インメモリデータベース(インメモリデータベース)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
インメモリデータベース(インメモリデータベース)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
インメモリデータベース (インメモリデータベース)
英語表記
in-memory database (インメモリデータベース)
用語解説
インメモリデータベースは、データベースの一種であり、その名の通り、データを主記憶装置(メインメモリ)上に保持して処理を行う方式のデータベースである。従来のデータベースシステム、特にリレーショナルデータベースの多くは、データを永続的にハードディスクなどの補助記憶装置(ディスク)に保存し、必要に応じてメインメモリに読み込んで処理する仕組みを採用している。これに対し、インメモリデータベースは、データが常にメインメモリ上にあることを前提としている点が最大の特徴である。
この方式の最大の利点は、極めて高い処理速度を実現できることにある。コンピューターにおけるデータアクセスの速度は、メインメモリとディスクとで大きく異なる。メインメモリはディスクに比べてはるかに高速にデータにアクセスできるため、ディスクへの読み書き(ディスクI/O)が発生するたびに生じる処理の遅延を大幅に削減できる。ディスクI/Oはデータベース処理における主要なボトルネックの一つであり、これを回避できるインメモリデータベースは、リアルタイムでのデータ分析や高速なトランザクション処理が求められる場面で非常に有効な手段となる。
詳細に入る。インメモリデータベースが高速である理由は、主にメインメモリへのアクセス速度の優位性、そしてそれに最適化されたデータ構造や処理方式にある。
まず、メインメモリへのアクセスは、電気信号の速度に近く、物理的な可動部を持つディスクに比べて圧倒的に速い。ディスクへのアクセスは、ディスクヘッドの移動や回転といった機械的な動作を伴うため、マイクロ秒オーダーのメインメモリに比べ、ミリ秒オーダーと桁違いに時間がかかる。インメモリデータベースでは、基本的にすべてのデータがメモリ上に存在するため、ディスクへのアクセスは最小限に抑えられ、この速度差が直接データベースのパフォーマンス向上に寄与する。
次に、インメモリデータベースは、メインメモリ上での効率的なデータ処理を可能にするために、ディスクベースのデータベースとは異なるデータ構造を採用することが多い。特に、列指向(カラムナー)データストアと呼ばれる形式がよく利用される。従来の多くのデータベースは行指向(ロー)データストアであり、データを行ごとに保存する。しかし、分析クエリのように特定の列(例えば、売上データの中から「金額」だけを集計する)に対して操作を行う場合、行指向では必要のない他の列のデータも読み込む必要があるため非効率になることがある。これに対し、列指向ではデータを列ごとに保存するため、必要な列のデータのみを効率的に読み込み、処理できる。これにより、特に大量データの集計や分析処理において顕著な高速化が実現する。また、類似するデータが連続して保存されるため、データ圧縮率も高まり、より多くのデータをメモリ上に保持できるメリットもある。
インメモリデータベースの課題の一つは、メインメモリは電源が切れるとデータが失われる揮発性であるという点である。これに対し、永続性(Durability)を保証するために様々な技術が導入されている。一般的なアプローチとしては、トランザクションログをディスクに書き出す方法がある。全てのデータ変更をログとして記録し、万が一システムが停止した場合でも、ログを再生することで最新の状態に復元できるようにする。また、定期的にデータベースのスナップショットをディスクに保存したり、メインメモリと同時にディスクにもデータを書き込むデュアルライティング(またはシャドウコピー)のような方式を採用することもある。これにより、インメモリの高速性を維持しつつ、データの安全性を確保している。
インメモリデータベースの利用メリットは、その高速性から多岐にわたる。リアルタイムでのビジネスインテリジェンス(BI)やデータ分析、不正検知システム、金融取引システム、ECサイトのパーソナライズされたレコメンデーション、IoTデバイスから収集される大量の時系列データの処理などが代表的なユースケースである。これらの分野では、従来のデータベースでは難しかった即時性のある意思決定やサービス提供が可能となる。
一方で、インメモリデータベースにはいくつかの考慮点やデメリットも存在する。最も顕著なのは、メインメモリの容量にデータベースが保持できるデータの総量が限定される点である。メインメモリはディスクに比べて高価であり、大容量のメインメモリを搭載するにはコストがかかる。また、すべてのデータをメモリに収めることができないような超大規模なデータセットの場合、インメモリデータベース単独での対応は難しくなる。このようなケースでは、インメモリデータベースとディスクベースのデータベースを組み合わせたり、データの一部をインメモリに保持し、残りをディスクに置くハイブリッドなアーキテクチャが採用されたりすることもある。
まとめると、インメモリデータベースは、メインメモリの高速性を最大限に活用することで、データ処理のパフォーマンスを飛躍的に向上させる技術である。データの永続性に関する課題は、ログ記録やスナップショットなどの手法で克服され、リアルタイム性が強く求められる現代の多くのシステムにおいて重要な役割を担っている。システムエンジニアを目指す上では、その特性とメリット・デメリットを理解し、適切な場面で活用できるようになることが求められる。