高周波 (コウシュウハ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
高周波 (コウシュウハ) の読み方
日本語表記
こうしゅうは (コウシュウハ)
英語表記
high frequency (ハイ・フリークエンシー)
高周波 (コウシュウハ) の意味や用語解説
高周波とは、電気信号や電磁波が非常に速い速度で振動する現象、またはその周波数帯域を指す言葉である。日常的に使用される多くのIT機器や通信システムにおいて、その基盤を支える重要な技術要素となっている。例えば、スマートフォンでの無線通信、Wi-Fiによるインターネット接続、Bluetoothデバイスの利用、さらには電子レンジや医療機器に至るまで、高周波の原理が幅広く応用されている。システムエンジニアを目指す上では、高周波がどのような特性を持ち、ITシステムにどのように影響するかを理解することが不可欠となる。 高周波という概念を理解するためには、まず「周波数」の基本的な意味から始める必要がある。周波数とは、波が1秒間に繰り返される回数を表す物理量であり、単位はヘルツ(Hz)で示される。例えば、1秒間に1回振動する波は1Hz、1000回振動する波は1kHz(キロヘルツ)、100万回振動する波は1MHz(メガヘルツ)、10億回振動する波は1GHz(ギガヘルツ)と表現される。人間の耳で聞き取れる音の周波数は数十Hzから約20kHz程度であり、これを可聴周波と呼ぶ。これに対し、高周波は一般的に数MHzから数十GHz、あるいはそれ以上の極めて高い周波数帯域を指す。明確な境界線があるわけではないが、可聴周波よりもはるかに高く、電子回路や電磁波として扱われる周波数を総称して高周波と呼ぶ場合が多い。 高周波の最も顕著な特性の一つは、その短い波長である。周波数と波長は反比例の関係にあり、周波数が高くなるほど波長は短くなる。この短い波長により、高周波は直進性が高く、特定の方向に向けて信号を効率よく送る「指向性」を持つようになる。この性質は、無線通信におけるアンテナ設計において極めて重要となる。また、高周波は単位時間あたりに多くの波を送り出すことができるため、より多くの情報を一度に伝送する能力、すなわち「帯域幅」が広くなる。これが、高速な無線LANや携帯電話の5G通信などで大容量データを迅速に送受信できる理由である。 高周波の伝送においては、いくつかの物理現象が顕著になる。一つは「表皮効果」である。これは、高周波電流が導体の内部ではなく、表面に近い部分に集中して流れる現象である。このため、高周波回路の設計では、導体の太さだけでなく表面積も考慮に入れる必要があり、配線材の選定や基板設計に影響を与える。また、高周波は電磁波としての性質が強いため、電磁誘導や電磁放射が起こりやすくなる。これは、信号がケーブルから外部に漏れたり、逆に外部の電磁ノイズが信号に混入したりする原因となる。そのため、信号の減衰や反射、ノイズ対策が極めて重要となる。信号が伝送路の途中で急なインピーダンス(交流における電気抵抗のようなもの)の変化に遭遇すると、信号の一部が反射して戻ってきてしまい、信号品質の劣化や電力損失を引き起こす。これを防ぐために「インピーダンスマッチング」という技術が用いられる。 IT分野における高周波の応用は多岐にわたる。最も身近なのは「無線通信」であり、Wi-FiルーターとPC間の通信、スマートフォンのモバイルデータ通信、Bluetoothによる周辺機器接続など、現代の情報社会を支える基盤技術である。これらの技術は、特定の周波数帯域(例: 2.4GHz帯、5GHz帯)を高周波として利用し、電波に乗せて情報を伝達している。また、高速な「データ伝送」にも高周波技術が使われている。例えば、ギガビットイーサネットのような有線ネットワークでは、ケーブル内を流れる電気信号が高周波領域に達するため、信号の品質を保つための様々な工夫が凝らされている。さらに、光ファイバー通信においても、電気信号から光信号への変換や、光信号の多重化・分離といった技術に高周波回路が不可欠である。 その他にも、高周波は「レーダー技術」に応用され、航空管制や気象観測、近年では自動運転車の障害物検知などにも利用されている。また、電子機器が動作する際に発生する不要な高周波ノイズ(電磁妨害、EMI)が他の機器に悪影響を与えたり、逆に外部からのノイズによって機器が誤動作したりする問題を扱う「電磁両立性(EMC)」は、高周波技術と密接に関わる分野である。システムエンジニアとしては、機器の選定やシステム設計の際に、EMCの要件を満たす製品を選ぶことや、適切なシールドやフィルタリングを考慮することが重要となる。 高周波技術は、目に見えない形で情報社会の基盤を支えており、システムエンジニアが将来設計するであろうシステムにおいても、その原理や特性を理解することは、トラブルシューティングや最適なシステム構築において非常に役立つ知識となる。高周波特有の現象や課題を考慮した回路設計、機器選定、システム統合能力が求められる場面は今後さらに増えていくだろう。