GSLBを導入することによるメリットは多岐にわたる。第一に、高可用性の確保である。あるデータセンターで障害が発生しても、GSLBは健全な他のデータセンターへ自動的にトラフィックを切り替えることで、サービスの継続性を保つ。これは事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)戦略において極めて重要な要素となる。第二に、パフォーマンスの向上である。ユーザーを地理的に近いサーバに誘導することで、データの転送距離が短縮され、ネットワーク遅延が大幅に削減される。これにより、ウェブページの表示速度が向上し、アプリケーションの応答性が高まるため、ユーザーはより快適にサービスを利用できる。第三に、負荷分散の最適化である。複数のデータセンターにトラフィックを分散させることで、個々のデータセンターにかかる負荷を均等化し、特定のサーバ群が過負荷状態になるのを防ぐ。これにより、システム全体の安定稼働とスケーラビリティが向上する。システム規模を拡大したい場合、単に新たなデータセンターを追加し、GSLBの設定を更新するだけで、容易にサービス容量を拡張できるというメリットもある。 しかし、GSLBの導入には考慮すべき点も存在する。複数のデータセンター間でセッション情報をどのように維持するか、データの整合性をどのように保つかという課題がある。例えば、ユーザーがあるデータセンターでログインし、GSLBによって別のデータセンターに切り替えられた場合、セッション情報が引き継がれていなければ再度ログインを求められるといった問題が発生する可能性がある。これを解決するためには、共有データベースの利用やセッション情報の同期、あるいは特定のユーザーを特定のデータセンターに固定する「セッションアフィニティ」といった対策が必要となる。また、複数のデータセンターを運用するコスト、およびGSLBシステムの導入と管理にかかる複雑さも考慮に入れる必要がある。これらの課題を適切に管理しつつ、GSLBは今日のグローバルなインターネットサービスにおいて、その信頼性と性能を支える重要な基盤技術となっている。

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