識別子 (シキベツシ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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識別子 (シキベツシ) の読み方

日本語表記

しきべつし (シキベツシ)

英語表記

identifier (アイデンティファイア)

識別子 (シキベツシ) の意味や用語解説

識別子とは、プログラミング言語、データベース、オペレーティングシステムなど、様々な情報システムにおいて、プログラムの要素、データ、リソースなどを一意に区別し、特定するために用いられる名前のことである。コンピューター内部では、これらの要素はメモリのアドレスや抽象的な内部表現で管理されているが、人間が直接それらを理解し、操作することは非常に困難である。そのため、人間が意味を理解しやすいように、各要素に固有の名前を与える必要が生じる。この固有の名前こそが識別子である。識別子が存在することで、システム内で数多く存在する同種の要素の中から、特定のものを正確に指し示し、参照することが可能となる。これはシステムの可読性、保守性、そして正確性を確保する上で極めて重要な役割を担う。識別子が重複すると、どの要素を指しているのかシステムが判断できなくなり、予期せぬ動作やエラーの原因となるため、その一意性は特に重視される概念である。 識別子は、その利用される文脈によって多岐にわたる。プログラミング言語においては、変数を指す変数名、特定の処理をまとめた関数やメソッドの名前、データの構造を定義するクラス名やインターフェース名、あるいは特定の意味を持つ定数の名前などが識別子にあたる。例えば、「userAge」という変数名や「calculateTotal」という関数名は、それぞれ特定のデータや処理を識別する役割を果たす。データベースの世界では、データを格納する「テーブル名」、テーブル内の各項目を示す「カラム名」、データを効率的に検索するための「インデックス名」、特定のデータ集合を表現する「ビュー名」などが識別子として使われる。ファイルシステムにおいては「ファイル名」や「ディレクトリ名」も識別子の一種と捉えることができる。これらの識別子は、それぞれの文脈において対象となる実体を特定し、他のものと区別するために不可欠な存在である。 識別子には、その定義や使用にあたっていくつかの重要なルールと特性が存在する。最も基本的な要件は「一意性」である。しかし、この一意性は絶対的なものではなく、「スコープ」と呼ばれる特定の範囲内で保証される。例えば、ある関数内で定義された変数名と、別の関数内で定義された同じ名前の変数は、それぞれ異なるスコープに属するため、名前が重複していても問題なく共存できる。スコープには、プログラム全体で有効な「グローバルスコープ」や、特定の関数やブロック内でのみ有効な「ローカルスコープ」などがある。 また、識別子の命名には「構文規則」と呼ばれるルールが課せられる。これは、使用できる文字の種類、識別子の先頭に使用できる文字、識別子の長さの制限、そして大文字と小文字を区別するかどうかといった具体的な制約である。これらの規則はプログラミング言語やシステムの種類によって異なるため、使用する環境の仕様を確認することが重要となる。さらに、言語やシステムによっては、特別な意味を持つ「予約語(キーワード)」が存在し、これらを識別子として使用することは禁止されている。例えば、「if」や「for」といった制御構造を示す単語は、多くのプログラミング言語で予約語であるため、変数名として使うことはできない。 識別子を適切に設計することは、システム開発において非常に重要である。良い識別子は、その名前から対象の機能や目的が容易に推測できるような「可読性」の高いものでなければならない。具体的な名前を選ぶことで、何に使われているかが明確になる。また、プロジェクトやチーム内で一貫した「命名規則」を採用することも推奨される。特定のスタイルを統一することで、コード全体の見通しが良くなり、共同開発や将来の保守作業が格段に容易になる。曖昧な名前や誤解を招くような名前は、バグの温床となるだけでなく、コードの理解を妨げ、開発効率を著しく低下させる。したがって、識別子の選定は単なる名前付けの作業にとどまらず、システムの品質と開発効率を左右する重要な設計工程の一部と位置付けられる。

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