カーネルモード(カーネルモード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

カーネルモード(カーネルモード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

カーネルモード (カーネルモード)

英語表記

kernel mode (カーネルモード)

用語解説

カーネルモードは、コンピュータのCPUが持つ動作モードの一つであり、オペレーティングシステム(OS)がハードウェアを含む全てのコンピュータ資源に無制限にアクセスできる特権的な状態を指す。特権モードやスーパーバイザーモードとも呼ばれる。コンピュータシステム全体の安定性とセキュリティを確保するために不可欠な概念であり、OSの中核部分であるカーネルがこのモードで動作する。CPUには、このカーネルモードと、アプリケーションソフトウェアが動作するユーザーモードという、少なくとも二つの主要な動作モードが備わっている。この二つのモードを分離することにより、一つのアプリケーションの不具合がシステム全体を停止させたり、悪意のあるプログラムが重要なシステムデータを破壊したりすることを防いでいる。カーネルモードでは、CPUは全ての命令を実行でき、メモリの全領域へのアクセス、ハードウェアデバイスの直接制御、他のプロセスの管理など、コンピュータを完全にコントロールする権限を持つ。OSのカーネルは、この強力な権限を用いて、プロセスのスケジューリング、メモリ管理、ファイルシステムの制御、デバイスドライバの管理といった、システムの根幹をなす機能を実行する。

これに対して、一般のアプリケーションが動作するユーザーモードは、機能が厳しく制限されたモードである。ユーザーモードで動作するプログラムは、割り当てられた自身のメモリ空間にしかアクセスできず、ハードウェアを直接操作することもできない。もしアプリケーションがファイルへの書き込みやネットワーク通信、デバイスの利用といった特権が必要な処理を行いたい場合は、直接実行するのではなく、OSに対して処理を依頼する必要がある。この依頼の仕組みが「システムコール」である。アプリケーションがシステムコールを発行すると、CPUはトラップと呼ばれるメカニズムを通じて、現在の動作モードをユーザーモードからカーネルモードへ安全に切り替える。このモードの遷移が発生すると、CPUの制御がアプリケーションからOSのカーネルへと移る。カーネルは依頼された処理をカーネルモードの権限で実行し、その結果をアプリケーションに返す。処理が完了すると、CPUは再びユーザーモードに戻り、アプリケーションは処理を続行する。この一連の流れにより、アプリケーションはOSという仲介者を通じてのみハードウェア資源にアクセスできることになり、システム全体の秩序が保たれる。

カーネルモードで実行される処理は多岐にわたる。例えば、キーボードからの入力やマウスの動きといったハードウェアからの信号は「割り込み」としてCPUに通知されるが、この割り込みを処理する割り込みハンドラはカーネルモードで動作する。また、プリンタやストレージ、ネットワークカードといった周辺機器を制御するためのプログラムであるデバイスドライバも、ハードウェアと直接やり取りを行うため、その大部分がカーネルモードで動作する。複数のプログラムを同時に実行しているように見せるマルチタスク環境を実現するためのプロセスの生成、終了、切り替えといった管理や、どのプロセスにCPU時間を割り当てるかを決定するスケジューリングも、カーネルがカーネルモードで行う重要な役割である。さらに、物理メモリを各プロセスに効率的かつ安全に割り当てるメモリ管理機能もカーネルモードで実行される。

カーネルモードはシステムを保護する上で極めて重要だが、その強力さゆえに大きなリスクも伴う。カーネルモードで動作するコード、特にデバイスドライバなどにバグが存在すると、保護されていないメモリ領域を破壊したり、システムを不安定にさせたりする可能性がある。これが、Windowsにおけるブルースクリーンオブデス(BSoD)や、Linuxなどにおけるカーネルパニックといった、システム全体の致命的なクラッシュを引き起こす主な原因となる。したがって、カーネルモードで動作するコードの開発には、極めて高い品質と信頼性が要求される。システムエンジニアにとってカーネルモードとユーザーモードの違いを理解することは、システムのパフォーマンスチューニングやトラブルシューティングを行う上で基礎となる知識である。プログラムがなぜ遅いのかを分析する際、システムコールの頻発が原因である可能性を考慮したり、システムクラッシュの原因が特定のデバイスドライバにあると推測したりするなど、問題の切り分けに役立つからである。