ケンジントンロック (ケンジントンロック) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

ケンジントンロック (ケンジントンロック) の読み方

日本語表記

ケンジントンロック (ケンジントンロック)

英語表記

Kensington Lock (ケンジントンロック)

ケンジントンロック (ケンジントンロック) の意味や用語解説

ケンジントンロックとは、ノートパソコンやモニター、プロジェクターといった電子機器の盗難を物理的に防止するためのセキュリティワイヤーロックである。その名称は、このロックシステムを開発・販売したKensington Technology Groupに由来する。多くの電子機器には、「ケンジントンセキュリティスロット」または「K-Slot」と呼ばれる小さな長方形の穴が標準で備わっており、このスロットにロックの先端部分を挿入して固定する。企業や公共の場所など、不特定多数の人が出入りする環境において、機器の置き引きや持ち去りを防ぐ目的で広く利用されている。情報セキュリティは、サイバー攻撃のようなソフトウェア的な脅威への対策だけでなく、デバイスそのものが盗まれるといった物理的な脅威への対策も不可欠であり、ケンジントンロックはその物理セキュリティを低コストで実現するための基本的なツールとして位置づけられる。その構造は、主に切断に強い金属製のワイヤーケーブル、錠の役割を果たすロックヘッド、そして機器に固定するためのセキュリティスロットの3つの要素で構成されている。使用方法は単純で、ワイヤーケーブルを机の脚や柱など、動かすことが困難な固定物に巻きつけ、もう一方の端にあるロックヘッドを機器のセキュリティスロットに差し込み、施錠するだけで機器を物理的に固定できる。 ケンジントンロックを使用する上で最も重要なのが、機器側に存在するセキュリティスロットの規格である。最も普及しているのは、前述の「ケンジントンセキュリティスロット」で、そのサイズは約7mm x 3mmである。このスロットは業界標準として長年採用されてきたため、多くのノートパソコン、デスクトップパソコン、モニター、ドッキングステーションなどに搭載されている。しかし、近年のデバイスは薄型化・軽量化が進んでおり、従来の大きさのスロットを搭載するスペースを確保するのが難しくなってきた。このため、より小型のセキュリティスロット規格が登場している。代表的なものとして、デル社が中心となって採用している「Noble Wedge Lockスロット(Wedgeスロット)」や、レノボ社などが採用する「NanoSaverスロット(Nanoスロット)」が挙げられる。Wedgeスロットは台形でより小さく、Nanoスロットはケンジントンスロットより約70%も小さいサイズとなっている。これらのスロットは形状と寸法がそれぞれ異なるため、互換性はない。したがって、ケンジントンロックを購入する際には、自身が使用する機器のスロット規格を事前に正確に確認し、対応する製品を選択する必要がある。誤った規格のロックを購入しても使用することはできないため、注意が求められる。 ロックヘッドの施錠・解錠を行う機構には、主にキー(鍵)式とダイヤル式の二種類が存在する。キー式は、シリンダーキーを使って施錠・解錠する最も一般的なタイプである。直感的に操作でき、物理的な鍵で管理するためシンプルである。一方、鍵を紛失すると解錠できなくなるリスクが伴う。ダイヤル式は、3桁または4桁の数字の組み合わせ(暗証番号)を設定し、その番号を合わせることで施錠・解錠する。鍵を持ち歩く必要がなく、紛失の心配がない点が利点であるが、暗証番号を忘れてしまうと解錠できなくなる。また、他人に番号を推測されるリスクも存在する。企業環境で多数の機器を管理する場合には、マスターキー対応のキー式ロックが採用されることが多い。これは、各ロックに個別の鍵(ユーザーキー)が存在する一方で、情報システム部門の管理者などが持つ一本のマスターキーですべてのロックを解錠できる仕組みである。これにより、鍵の紛失時や緊急時に管理者が対応できるようになり、効率的な資産管理が可能となる。 ケンジントンロックは手軽で効果的な盗難防止策であるが、万能ではないことを理解しておく必要がある。その主な目的は、短時間での安易な持ち去りを防ぐ「盗難抑止」にある。強力なワイヤーカッターなどの専門的な工具を用いれば、時間をかけることでワイヤーを切断することは可能である。また、ロックを固定する対象物が重要であり、簡単に動かせる軽いテーブルの脚などに固定しても、テーブルごと持ち去られてしまっては意味がない。堅牢で動かせない柱や什器に固定することが前提となる。さらに、機器側のセキュリティスロット周辺の強度が低い場合、無理にロックを引き抜こうとすると、機器の筐体が破損してしまう可能性もある。そのため、ケンジントンロックは物理セキュリティ対策の一つとして捉え、他の対策と組み合わせて運用することが推奨される。例えば、重要なデータが保存されているノートパソコンであれば、データの暗号化、強固なパスワード設定、多要素認証といったソフトウェア的な対策を併用することで、万が一デバイスが盗難された場合でも、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができる。システムエンジニアとしては、顧客のシステム環境を構築・運用する際に、こうした物理的なセキュリティリスクも考慮に入れ、サーバーラック内の機器の固定や、開発用PCの管理ルール策定など、適切な場面でケンジントンロックの活用を提案することも重要な職務の一つとなる。物理的な安全性を確保することは、情報システム全体の信頼性を高める上で不可欠な要素なのである。

ケンジントンロック (ケンジントンロック) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説