グリーンIT (グリーンアイティー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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グリーンIT (グリーンアイティー) の読み方

日本語表記

グリーンIT (グリーンイット)

英語表記

Green IT (グリーンアイティー)

グリーンIT (グリーンアイティー) の意味や用語解説

グリーンITとは、情報技術(IT)の利用において環境への配慮を組み込むという考え方、およびそのための技術や活動全般を指す。地球温暖化や資源枯渇といった環境問題への意識が世界的に高まる中、IT分野においても持続可能な社会の実現に貢献することが求められている。グリーンITには大きく分けて二つの側面が存在する。一つは、IT機器やシステム自体の環境負荷を低減する「Green of IT」であり、もう一つは、ITを活用して社会全体の環境負荷を低減する「Green by IT」である。この二つのアプローチは相互に関連し合いながら、環境問題の解決を目指すものである。 まず「Green of IT」について詳述する。これは、IT機器の消費電力を削減することを中心とした取り組みである。コンピュータやサーバー、ネットワーク機器などは稼働中に多くの電力を消費し、熱を発生させる。特に、多数のサーバーが集積するデータセンターでは、その電力消費量と冷却に必要なエネルギーが膨大なものとなる。この課題に対し、ハードウェアの省電力化が進められている。例えば、CPUやメモリといった半導体部品の製造プロセスを微細化し、より少ない電力で高い性能を発揮できるようにする技術開発が絶えず行われている。また、機器の利用状況に応じて消費電力を動的に制御するパワーマネジメント機能も一般的である。データセンターレベルでは、PUE(Power Usage Effectiveness)という指標を用いてエネルギー効率を評価し、その改善を図る。PUEはデータセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値であり、1.0に近いほど冷却などの付帯設備で消費されるエネルギーが少ないことを示す。具体的な改善策としては、外気を直接利用してサーバーを冷却する外気冷却システムの導入や、サーバーラックの排熱と吸気を分離して冷却効率を高めるホットアイル・コールドアイル方式などが挙げられる。さらに、サーバー仮想化技術も「Green of IT」に大きく貢献する。一台の物理サーバー上で複数の仮想サーバーを稼働させることで、物理的なサーバー台数を削減し、全体の消費電力と設置スペースを大幅に減らすことが可能となる。製品のライフサイクル全体を通じた環境配慮も重要である。製品の製造段階で消費されるエネルギーの削減や、欧州のRoHS指令に代表されるような有害化学物質の使用制限、そして使用済み製品の回収と再利用・再資源化(リサイクル)といった取り組みも「Green of IT」の範疇に含まれる。 次に「Green by IT」は、ITの力を活用して社会や経済活動における環境負荷を低減するアプローチである。ITが持つ情報収集、分析、制御、可視化といった能力を応用し、エネルギーや資源の効率的な利用を促進する。その代表例が、テレワークやWeb会議システムの普及である。これにより、従業員の通勤や出張に伴う人々の移動が減少し、自動車や航空機などが排出する二酸化炭素の削減に繋がる。また、業務プロセスの電子化によるペーパーレス化は、紙の原料となる森林資源の保護や、紙の製造・輸送・廃棄にかかるエネルギー消費を抑制する効果がある。より大規模な例としては、スマートグリッドが挙げられる。これは、ITを用いて電力網を高度化し、電力の需要と供給をリアルタイムで最適化する次世代送電網のことである。各家庭やビルの電力使用量を可視化し、需要が少ない時間帯に電力を融通したり、天候によって発電量が変動する太陽光発電などの再生可能エネルギーを安定的に系統へ組み込んだりすることが可能になる。これにより、エネルギーの無駄をなくし、社会全体のエネルギー効率を向上させることができる。物流分野では、GPSやAIを活用して最適な配送ルートを算出することで、トラックの走行距離を短縮し、燃料消費とCO2排出量を削減する取り組みが進んでいる。農業分野においても、センサーやドローンで農地の状態を精密に把握し、必要な場所に必要な量の水や肥料だけを供給するスマート農業が実用化されており、資源の浪費を防ぎ、環境への影響を最小限に抑えることに貢献している。このように、「Green by IT」は、特定の産業にとどまらず、社会のあらゆる場面で環境負荷を低減する潜在能力を持っている。 グリーンITは、単に環境に優しいという側面に留まらず、企業にとってはエネルギーコストの削減や資源の有効活用といった経済的なメリットにも直結する。また、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの貢献を示す上で、不可欠な経営課題として認識されるようになっている。システムエンジニアを目指す者としては、システムを設計・構築する際に、単に機能や性能、コストだけでなく、そのシステムが稼働中に消費するエネルギーや、ライフサイクル全体で環境に与える影響を考慮する視点が求められる。例えば、よりエネルギー効率の高いハードウェアを選定すること、処理効率の良いアルゴリズムを実装してCPUの負荷を低減すること、クラウドサービスを利用する際にはデータセンターの環境配慮への取り組みを確認することなどが具体的な行動として挙げられる。今後、IoTやAIといった技術がさらに発展することで、社会の様々なデータをリアルタイムで収集・分析し、より高度な最適化が可能になる。これにより、「Green by IT」の可能性は一層広がり、持続可能な社会の実現に向けたITの役割はますます重要になるだろう。

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