イミュータブル(イミュータブル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

イミュータブル(イミュータブル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

不変 (フヘン)

英語表記

immutable (イミュータブル)

用語解説

イミュータブルとは、プログラミングにおいて「変更不能」という意味を持つ重要な概念である。特にオブジェクト指向プログラミングや関数型プログラミングにおいて頻繁に登場し、システムの安全性や予測可能性を高めるために利用される。

イミュータブルなオブジェクトとは、生成された後にその状態(内部のデータ)を変更できないオブジェクトのことである。一度生成されると、その値は決して変化しない。対照的に、ミュータブルなオブジェクトは生成後もその状態を変更できる。例えば、多くのプログラミング言語における文字列(String)はイミュータブルであることが多い。一方、リスト(List)や配列(Array)はミュータブルであることが一般的である。

イミュータブルであることのメリットはいくつか存在する。まず、安全性の向上である。オブジェクトが変更されないことが保証されるため、複数の箇所から同じオブジェクトを参照している場合に、予期せぬ副作用が発生するリスクを低減できる。ある場所でオブジェクトを操作しても、別の場所で参照しているオブジェクトの値が勝手に変わることはないため、デバッグが容易になる。

次に、スレッドセーフであるという点である。複数のスレッドが同時に同じオブジェクトにアクセスしても、オブジェクトが変更されないため、競合状態(race condition)やデッドロックなどの並行処理における問題を回避しやすくなる。イミュータブルなオブジェクトは、ロックなどの同期メカニズムなしに複数のスレッドで安全に共有できる。

さらに、キャッシュの効率化にも貢献する。イミュータブルなオブジェクトは値が変わらないため、計算結果をキャッシュしやすく、パフォーマンスの向上に繋げやすい。同じ入力に対して常に同じ出力が得られることが保証されるため、メモ化などの最適化手法を安全に適用できる。

イミュータブルなオブジェクトの作成方法としては、いくつかの手法がある。最も基本的な方法は、オブジェクトの内部状態を保持するフィールドをprivateとし、setterメソッドを提供しないことである。これにより、オブジェクトの外部から内部状態を変更することを防ぐことができる。また、コンストラクタで初期値を設定する際に、渡されたオブジェクトのコピーを作成することで、外部からの影響を遮断することも重要である。

さらに、オブジェクトが持つフィールドがミュータブルなオブジェクトへの参照である場合、注意が必要である。例えば、イミュータブルなオブジェクトがリストをフィールドとして持っている場合、そのリスト自体はミュータブルである可能性がある。この場合、リストへの参照を直接保持するのではなく、リストのコピーを保持することで、間接的な変更を防ぐ必要がある。このような、オブジェクト全体がイミュータブルであることを「完全にイミュータブル(deeply immutable)」と呼ぶ。

イミュータブルなオブジェクトは、関数型プログラミングにおいて特に重要な役割を果たす。関数型プログラミングでは、副作用を極力排除し、純粋関数(同じ入力に対して常に同じ出力を返す関数)を使用することが推奨される。イミュータブルなオブジェクトを使用することで、関数がオブジェクトの状態を変更する副作用を防ぎ、プログラムの予測可能性を高めることができる。

しかし、イミュータブルなオブジェクトにはデメリットも存在する。オブジェクトの状態を変更するたびに新しいオブジェクトを作成する必要があるため、メモリの使用量が増加し、パフォーマンスが低下する可能性がある。特に、頻繁に状態が変化するオブジェクトに対してイミュータブルなオブジェクトを使用すると、オーバーヘッドが大きくなる。

イミュータブルなオブジェクトは、変更される頻度が低いデータや、複数の箇所から参照されるデータを扱う場合に特に有効である。例えば、設定情報や定数、日時データなどが該当する。一方で、頻繁に状態が変化するデータに対しては、ミュータブルなオブジェクトを使用する方が効率的な場合もある。状況に応じて、適切なオブジェクトの種類を選択することが重要である。

近年のプログラミング言語では、イミュータブルなデータ構造をサポートするための機能が強化されている。例えば、Kotlinのdata classや、Javaのrecordなどが挙げられる。これらの機能を使用することで、イミュータブルなオブジェクトをより簡潔に定義することができる。

イミュータブルの概念は、ソフトウェア開発における設計原則である「不変性」を具現化するものであり、より堅牢で保守性の高いシステムを構築するために不可欠な要素である。システムエンジニアを目指す上で、イミュータブルの概念を理解し、適切に活用できるようになることは非常に重要である。

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