グリーン購入 (グリーンコウニュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
グリーン購入 (グリーンコウニュウ) の読み方
日本語表記
グリーン購入 (グリーンコウニュウ)
英語表記
Green purchasing (グリーン パーチェイシング)
グリーン購入 (グリーンコウニュウ) の意味や用語解説
グリーン購入とは、製品やサービスを購入する際に、価格、品質、機能、デザインといった従来の評価軸に加え、「環境」という視点を重視し、環境への負荷ができるだけ小さいものを優先的に選択する取り組みである。単に再生材から作られた製品を選ぶといった個別の行動だけでなく、資源の採取から製造、流通、使用、そして廃棄やリサイクルに至るまで、製品のライフサイクル全体を通して環境負荷を総合的に評価し、判断することがその本質である。この考え方は、国や地方公共団体、企業、そして消費者一人ひとりが持続可能な社会を構築していくための重要な手段として位置づけられている。特にIT業界は、その活動が大量のエネルギー消費と電子機器の廃棄に直結するため、グリーン購入の概念は極めて重要である。システムエンジニアは、顧客へのシステム提案や自社インフラの構築など、業務の様々な場面で機器やサービスを選定する役割を担う。そのため、性能やコストだけでなく、環境性能も考慮に入れた製品選定能力が求められる。 グリーン購入を具体的に実践するための判断基準は多岐にわたるが、その中心にはライフサイクルアセスメント(LCA)という考え方がある。これは、製品の一生涯、すなわち原材料の調達から、製造、使用、廃棄までの各段階で、地球温暖化、資源の枯渇、生態系への影響といった環境負荷を定量的に評価する手法である。この考え方に基づき、IT製品の選定においては、様々な側面からの評価が必要となる。例えば、コンピュータやサーバーといったハードウェアでは、第一に稼働時および待機時の消費電力が重要な評価項目となる。国際的な省エネルギー制度である「国際エネルギースタープログラム」に適合している製品は、電力効率が高いことの客観的な証明となる。また、筐体などに再生プラスチックがどの程度の割合で使用されているか、製品から有害な化学物質が排除されているか(例えば欧州のRoHS指令への準拠)、製品寿命を延ばすための設計や修理のしやすさが考慮されているか、といった点も評価の対象となる。プリンターや複合機であれば、標準で両面印刷機能を備えているか、待機電力を抑えるスリープモードの性能は高いか、使用済みのトナーカートリッジをメーカーが責任を持って回収し、リサイクルする仕組みが確立されているか、といった点が具体的な判断基準となる。 グリーン購入の対象は、物理的なハードウェアに限らない。ソフトウェアやクラウドサービスといった無形のITサービスを選定する際にも、この考え方は適用される。例えば、自社でサーバーを運用するオンプレミス環境からクラウドサービスへ移行する場合、そのクラウドサービスを提供している事業者のデータセンターがどれだけ環境に配慮しているかが重要な選定基準となる。データセンターのエネルギー効率を示す指標としてPUE(Power Usage Effectiveness)があり、この値が理想値である1.0に近いほど、冷却などに使われる電力が少なく、効率的にサーバーが運用されていることを意味する。さらに、データセンターで使用される電力が、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによってどの程度賄われているかも、企業の環境への姿勢を示す重要な指標である。システムエンジニアは、これらの情報を基に、性能やコストだけでなく、環境負荷の観点からも最適なクラウドサービスを選定し、提案することが期待される。 こうしたグリーン購入の取り組みを社会全体で推進するため、日本では「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」、通称「グリーン購入法」が施行されている。この法律は、国や独立行政法人、地方公共団体などの公的機関が物品を調達する際に、環境物品等を優先的に購入することを義務付けたものである。法律では、品目ごとに環境物品と判断するための具体的な基準が定められており、これらは「特定調達品目」および「判断の基準」として公開されている。コンピュータ、サーバー、プリンター、ディスプレイなどのIT関連機器も多数が特定調達品目に含まれており、その判断基準は省エネルギー性能や特定化学物質の含有制限、リサイクル設計など、詳細に規定されている。この法律は本来、公的機関を対象とするものだが、その基準は非常に明確で信頼性が高いため、民間企業が製品選定を行う際の有力なガイドラインとしても広く参照されている。また、製品が環境に配慮されていることを消費者に分かりやすく示すための「エコマーク」や「PCグリーンラベル」といった環境ラベルも、製品選定の際の客観的な目印として機能する。 システムエンジニアにとって、グリーン購入の知識と実践は、単なる環境貢献活動以上の意味を持つ。環境性能に優れた製品は、多くの場合、省エネルギー性能も高い。これは、導入後の電気料金といったランニングコストの削減に直結する。初期の導入コストが多少割高であったとしても、長期的な運用コストや廃棄時のコストまで含めた総所有コスト(TCO)で比較した場合、結果的にグリーン購入製品の方が経済的に有利となるケースは少なくない。したがって、顧客に対して環境負荷の低減と運用コストの削減を両立する提案を行うことは、エンジニアとしての付加価値を高めることに繋がる。このように、グリーン購入は環境、社会、経済の三つの側面から合理性を持つ、現代のシステムエンジニアにとって不可欠な知識体系なのである。