イングレス(イングレス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

イングレス(イングレス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

侵入 (シンニュウ)

英語表記

Ingress (イングレス)

用語解説

イングレス(Ingress)は、Kubernetes環境において、クラスタ外部からのHTTP/HTTPSトラフィックをクラスタ内のサービスにルーティングするためのAPIオブジェクトである。Kubernetesはコンテナ化されたアプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化するためのプラットフォームだが、デフォルトではクラスタ内部のサービスは外部から直接アクセスできない。イングレスは、この課題を解決し、外部からのアクセスを効率的に管理するための重要な役割を担う。

具体的には、イングレスは一種のリバースプロキシとして機能する。クラスタへのエントリポイントとなり、外部からのリクエストを受け付け、設定されたルールに基づいて適切なサービスにトラフィックを転送する。これにより、複数のサービスを同じIPアドレスとポートで公開し、名前ベースの仮想ホスティングやパスベースのルーティングを実現できる。

イングレスオブジェクト自体は設定ファイルであり、どのようなルールでトラフィックをルーティングするかを定義する。例えば、ドメイン名に基づいて特定のサービスにトラフィックを転送したり、URLパスに基づいて異なるサービスにトラフィックを振り分けたりするルールを記述できる。これらのルールは、通常YAML形式で記述され、kubectlコマンドを使ってKubernetesクラスタに適用される。

イングレスを実現するためには、イングレスコントローラと呼ばれるソフトウェアが必要となる。イングレスコントローラは、イングレスオブジェクトの設定を監視し、その設定に基づいて実際のルーティング処理を行う。代表的なイングレスコントローラとしては、NGINX Ingress Controller、Traefik、HAProxy Ingress Controllerなどがある。これらのコントローラは、それぞれ異なる特徴や機能を持っており、要件に応じて選択する必要がある。

イングレスコントローラは、通常Kubernetesクラスタ内にPodとしてデプロイされる。そして、イングレスオブジェクトの設定に基づいて、リバースプロキシの設定を自動的に更新する。これにより、開発者はルーティング設定を手動で管理する必要がなくなり、アプリケーションの開発に集中できる。

イングレスを使用するメリットはいくつかある。まず、外部からのアクセスを一元的に管理できるため、セキュリティを向上させることができる。例えば、SSL/TLS終端をイングレスコントローラで行うことで、クラスタ内部のサービスは暗号化処理の負荷から解放される。また、アクセス制御や認証処理をイングレスコントローラに集約することで、セキュリティポリシーの一貫性を保つことができる。

次に、イングレスはアプリケーションのスケーラビリティを向上させる。イングレスコントローラは、トラフィックの負荷分散を行うことができるため、特定のサービスに負荷が集中することを防ぐことができる。また、サービスの追加や削除に応じてルーティング設定を自動的に更新するため、手動での設定変更が不要になる。

さらに、イングレスは開発の効率化にも貢献する。開発者は、ルーティング設定をYAMLファイルで定義するだけで、複雑なルーティング処理を実装する必要がない。また、Ingressコントローラは、様々なプラグインや拡張機能を提供しており、認証、監視、ロギングなどの機能を簡単に追加できる。

イングレスを導入する際には、いくつかの考慮事項がある。まず、Ingressコントローラの選択である。要件に応じて最適なコントローラを選択する必要がある。例えば、高性能なルーティングが必要な場合は、HAProxy Ingress Controllerを選択したり、シンプルな設定で済ませたい場合は、Traefikを選択したりすることができる。

次に、イングレスオブジェクトの設定である。ルーティングルールを適切に定義しないと、トラフィックが意図しないサービスに転送されたり、セキュリティ上の問題が発生したりする可能性がある。そのため、設定ファイルを慎重にレビューし、テストを行うことが重要である。

また、イングレスコントローラの監視も重要である。コントローラが正常に動作しているか、エラーが発生していないかを定期的に確認する必要がある。監視ツールを使用することで、問題が発生した場合に迅速に対応することができる。

最後に、イングレスはKubernetes環境において、外部からのアクセスを効率的に管理するための強力なツールである。適切に活用することで、アプリケーションのセキュリティ、スケーラビリティ、開発効率を向上させることができる。システムエンジニアを目指す上で、イングレスの理解は不可欠であると言える。