インターレース(インターレース)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
インターレース(インターレース)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
インターレース (インターレース)
英語表記
interlace (インターレース)
用語解説
インターレースとは、映像を表示するための走査方式の一つであり、日本語では「飛び越し走査」とも呼ばれる。この方式は、1枚の静止画、すなわちフレームを構成する多数の水平な線、すなわち走査線を、一度にすべて描画するのではなく、2回に分けて描画する点に特徴がある。具体的には、まず奇数番目の走査線だけを描画し、次に偶数番目の走査線を描画する。この奇数番線のみで構成される部分的な画像のことを「奇数フィールド」または「トップフィールド」と呼び、偶数番線のみで構成される部分的な画像のことを「偶数フィールド」または「ボトムフィールド」と呼ぶ。これら2つのフィールドを人間の目が認識できないほど高速に交互に表示することで、結果として1枚の滑らかな映像として知覚される仕組みである。この技術は、主にかつてのアナログテレビ放送の時代に、限られた電波の帯域幅という制約の中で、可能な限り滑らかな動きを表現するために考案された背景を持つ。
インターレースの仕組みをより詳細に説明する。映像は画面の上から下へ順に走査線を描画することで表示される。インターレース方式では、1フレームを構成する全ての走査線を一度に描画せず、まず1、3、5、7番目といった奇数番目の走査線群からなる奇数フィールドを描画する。その直後に、2、4、6、8番目といった偶数番目の走査線群からなる偶数フィールドを描画する。この時間的にわずかにずれた2つのフィールドを合わせて1フレームの映像が完成する。例えば、日本のテレビ放送で採用されていたNTSC方式では、1秒間に約30フレームの映像が送られるが、実際には1秒間に約60回、つまり奇数フィールド30回、偶数フィールド30回の画面更新が行われていた。このフィールドの更新頻度のことをフィールドレートと呼ぶ。
この方式が広く採用された背景には、かつての映像表示装置の主流であったブラウン管(CRT)ディスプレイの技術的制約が大きく関係している。ブラウン管は、電子ビームを画面に照射し、塗布された蛍光体を光らせることで映像を表示するが、一度発光した蛍光体はすぐに光が消えてしまう特性、すなわち残光性が短いという性質があった。そのため、画面の上から下まで全ての走査線を描画する方式、後述するプログレッシブ方式を採用すると、描画の途中で先に描画した画面上部の部分が暗くなり始め、画面全体がちらついて見える「フリッカー」という現象が発生しやすかった。この問題を緩和するため、1フレームあたりの情報量は変えずに、画面の更新回数を実質的に2倍に見せかけることができるインターレース方式が開発された。これにより、少ないデータ量でフリッカーを抑制し、かつ動きの滑らかさを向上させることが可能になったのである。
インターレース方式の主なメリットは、データ伝送における帯域幅を効率的に利用できる点にある。同じ解像度とフレームレートを持つ映像を、全ての走査線を一度に描画するプログレッシブ方式で伝送する場合と比較して、インターレース方式は一度に送るデータ量が約半分で済む。これは、放送電波の周波数帯域や記録メディアの容量が限られていた時代において、非常に重要な利点であった。また、同じデータ量という制約の下では、プログレッシブ方式の2倍のフィールドレートを実現できるため、スポーツ中継のような動きの速い映像をより滑らかに表現できるという効果もあった。
一方で、インターレース方式にはいくつかの固有のデメリットも存在する。その代表的なものが「コーミング」または「櫛状ノイズ」と呼ばれる画質の劣化現象である。これは、動きの速い被写体を撮影した映像で顕著に現れる。奇数フィールドと偶数フィールドは、ごくわずかな時間差をもって撮影・描画されるため、その短い間に被写体が移動していると、2つのフィールドで被写体の位置がずれてしまう。これが合成されることで、物体の輪郭が櫛の歯のようにギザギザになって表示される。また、水平方向の細い線が多用されたデザインやテロップなどでは、フィールドごとに線が表示されたりされなかったりするため、ちらついて見える「ラインフリッカー」が発生しやすい。さらに、映像から1フレームを静止画として切り出した場合、1つの時点の情報はフィールド単位でしか存在しないため、垂直方向の解像度が実質的に半分になり、画質が劣化したように見えるという問題もある。
インターレースと対比される技術が「プログレッシブスキャン(順次走査)」である。プログレッシブ方式は、1フレームの全ての走査線を上から順番に1回で描画する。現代のコンピュータ用ディスプレイや液晶テレビ、有機ELテレビといったデジタルディスプレイの多くは、このプログレッシブ表示を基本としている。プログレッシブ映像は、インターレースで問題となるコーミングやラインフリッカーが発生せず、静止画としての精細感も高いため、全体的な画質面で優れている。映像フォーマットの表記では、インターレースが「1080i」のように垂直解像度の後に"i"(interlaced)を付けて表されるのに対し、プログレッシブは「1080p」のように"p"(progressive)を付けて明確に区別される。
現代においても、テレビ放送、特に日本の地上デジタル放送やBS/CS放送では、今なお1080iというインターレース形式が標準規格として広く使用され続けている。しかし、視聴者側の表示装置の主流はプログレッシブ方式のディスプレイであるため、放送されたインターレース方式の映像信号をプログレッシブ方式のディスプレイで正しく表示するためには、「インターレース解除(デインターレース)」という変換処理が必要不可欠となる。この処理はテレビやレコーダー、パソコンの再生ソフトウェアなどに内蔵されており、時間的にずれた奇数フィールドと偶数フィールドから、1枚の完全なプログレッシブフレームを生成する役割を担う。デインターレースには様々なアルゴリズムが存在し、単純な処理では画質の劣化を招きやすいため、映像内の動きを検知して静止領域と動き領域で最適な合成方法を動的に選択する、といった高度な技術が用いられる。システムエンジニアとして映像配信システムやメディアプレーヤーの開発に関わる場合、このデインターレース処理の特性を理解しておくことは、高画質な映像再生を実現する上で重要な知識となる。