情報弱者 (ジョウホウジャクシャ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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情報弱者 (ジョウホウジャクシャ) の読み方

日本語表記

情報弱者 (ジョウホウジャクシャ)

英語表記

information poor (インフォメーションプア)

情報弱者 (ジョウホウジャクシャ) の意味や用語解説

情報弱者とは、情報通信技術(ICT)の利用機会や活用能力に格差があるために、社会生活や経済活動において不利益を被る、あるいはその可能性が高い人々を指す言葉である。この概念は、単にパソコンやスマートフォンの操作が不得手な人々だけを指すものではなく、情報へのアクセス、情報の真偽判断、情報の活用といった多岐にわたる側面を含んでいる。デジタル化が社会のあらゆる領域に浸透する現代において、この情報格差、すなわちデジタルデバイドは、教育、経済、行政サービスなど様々な面で新たな社会問題を生み出す要因となっている。 情報弱者が生まれる背景は、大きく三つの格差に分類することができる。第一に、物理的・経済的な「アクセス格差」である。これは、パソコンやスマートフォンといった情報機器を所有していない、あるいはインターネットに接続できる環境にない状態を指す。地理的な要因、例えば山間部や離島など通信インフラが十分に整備されていない地域に住んでいる場合や、経済的な理由で機器の購入費や通信費を負担できない場合などがこれに該当する。情報社会の恩恵を受けるための最低限の土台が欠けている状態であり、情報格差の最も基本的な要因と言える。 第二に、情報機器やソフトウェアを使いこなす能力の差である「スキル格差」が挙げられる。情報機器を所有していても、その操作方法が分からなければ情報を活用することはできない。電源の入れ方や文字入力といった基本的な操作から、アプリケーションのインストール、各種オンラインサービスへの登録・利用方法まで、求められるスキルは多岐にわたる。このスキル格差は、特にデジタル技術に触れる機会が少なかった高齢者層に顕著に見られる傾向があるが、世代に関わらず、教育や経験の差によって個人間に大きなばらつきが存在する。 第三に、現代において最も重要視されているのが、情報の質を見極め、適切に活用する能力の差である「リテラシー格差」である。インターネット上には、有益な情報だけでなく、誤情報、偽情報(フェイクニュース)、詐欺的な情報が氾濫している。リテラシー格差は、大量の情報の中から必要なものを効率的に探し出し、その情報の信頼性や正確性を批判的に吟味し、自らの目的に応じて活用する能力の差を意味する。たとえ機器の操作スキルが高くても、このリテラシーが低いと、悪意のある情報に惑わされて不利益を被ったり、無意識のうちに誤情報を拡散してしまったりするリスクを抱えることになる。 これらの格差は、個人の生活に具体的な不利益をもたらす。行政手続きのオンライン化が進む中、情報弱者は給付金の申請や公的な手続きから取り残される可能性がある。また、オンラインショッピングやキャッシュレス決済といった便利なサービスを利用できず、経済的な機会損失を生むこともある。災害発生時には、避難情報や安否確認といった重要な情報を迅速に入手できず、生命の安全に関わる事態に発展する危険性も指摘されている。さらに、フィッシング詐欺やコンピュータウイルスといったサイバー犯罪の被害者になりやすいのも、情報弱者の特徴の一つである。 システムエンジニアを目指す者にとって、この情報弱者の問題は決して無関係ではない。自らが開発するシステムやサービスが、社会にどのような影響を与えるかを常に意識する必要がある。特に、公共性の高いシステムや、幅広い年齢層を対象とするサービスを開発する際には、情報弱者の存在を前提とした設計思想が不可欠となる。具体的には、誰もが直感的に操作できるユーザーインターフェースの設計、専門用語を避けた平易な言葉遣い、文字の大きさや色のコントラストへの配慮といった、ユニバーサルデザインやウェブアクセシビリティの考え方を実装することが求められる。システムエンジニアの役割は、単に高機能なシステムを構築することだけではない。技術の力を用いて情報格差を是正し、誰もが情報社会の恩恵を享受できる環境を創造することも、重要な社会的責任の一つなのである。

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