赤外線 (セキガイセン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
赤外線 (セキガイセン) の読み方
日本語表記
赤外線 (セキガイセン)
英語表記
infrared (インフラレッド)
赤外線 (セキガイセン) の意味や用語解説
赤外線とは、電磁波の一種であり、人間の目には見えない光のことである。その波長は可視光線よりも長く、電波よりも短い範囲に位置する。すべての物体は温度に応じた赤外線を放射しており、この性質を利用して様々なIT分野で活用されている。主に無線通信や各種センサー技術において、その直進性や非接触という特性が重要な役割を果たす。電波のように壁を透過せず、見通しが必要な場面での利用が多い一方で、電波干渉を受けにくいという利点も持つ。 赤外線の物理的な性質は、そのIT分野での応用を理解する上で不可欠である。電磁波スペクトルの観点から見ると、赤外線は波長が約0.75マイクロメートルから1ミリメートルの範囲を指す。この広い波長域はさらに近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分類され、それぞれ異なる特性と用途を持つ。近赤外線は可視光線に最も近く、光ファイバー通信や一部のセンサーに用いられる。中赤外線や遠赤外線は熱として感じられることが多く、熱源からの放射として利用される。例えば、夜間撮影用のカメラや温度センサーは、物体が放射する熱(遠赤外線)を検出することで機能する。これらの波長帯では、大気中の水蒸気や二酸化炭素による吸収が異なるため、用途に応じた波長が選ばれる。 IT分野における赤外線の最も代表的な利用例として、赤外線通信が挙げられる。かつて携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などで普及したIrDA(Infrared Data Association)規格は、短距離かつ低速な一対一の無線通信を実現するために赤外線を利用していた。この方式では、送信側から赤外線LED(発光ダイオード)で変調された光信号を送り、受信側でフォトダイオードを用いて光を電気信号に変換する。エアコンやテレビのリモコンも赤外線通信の身近な例であり、ボタンを押すたびに特定の信号を赤外線で送信し、家電がそれを受信して動作する仕組みである。赤外線通信の利点は、特定の周波数帯の使用許可が不要であること、電波と比べて秘匿性が高いこと(壁を透過しないため、盗聴されにくい)、そして電波干渉を受けにくいことにある。しかし、通信には送信機と受信機の間に遮蔽物がない見通しが必要であり、通信距離が数メートル程度と短いこと、そして通信速度が比較的遅いことが欠点であった。これらの理由から、現在ではより高速で障害物に強いBluetoothやWi-Fiといった無線通信技術にその役割を譲ることが多いが、リモコンのように限定された用途では今も広く利用されている。 次に、赤外線センサーもIT分野で非常に重要な役割を担っている。人感センサーはその代表的なものであり、焦電型赤外線センサーがよく用いられる。これは、人間が放射する体温(遠赤外線)によってセンサー素子の温度が変化し、その変化によって発生する微弱な電気信号を検出する原理で動作する。防犯システムや自動点灯照明、空調の省エネ制御などに広く応用されており、無駄な電力消費の削減や安全性の向上に貢献している。また、非接触で物体の温度を測定する放射温度計も赤外線センサーの一種である。これは、物体が放射する赤外線の量を測定し、その量から温度を算出する。工場での製品の品質管理、医療現場での体温測定、食品業界での温度管理など、幅広い分野で活用されている。さらに、サーモグラフィは物体から放射される赤外線を検知して熱分布を可視化する技術であり、建物の断熱診断、機器の異常検出、医療診断など多岐にわたる用途がある。スマートフォンの近接センサーも赤外線を利用した光学センサーの一種である。電話中に顔がディスプレイに近づいた際に、赤外線を放射して反射を検知することで画面をオフにし、誤操作を防ぐ。自動水栓や自動ドアの開閉制御にも、同様の原理で赤外線センサーが使われている。これらのセンサーは、対象物に触れることなく情報を取得できるため、衛生面や安全性、耐久性において大きな利点を提供する。 セキュリティの観点では、赤外線は電波と異なり壁や障害物を透過しないため、限定された空間内でのみ通信が可能であるという特性から、比較的小規模な範囲での秘匿性を確保しやすい。しかし、物理的な遮蔽がなければ外部からの光や熱による干渉を受ける可能性があり、また直射日光などの強い赤外線源はセンサーの誤作動を引き起こすこともあるため、設置環境には注意が必要である。今日のIT環境では、より広範囲で高速な無線通信が主流となっているが、赤外線はその特性を生かして、今後も特定のリモコン操作、短距離データ通信、高精度な非接触センサー、特定の産業用途などで利用され続けることが予想される。例えば、Li-Fi(Light Fidelity)のような可視光通信技術の発展にも、電磁波の一種としての光の特性理解が基盤となっており、赤外線技術はその応用範囲を広げる可能性を秘めている。