階層型データベース(カイソウガタデータベース)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

階層型データベース(カイソウガタデータベース)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

かいそうがたデータベース (カイソウガタデータベース)

英語表記

Hierarchical database (ハイアラキカルデータベース)

用語解説

階層型データベースとは、データ構造を木構造で表現するデータベースのことだ。これは、親となるデータと子となるデータが1対多の関係で結びついているのが特徴だ。具体的には、1つの親データに対して複数の子データが存在し、その子データもまた親となり、さらに子データを持つことができる。この構造が階層的に繰り返されることで、データ間の関係性が表現される。

階層型データベースの歴史は古い。初期のデータベース管理システム(DBMS)でよく用いられ、1960年代にIBMが開発したIMS(Information Management System)が代表的な例だ。IMSは、アポロ計画など大規模なプロジェクトで使用され、その信頼性と性能が評価された。しかし、現代においては、リレーショナルデータベースやNoSQLデータベースの登場により、その利用頻度は減少傾向にある。

階層型データベースの構造は、親データと子データを結びつけるポインタによって実現される。各データレコードは、親レコードへのポインタと、最初の子レコードへのポインタを持つ。さらに、兄弟レコード(同じ親を持つレコード)が存在する場合、その兄弟レコードへのポインタも持つ。これらのポインタをたどることで、木構造を辿り、必要なデータにアクセスすることができる。

階層型データベースのメリットとしては、データの検索速度が速いことが挙げられる。これは、木構造を辿ることで、目的のデータに効率的にアクセスできるためだ。特に、階層構造の上位にあるデータから下位にあるデータを辿るような検索に適している。また、データの整合性を保ちやすいという利点もある。親データと子データの関係が明確に定義されているため、データの矛盾が発生しにくい。

しかし、階層型データベースにはデメリットも存在する。まず、データ構造の変更が難しい。一度定義された階層構造を変更するには、データベース全体の再構築が必要になる場合がある。これは、システム開発や運用における柔軟性を損なう要因となる。次に、多対多の関係を表現することが難しい。階層型データベースは、1対多の関係に特化しているため、例えば、1つの商品が複数の顧客に購入されるような、複雑な関係性を表現するには不向きだ。さらに、データの冗長性が高くなる傾向がある。同じデータが複数の場所に重複して格納されることで、ストレージ容量を圧迫する可能性がある。

階層型データベースが適しているのは、組織構造や部品表(BOM)のように、データ間の関係が明確な階層構造で表現できる場合だ。例えば、企業の組織図では、部署と従業員の関係を階層的に表現することができる。また、製品の部品構成を示すBOMでは、製品、部品、素材といった階層構造を表現することができる。これらのケースでは、階層型データベースの検索速度の速さや、データの整合性を保ちやすいというメリットを活かすことができる。

近年では、XMLやJSONといったデータ形式が普及し、階層構造を持つデータを扱うことが多くなった。しかし、これらのデータ形式は、必ずしも階層型データベースに格納されるわけではない。リレーショナルデータベースやNoSQLデータベースでも、これらのデータ形式を扱うことができる。そのため、階層構造を持つデータを扱う場合でも、データベースの選択肢は広くなっている。

階層型データベースは、その構造の単純さから、初期のデータベースシステムで広く利用された。しかし、現代のデータベース技術の進化に伴い、リレーショナルデータベースやNoSQLデータベースといった、より柔軟で拡張性の高いデータベースが主流となっている。システムエンジニアを目指すなら、階層型データベースの基本的な概念を理解しておくことは重要だが、現代のデータベース技術についても幅広く学ぶことが求められる。階層型データベースは、データベース技術の歴史の一部として、その役割を終えつつあると言えるだろう。

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