情報資産 (ジョウホウアシット) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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情報資産 (ジョウホウアシット) の読み方

日本語表記

じょうほう あさん (ジョウホウアサン)

英語表記

information asset (インフォメーション・アセット)

情報資産 (ジョウホウアシット) の意味や用語解説

情報資産とは、企業や組織が事業活動を行う上で保有する情報全般のうち、資産としての価値を持つものを指す。現金、不動産、設備といった物理的な資産と同様に、組織の競争力や事業継続性を支える上で極めて重要な経営資源と位置づけられる。システムエンジニアは、この情報資産を保護し、適切に活用するためのシステムを構築・運用する専門家であり、その概念を正しく理解することは業務の根幹に関わる必須知識である。 情報資産には、電子データとしてコンピュータ上に存在する情報だけでなく、様々な形態のものが含まれる。最も代表的なものは、データベースに格納された顧客情報、販売履歴、財務データ、製品の技術情報、人事情報などである。また、サーバーに保存されている設計書、仕様書、ソースコードといった開発関連のドキュメントも重要な情報資産である。これらに加え、紙媒体で保管されている契約書や申込書、従業員が持つ専門知識や業務ノウハウ、特許権や著作権といった知的財産権なども広義の情報資産に含まれる。自社で開発したソフトウェアや、購入した業務用ソフトウェアのライセンスも、組織にとって価値のある資産であることに変わりはない。 これらの情報資産は、その価値と特性に応じて適切に管理される必要がある。その管理の指標となるのが、情報セキュリティの三要素として知られる「機密性」「完全性」「可用性」である。これは英語の頭文字をとってCIAとも呼ばれる。機密性とは、認可された者だけが情報にアクセスできることを保証する特性である。顧客の個人情報や企業の財務情報など、漏洩した場合に深刻な損害をもたらす情報は、高い機密性が求められる。完全性とは、情報が正確であり、改ざんや破壊がされていない状態を保つ特性である。取引データや医療記録などが不正確であれば、業務に重大な支障をきたすため、完全性の維持は不可欠である。可用性とは、認可された者が、必要な時にいつでも情報やシステムを利用できる状態を保証する特性である。オンラインサービスや工場の生産管理システムが停止すれば、機会損失や生産停止につながるため、高い可用性が求められる。 組織は、保有する情報資産をこれらのCIAの観点から評価し、その重要度に応じて分類する。例えば、機密性の観点から「極秘」「秘」「社外秘」「公開」といったレベル分けを行い、それぞれのレベルに応じた取り扱いルールやアクセス権限を設定する。この一連の活動を情報資産管理と呼び、体系的な管理体制としてISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などのフレームワークが利用されることも多い。情報資産管理のプロセスは、まず組織内の情報資産をすべて洗い出すことから始まる。次に、洗い出した資産をCIAの観点から評価・分類し、それぞれに潜むリスク、すなわち脅威と脆弱性を分析する。その分析結果に基づき、暗号化、アクセス制御、バックアップ、防災設備といった技術的、物理的、人的な対策を講じ、リスクを許容可能なレベルまで低減させる。 システムエンジニアは、この情報資産管理の考え方を業務のあらゆる場面で意識する必要がある。システムの要件定義や設計の段階では、扱うデータがどのような情報資産にあたり、どのレベルの機密性、完全性、可用性が求められるのかを顧客に確認し、設計に反映させなければならない。例えば、個人情報を扱うシステムではデータの暗号化や厳格なアクセス制御の実装が必須となる。インフラを構築する際には、可用性を高めるためのサーバーの冗長化や、不正アクセスを防ぐためのファイアウォール設定が求められる。開発フェーズでは、脆弱性を生まないセキュアなコーディングを心掛ける必要がある。そして、システムの運用・保守フェーズにおいても、定期的なバックアップの取得やセキュリティログの監視を通じて、情報資産を継続的に保護する役割を担う。情報資産の概念を深く理解することは、技術的な課題を解決するだけでなく、顧客の事業そのものを守り、発展させるためのシステムを構築する上で不可欠な素養なのである。

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