隠しファイル(カクシファイル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

隠しファイル(カクシファイル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

隠しファイル (カクシファイル)

英語表記

Hidden files (ヒドゥンファイルズ)

用語解説

隠しファイルとは、コンピューターのファイルシステム上で、ユーザーが通常操作するファイル一覧に表示されないように設定されたファイルやディレクトリの総称である。これは、特定の属性が付与されているか、特定の命名規則に従っているかのいずれかによって実現される。隠しファイルの主な目的は、システムの安定性を保つこと、ユーザーの誤操作を防ぐこと、そしてファイル一覧の視認性を向上させることにある。例えば、オペレーティングシステムが動作するために不可欠なファイルや、アプリケーションが内部的に使用する一時ファイル、設定ファイルなどは、ユーザーが誤って削除したり変更したりしないよう、通常は隠しファイルとして扱われる。これにより、システムは安定して動作し、ユーザーは必要なファイルに集中して作業を進められる。

Windowsオペレーティングシステムにおいて、隠しファイルは「隠し属性」と呼ばれるファイル属性が付与されたものを指す。この属性が設定されたファイルやフォルダは、エクスプローラーのデフォルト設定では表示されない。ユーザーが隠しファイルを表示するには、エクスプローラーの「表示」タブにある「隠しファイル」のチェックボックスをオンにする必要がある。さらに、Windowsには「保護されたオペレーティングシステムファイルを表示しない」という設定も存在し、これは隠し属性を持つファイルの中でも、特にOSの動作に重要度の高いファイルをさらに強力に隠蔽する機能である。この設定を解除することで、初めて表示される非常に重要なシステムファイルも少なくない。具体的な隠しファイルの例としては、Thumbs.db(画像ファイルのサムネイルキャッシュ)、hiberfil.sys(休止状態のデータが保存されるシステムファイル)、pagefile.sys(仮想メモリとして使用されるページファイル)、$RECYCLE.BIN(ごみ箱の実体)、System Volume Information(システムの復元ポイントなどが保存されるフォルダ)、そしてユーザー設定やアプリケーションデータが格納されるAppDataフォルダなどがある。AppDataフォルダは、ユーザープロファイルごとに存在する隠しフォルダで、その中にはアプリケーションのキャッシュや設定、一時ファイルなどが格納される。これらはシステムの正常な動作やアプリケーションのユーザー設定の保持に不可欠であり、誤った操作を防ぐために隠されている。コマンドプロンプトからは、attribコマンドを使用して隠し属性の付与(attrib +h ファイル名)や解除(attrib -h ファイル名)が可能であり、dir /a:hコマンドで隠しファイルのみを表示できる。

一方、LinuxやmacOSのようなUnix系オペレーティングシステムでは、ファイルやディレクトリ名の先頭にドット(.)が付いているものが、慣習的に隠しファイルとして扱われる。これはファイルシステム自体が「隠し属性」を特別に持っているわけではなく、lsコマンドのようなファイル一覧を表示するツールや、Finderのようなグラフィカルユーザーインターフェースが、ファイル名の先頭がドットで始まるファイルをデフォルトでは表示しないという規則に従っているためである。例えば、lsコマンドは通常ドットファイルを表示しないが、ls -aオプション(all files)を付加することで、ドットで始まるファイルも含めて全てのファイルを表示させることができる。macOSのFinderでは、Command + Shift + .のショートカットキーを押すことで、隠しファイルの表示/非表示を切り替えることができる。これらの隠しファイルは、主にユーザーやシステムの個別の設定情報、アプリケーションのキャッシュ、履歴などが格納される。ユーザーのホームディレクトリには、シェルの設定ファイルである.bashrc.profile、SSHクライアントの設定や秘密鍵が格納される.sshディレクトリ、バージョン管理システムGitの設定ファイルである.gitconfigやリポジトリのメタデータが格納される.gitディレクトリ、各種アプリケーションのキャッシュや設定が格納される.cache.configディレクトリなどが存在する。これらは、ユーザーが特定の環境で作業を行う際のカスタマイズや、アプリケーションの動作に必要な設定を保持しており、多数の設定ファイルでディレクトリが見にくくなるのを避け、かつユーザーの誤操作を防ぐために隠されている。

隠しファイルは、システムやアプリケーションが適切に動作するための重要な要素を多く含んでいるため、その存在と役割を理解することはシステムエンジニアを目指す上で極めて重要である。これらのファイルを安易に削除したり、内容を改変したりすることは、システムの不安定化、アプリケーションの誤動作、あるいは最悪の場合、オペレーティングシステムの起動不能といった深刻な問題を引き起こす可能性がある。特にシステムに不可欠な隠しファイルには、細心の注意を払うべきである。システムエンジニアにとって、トラブルシューティング、ソフトウェアの開発・デプロイ、システムのセキュリティ設定の確認といった多くの場面で、隠しファイルの中身を確認する必要が生じる。例えば、アプリケーションのログファイルが隠しディレクトリ内に存在したり、特定の環境設定が隠しファイルに記述されていたりすることは日常的にある。そのため、必要に応じて隠しファイルを表示し、その内容を正しく理解し、適切に操作する能力は必須となる。また、マルウェアやウイルスの中には、自身の存在をユーザーから隠すために、自身を隠しファイルとして偽装したり、隠しディレクトリ内に潜伏したりするものがある。このような悪意のある隠しファイルを見つけ出し、適切に対処するためにも、隠しファイルの表示方法や、ファイルシステムを深く調査するスキルはセキュリティ対策の観点からも不可欠である。隠しファイルは単に「見えない」ファイルというだけでなく、システムの健全性とセキュリティに深く関わる重要な要素であると理解し、その取り扱いには常に注意を払うべきである。