回線(カイセン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

回線(カイセン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

かいせん (カイセン)

英語表記

line (ライン)

用語解説

回線とは、コンピュータやネットワーク機器などの拠点間でデータを送受信するための通信路である。情報通信におけるインフラストラクチャの根幹をなし、システム全体の性能や安定性を左右する極めて重要な要素だ。回線は、物理的なケーブルを用いる有線回線と、電波を利用する無線回線に大別される。システムエンジニアは、構築するシステムの要件に応じて、これらの回線の特性を深く理解し、最適なものを選択、設計、運用する役割を担う。

詳細について解説する。まず有線回線は、通信媒体として物理的なケーブルを使用する方式である。代表的なものに、メタルケーブルと光ファイバーケーブルがある。メタルケーブルは銅線を導体として電気信号で通信を行う。その中でも、一対の銅線をより合わせたツイストペアケーブルは、主にLAN(Local Area Network)環境で利用されるLANケーブルとして広く普及している。また、かつて主流であったADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)は既存の電話線を、CATV(Cable Television)インターネットはテレビ放送用の同軸ケーブルを通信に利用する。メタルケーブルは比較的安価に導入できる利点があるが、伝送距離が長くなると信号が減衰しやすく、外部からの電磁ノイズの影響を受けやすいという特性を持つ。一方、光ファイバーケーブルは、石英ガラスやプラスチックでできた非常に細い繊維の中を、光信号で通信する。光は電気信号に比べて信号の減衰が極めて少なく、外部の電磁ノイズの影響を全く受けないため、高速かつ大容量のデータを長距離にわたって安定して伝送できる。この特性から、現代のインターネットバックボーンや、高速なインターネット接続サービス(FTTH: Fiber To The Home)の主流となっている。

次に無線回線は、電波を通信媒体として利用する方式である。物理的なケーブル配線が不要なため、導入の自由度や利便性が高い。代表的なものとして、Wi-Fi、モバイル回線、衛星通信が挙げられる。Wi-Fiは、オフィスや家庭内といった比較的狭い範囲で無線LANを構築するための規格である。モバイル回線は、携帯電話事業者が提供する通信網であり、4G/LTEや5Gといった規格が存在する。広域をカバーする基地局を介して通信するため、移動中の端末でもインターネット接続が可能である。衛星通信は、地上に設置したアンテナと宇宙空間の通信衛星を介して通信を行う。山間部や海上など、地上の通信インフラの整備が困難な場所でも通信を確保できるが、衛星との距離があるため通信に遅延が生じやすい。無線回線は利便性が高い反面、電波の性質上、障害物や他の電波との干渉、天候などによって通信品質が不安定になることがある。

回線の性能を評価する際には、いくつかの重要な指標がある。第一に「帯域幅(Bandwidth)」であり、通信路が単位時間あたりに伝送できるデータ量の最大値を示す。一般的に「通信速度」と呼ばれ、bps(bits per second)という単位で表される。帯域幅が広いほど、一度に多くのデータを送受信できる。第二に「スループット(Throughput)」で、これは実際に通信路を流れた単位時間あたりのデータ量を示す。帯域幅が理論上の最大値であるのに対し、スループットはネットワークの混雑状況や機器の性能など、様々な要因の影響を受けた実測値となる。第三に「遅延(Latency)」または「レイテンシ」で、データが送信元から宛先に到達するまでにかかる時間を示す。この値が小さいほど応答性が高く、リアルタイム性が要求されるオンラインゲームやビデオ会議などで重要となる。第四に「ジッター(Jitter)」があり、これは遅延時間のばらつきを意味する。ジッターが大きいと、音声や映像が途切れる原因となり、通信品質の低下を招く。

さらに、回線は接続形態によっても分類される。一つは「専用線(Leased Line)」で、特定の二拠点間を物理的または論理的に独占して接続する回線である。帯域が保証され、第三者が介在しないため、高いセキュリティと安定した通信品質が求められる企業の拠点間データ通信などに利用される。ただし、コストは非常に高価になる。もう一つは「共有回線」または「公衆網」で、不特定多数のユーザーが一本の回線を共有して利用する形態である。一般的なインターネット接続サービスがこれにあたる。低コストで利用できる反面、他のユーザーの通信量が増加すると、ネットワークが混雑し、通信速度が低下することがある。

システムエンジニアにとって、これらの回線に関する知識は不可欠である。システムの要件定義段階では、必要な帯域幅、許容される遅延、求めるセキュリティレベルなどを基に、光ファイバーや専用線といった回線種別や通信事業者のサービスを選定する。構築段階では、物理的な配線設計やネットワーク機器の設定を行う。運用保守段階では、ネットワーク監視ツールを用いて回線の状態(スループット、遅延など)を常に把握し、通信障害が発生した際には、原因が自社の機器にあるのか、あるいは回線事業者側にあるのかを切り分け、迅速な復旧対応を行う必要がある。このように、回線はあらゆるITシステムの土台であり、その特性を正しく理解することが、信頼性の高いシステムを構築するための第一歩となる。