インテグリティ(インテグリティ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

インテグリティ(インテグリティ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

インテグリティ (インテグリティ)

英語表記

Integrity (インテグリティ)

用語解説

インテグリティとは、情報セキュリティにおける重要な概念の一つで、データやシステムが正確で一貫性を保ち、信頼できる状態であることを指す。これは、情報セキュリティの三要素である機密性、可用性とともに「完全性」という訳語で表現されることも多い。インテグリティが確保されているとは、データが許可されていない方法で変更されたり、破壊されたりしていないこと、またシステムが設計通りに正しく機能していることを意味する。不正な改ざんや誤操作、システム障害など、さまざまな要因によってインテグリティは損なわれる可能性があり、これを防ぎ、万が一損なわれた場合に検知・回復できる状態にしておくことが極めて重要となる。

インテグリティの概念は、大きく「データのインテグリティ」と「システムのインテグリティ」に分けられる。

まずデータのインテグリティは、データが正確で、矛盾がなく、一貫性を保っている状態を指す。これは、データが生成されてから、保存、処理、転送されるまでの一連のライフサイクル全体を通じて維持される必要がある。たとえば、顧客の住所データが誤っていたり、在庫数が実際の数と異なっていたりすれば、ビジネス上の重大な問題を引き起こす。データのインテグリティが損なわれる原因としては、ユーザーによる意図しない誤入力や誤操作、ソフトウェアのバグ、ハードウェアの故障、そして悪意のある第三者によるデータの改ざんや破壊などが挙げられる。これを防ぐため、多くの技術的・運用的な対策が講じられる。データベースにおいては、「インテグリティ制約」という仕組みが代表的である。これは、データの整合性を保証するための規則であり、主キーによる一意性の保証(エンティティインテグリティ)、外部キーによる関連データの整合性維持(参照インテグリティ)、カラムの値の範囲や型を制限する(ドメインインテグリティ)、そして業務ロジックに基づく特定の規則(ユーザー定義インテグリティ)などがある。これらの制約を適用することで、誤ったデータがデータベースに登録されるのを防ぎ、データの信頼性を高める。また、データの転送中や保存中に改ざんされていないことを確認する技術として、ハッシュ関数が広く利用される。ハッシュ関数は、任意のデータから固定長のハッシュ値を生成する一方向性の関数であり、わずかでもデータが変更されるとハッシュ値が大きく異なるため、改ざん検知に有効だ。さらに、デジタル署名は、ハッシュ値と公開鍵暗号技術を組み合わせることで、データのインテグリティと同時にデータの作成者が誰であるか(否認防止)も保証する。定期的なバックアップとレプリケーションも、データ喪失からの回復を可能にし、結果としてデータのインテグリティを維持する上で不可欠な手段である。これにより、データが破損したり失われたりした場合でも、以前の正確な状態に戻すことができる。

次にシステムのインテグリティは、コンピューターシステム全体が意図した通りに機能し、不正な操作や故障によってその機能が損なわれない状態を指す。これには、OSやアプリケーションソフトウェア、ハードウェアといったシステムの構成要素すべてが含まれる。具体的には、ソフトウェアのコードが正しく、設計通りに動作すること、ハードウェアが安定して故障なく稼働すること、そしてOSやアプリケーションに存在するセキュリティ脆弱性が適切なセキュリティパッチによって修正され、悪意のある攻撃者に利用されない状態であることなどが挙げられる。システムのインテグリティを保つためには、厳格なアクセス制御と権限管理が不可欠である。これにより、許可されていないユーザーがシステムの設定を変更したり、重要なプログラムファイルを削除したり、不正なソフトウェアをインストールしたりすることを防ぐ。多要素認証の導入も、不正アクセスによるシステム改ざんのリスクを低減する。また、システムのログを継続的に監視し、異常な振る舞いや不審なアクセスを早期に検知することも重要だ。これにより、インテグリティが損なわれた兆候をいち早く捉え、原因を特定し、適切な対応をとることが可能になる。定期的なシステム監査やセキュリティ診断も、システムの脆弱性を発見し、インテグリティを維持するための有効な手段である。

インテグリティの確保は、現代のITシステムにおいて極めて重要な意味を持つ。誤ったデータや機能不全のシステムは、企業の信用失墜、法的責任の発生、顧客への損害、そして重大な経済的損失につながる可能性があるためだ。例えば、金融システムにおいて取引データが改ざんされれば甚大な被害が生じ、医療システムで患者のデータが不正に変更されれば人命に関わる事態になりかねない。また、インテグリティは情報セキュリティの他の要素、すなわち機密性(データが許可された者だけによってアクセスされること)と可用性(データやシステムが必要な時に利用可能であること)とも密接に関連している。システムが改ざんされていれば、機密情報が意図せず外部に漏洩したり、システムが利用できなくなったりする可能性があるため、インテグリティが損なわれるとセキュリティ全体が危うくなる。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、インテグリティの概念を理解し、それを考慮したシステム設計・開発・運用を行うことは非常に重要である。システム設計の段階から、データの入力バリデーション(妥当性検証)を厳格に行い、データベースのインテグリティ制約を適切に定義すること、トランザクション管理によってデータの更新処理における一貫性を保証すること、そしてエラーハンドリングを適切に実装して予期せぬ事態に対応できるようにすることなどが求められる。また、開発したシステムが外部からの攻撃に対して脆弱性を持たないようにセキュリティ対策を組み込むこと、そして運用段階では、定期的なシステム監査やログ監視を通じてシステムの健全性を維持することも、インテグリティを確保するための重要な役割となる。このように、インテグリティは単なる技術的な側面だけでなく、システムの信頼性、事業継続性、法的要件の遵守、そしてユーザーからの信用獲得といった、多岐にわたる側面を支える基盤となる概念なのである。

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