水平同期信号 (スイヘイドウキシンゴウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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水平同期信号 (スイヘイドウキシンゴウ) の読み方

日本語表記

水平同期信号 (スイヘイドウキシンゴウ)

英語表記

Horizontal Sync (ホリゾンタル シンク)

水平同期信号 (スイヘイドウキシンゴウ) の意味や用語解説

水平同期信号とは、ディスプレイが画像を正しく表示するために不可欠な電気信号の一つである。特に、画面を構成する各行(走査線)の描画開始タイミングを正確に制御し、表示される画像が歪んだり乱れたりすることなく、整然と並べられるように調整する役割を担う。これは、表示装置が画像データを受け取って、それを物理的な画面上に描画する際の「行の区切り」を明確にする合図と考えるとよい。 詳細について説明する。ディスプレイは、私たちが普段見ている一枚の画像を、実際には非常に小さな点の集まり、すなわち画素(ピクセル)の連続として描画している。この画素の描画は通常、画面の左上から始まり、右方向へ、そして一行が終わると次の行の左端へ移動し、再び右方向へという手順を繰り返しながら、画面全体を順次描き進めていく。これを「走査(スキャン)」と呼ぶ。この走査の過程で、ある行の描画が完了し、次の行の描画を開始する際に、その「行の区切り」を示すのが水平同期信号である。 かつてのブラウン管(CRT)ディスプレイの仕組みを例にすると、この役割がより明確になる。CRTディスプレイでは、電子銃から発射された電子ビームが画面の蛍光面に当たり、その当たった点が発光することで画像が描画される。この電子ビームは、コイルによって水平方向と垂直方向に偏向され、画面上を高速で移動する。電子ビームが1本の走査線(行)を左から右へ描き終えると、いったんその光を消して(ブランキング期間)、次の行の左端へと素早く戻る必要がある。この、次の行の左端へ戻る期間を「水平帰線期間」と呼び、この期間の開始タイミングで水平同期信号が送られる。水平同期信号は、電子ビームを水平方向に制御する回路に対して「新しい行の描画を開始する準備をせよ」という指示を出し、ビームを瞬時に画面の左端へ引き戻し、適切な垂直位置へ移動させるトリガーとなる。もしこの信号がなければ、各行の描画開始位置がずれてしまい、画像が斜めに傾いたり、波打ったり、最悪の場合は全く表示されなくなる。 現代の液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OLED)では、CRTのような電子ビームによる走査は行われない。これらのディスプレイは、画素一つ一つが独立して光を制御する仕組みになっている。しかし、コンピューターからディスプレイへ送られる画像データは、依然として走査線ごとのデジタルデータとして構成されている場合が多い。DVI、HDMI、DisplayPortといったデジタルインターフェースを通じて送られる画像データも、本質的には画素の並びを行ごとに区切って伝送する。この際、ディスプレイ内部の表示コントローラが、どのデジタルデータが行の始まりに対応するのか、そのタイミングを正確に識別するために水平同期信号の概念が不可欠となる。デジタルインターフェースでは、多くの場合、画素データと同期信号が統合されたパケット形式で送られるが、その内部処理では、依然として「ある行の画素データの終わりと、次の行の画素データの始まり」を識別するための仕組みが機能している。これにより、ディスプレイは受け取ったデジタル画素データを、画面上の正しい行、正しい位置に正確に配置し、最終的な画像を生成することができるのである。 この水平同期信号が1秒間に何回送られるかを示すのが「水平同期周波数(水平周波数)」であり、単位はキロヘルツ(kHz)で表される。これは1秒間に何本の走査線が描かれるかを示す数値にほぼ相当する。例えば、解像度が1920x1080ピクセル、リフレッシュレートが60Hzのディスプレイの場合、1秒間に約60回、画面全体が書き換えられる。1画面あたり約1080本の走査線(実際には垂直帰線期間があるため、この数値よりやや多くなる)があるため、水平周波数は約60Hz × 1080本 ≒ 64.8kHzとなる。送信側であるグラフィックカードと、受信側であるディスプレイの間で、この水平同期周波数が一致していることが、正常な画像表示のために極めて重要である。 水平同期信号は、ディスプレイとグラフィックカードの間で、表示タイミングを合わせるための基本的な約束事であり、その正確な送受信は安定した画像表示の根幹をなす。この信号が乱れたり、欠損したりすると、画面に表示される画像が不安定になったり、まったく表示されなくなったりする原因となる。現代のシステムでは、ディスプレイが「信号なし」と表示したり、自動調整機能で表示を安定させようと試みたりするが、根本的にこの同期が取れていなければ、適切な画像表示は不可能である。システムエンジニアにとって、ディスプレイ出力のトラブルシューティングを行う上で、このような同期信号の基礎的な概念を理解していることは、問題解決の糸口を見つけるために役立つ。

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