カーネルメモリ(カーネルメモリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
カーネルメモリ(カーネルメモリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
カーネルメモリ (カーネルメモリ)
英語表記
kernel memory (カーネルメモリ)
用語解説
カーネルメモリとは、オペレーティングシステム(OS)の中核部分である「カーネル」が、自身の動作やコンピュータ全体の管理のために使用する、特別に保護されたメモリ領域のことである。コンピュータに搭載されている物理メモリ(RAM)は、OSによって大きく二つの領域に分割されて管理される。一つがこのカーネルメモリであり、もう一つが一般的なアプリケーションソフトウェアが使用するユーザーメモリである。この二つを明確に分離することは、コンピュータシステムの安定性とセキュリティを確保する上で極めて重要な役割を担っている。カーネルは、CPU、メモリ、ディスク、ネットワーク機器といったハードウェア資源の全てを管理し、アプリケーションからの要求に応じてそれらの資源を割り当てる司令塔の役割を果たす。この重要な処理を実行するために必要なプログラムコードや管理データは、すべてカーネルメモリ上に配置される。もしアプリケーションが誤った動作をしてユーザーメモリ上のデータを破壊したとしても、その影響がOSの中核であるカーネルに及ばないように、カーネルメモリは厳重に保護されている。これにより、一つのアプリケーションの不具合がシステム全体のクラッシュに直結することを防ぎ、安定したシステム運用を実現している。
カーネルメモリとユーザーメモリの分離は、CPUが持つメモリ保護機能によって実現されている。この仕組みは、メモリ空間を「カーネル空間」と「ユーザー空間」という論理的な領域に分けることで機能する。CPUは現在実行しているプログラムがカーネルの一部なのか、それともユーザーアプリケーションなのかを常に認識しており、これを実行モード(カーネルモードとユーザーモード)で区別する。カーネルのコードは特権レベルの高いカーネルモードで実行され、カーネル空間のメモリに自由にアクセスできる。一方、ユーザーアプリケーションは特権レベルの低いユーザーモードで実行され、アクセスはユーザー空間に限定される。ユーザーアプリケーションが誤って、あるいは意図的にカーネル空間のメモリに直接アクセスしようとすると、CPUは例外を発生させ、OSがその不正なアクセスを検知してアプリケーションを強制終了させるなどの措置をとる。
では、ユーザーアプリケーションがファイルの読み書きやネットワーク通信といったOSの機能を利用したい場合はどうするのか。そのために用意されているのが「システムコール」という仕組みである。アプリケーションはシステムコールを通じて、OSに対して処理を依頼する。システムコールが呼び出されると、CPUの実行モードがユーザーモードからカーネルモードへと切り替わり、処理の制御がアプリケーションからカーネルへと移る。カーネルは依頼された処理をカーネル空間内で実行し、その結果をアプリケーションに返す。処理が終わると、実行モードは再びユーザーモードに戻り、制御がアプリケーションに返還される。このように、システムコールという正規のインターフェースを介することでのみ、ユーザー空間とカーネル空間の連携が可能となり、メモリ保護を維持したままOSの機能を提供することができる。
カーネルメモリの内部には、OSを構成する様々な要素が格納されている。まず、カーネルのプログラムコードそのものが配置される。また、システム全体を管理するための重要なデータ構造も多数存在する。例えば、現在実行中の全プロセス情報を管理するプロセス制御ブロック、物理メモリの使用状況を管理するメモリマップ、開かれているファイル情報を管理するテーブル、ネットワーク接続の状態を管理するデータ構造などがこれにあたる。さらに、キーボードやディスク、グラフィックカードといったハードウェアを制御するためのプログラムであるデバイスドライバも、カーネルメモリにロードされて実行される。ディスクI/Oの性能を向上させるためのディスクキャッシュや、様々な処理で一時的にデータを保持するバッファ領域もカーネルメモリの一部として確保される。これらのデータやプログラムは、システムの根幹をなすため、その完全性が損なわれることは許されない。カーネルメモリ内で発生したメモリリークや不正なデータ書き込みといった不具合は、システム全体のパフォーマンス低下や、最悪の場合はパニックやブルースクリーンといったシステムクラッシュを引き起こす直接的な原因となる。そのため、カーネルメモリの管理は極めて慎重に行われる必要がある。