ジャンボフレーム (ジャンボフレーム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ジャンボフレーム (ジャンボフレーム) の読み方

日本語表記

ジャンボフレーム (ジャンボフレーム)

英語表記

Jumbo Frame (ジャンボフレーム)

ジャンボフレーム (ジャンボフレーム) の意味や用語解説

ジャンボフレームとは、イーサネット上でデータを転送する際に使用されるデータ単位であるフレームの最大サイズを、標準のサイズよりも大きく拡張したものを指す。標準のイーサネットフレームは最大1500バイトのペイロード(純粋なデータ部分)しか運べないが、ジャンボフレームはこの制限を緩和し、一般的に9000バイト程度のペイロードを扱えるようにする。これにより、ネットワークの効率を高め、特にギガビットイーサネット以上の高速な環境で、大量のデータをより少ない回数で転送できるようになるため、スループットの向上とCPU負荷の軽減という二つの主要なメリットが期待される。 イーサネットは、データを「フレーム」と呼ばれる単位に分割して送受信する。このフレームには、宛先や送信元のアドレス、エラーチェック情報、そして実際に送りたいデータ本体(ペイロード)が含まれる。標準的なイーサネットフレームでは、このペイロードの最大サイズが1500バイトと定められている。これをMTU(Maximum Transmission Unit)と呼ぶ。データが1500バイトを超える場合、そのデータは複数のフレームに分割されて送られ、受信側で再び元のデータに組み立てられる。フレームの先頭と末尾には、アドレス情報や制御情報、エラー検出情報などの「オーバーヘッド」が付加されるため、1バイトのデータでも、実際にはさらに数十バイトの付加情報が伴うことになる。 ギガビットイーサネットが登場し、ネットワークの帯域幅が大幅に向上すると、この1500バイトというフレームサイズの制限が、かえって性能を阻害する要因となることが明らかになった。大量のデータを転送する場合、1500バイトごとに細かく分割して送ると、その都度フレームのオーバーヘッド(ヘッダやフッタ)が付加され、さらに各フレームの処理(パケットの作成、送信、受信、エラーチェックなど)が必要になる。これにより、ネットワークインターフェースカード(NIC)やCPUは、データ本体の転送よりも、フレームのラッピングやアンラッピング、エラーチェックといった処理に多くのリソースを消費してしまう。 そこで考案されたのがジャンボフレームである。ジャンボフレームは、このMTUを標準の1500バイトから大幅に拡大し、一般的には9000バイト前後に設定されることが多い。これにより、例えば9000バイトのデータを送る場合、標準フレームでは6回のフレーム転送が必要だったものが、ジャンボフレームでは1回の転送で済むようになる。 ジャンボフレームのメリットは多岐にわたる。まず、最大のメリットは「スループットの向上」である。データをより大きな塊で送ることで、フレームあたりのオーバーヘッドの割合が相対的に小さくなる。例えば、1500バイトのデータに30バイトのオーバーヘッドが付くのと、9000バイトのデータに30バイトのオーバーヘッドが付くのとでは、後者の方がデータ転送効率がはるかに高い。フレーム間の間隔(インターフレームギャップ)も減るため、ネットワークの実効的な帯域利用率が向上し、結果としてより多くのデータを短時間で転送できるようになる。 次に、「CPU負荷の軽減」も重要なメリットである。ネットワークインターフェースカード(NIC)やOSのネットワークスタックは、フレームごとにエラーチェックやバッファリングなどの処理を行う。ジャンボフレームを使用すると、同じ量のデータを転送する際に処理するフレームの数が大幅に減少するため、NICやCPUにかかるパケット処理の負荷が低減される。これにより、サーバーのCPUリソースを他のアプリケーション処理に多く割り当てられるようになり、システム全体のパフォーマンス向上に貢献する。特に、ファイルサーバーやデータベースサーバー、仮想化基盤など、大量のデータを頻繁にやり取りする環境でその効果は顕著である。 しかし、ジャンボフレームの導入にはいくつかの注意点とデメリットがある。最も重要なのは「ネットワーク内の全ての機器がジャンボフレームに対応している必要がある」という点である。送信側のNIC、途中のネットワークスイッチ、ルーター、そして受信側のNICなど、データが通過する全ての機器がジャンボフレームをサポートし、かつ同じMTU値に設定されていなければならない。もし、経路上のいずれかの機器がジャンボフレームに対応していなかったり、MTU値が異なっていたりすると、フレームが破棄されたり、断片化されて再構築に余計な時間がかかったりして、かえって性能が低下したり、最悪の場合は通信が不可能になることもある。 特にMTUの不一致は、トラブルシューティングを困難にする要因となる。一部のOSやアプリケーションは、Path MTU Discovery (PMTUD) という仕組みを使って最適なMTUを見つけようとするが、PMTUDがうまく機能しない状況では、通信が不安定になったり、特定のサイズのデータだけが送れないといった問題が発生することがある。そのため、ジャンボフレームを導入する際には、事前にネットワーク全体の構成と機器の対応状況を十分に確認し、計画的に導入を進めることが不可欠である。段階的に導入したり、まずは特定のセグメントでテストしたりすることも有効なアプローチだ。 ジャンボフレームは、特にデータセンター内部のサーバー間通信、ストレージエリアネットワーク(SAN)、仮想化環境における仮想マシン間の通信、データベースのレプリケーション、大規模なファイル転送など、ネットワークボトルネックを解消し、システム全体の性能を向上させたい場合に非常に有効な技術である。ただし、インターネットのような広域ネットワークでは、経路上の多数のルーターや機器がジャンボフレームに対応している保証がないため、通常は標準のMTUが使用される。ローカルネットワーク内で、閉じた環境で高速なデータ転送を実現する目的に特化した技術と言える。

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