磁気ディスク (ジキディスク) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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磁気ディスク (ジキディスク) の読み方

日本語表記

じきディスク (ジキディスク)

英語表記

magnetic disk (マグネティックディスク)

磁気ディスク (ジキディスク) の意味や用語解説

磁気ディスクとは、磁性体を塗布した円盤状の記録媒体に、磁気の力を使ってデジタルデータを記録・読み出しする記憶装置の総称である。主にコンピュータの補助記憶装置として利用され、電源を切ってもデータが保持される不揮発性の性質を持つ。システムが扱う膨大な情報を安価に、かつ大容量で保存できるため、現代のITシステムにおいて不可欠な存在となっている。中でもハードディスクドライブ(HDD)が最も代表的な磁気ディスクであり、オペレーティングシステム、各種アプリケーション、ユーザーデータなど、コンピュータが日常的に利用するあらゆる情報を保管する基盤を担っている。データにアクセスする際は、記録されている物理的な位置を指定して直接読み書きができるため、ランダムアクセスが可能という特徴を持つ。 磁気ディスクの内部には、データを実際に記録する「プラッタ」と呼ばれる円盤状のディスクが複数枚積層されている。このプラッタの表面には磁性体が塗布されており、これがデータの記録層となる。プラッタは「スピンドルモーター」によって高速で回転しており、その上を「磁気ヘッド」が浮上しながら移動する。磁気ヘッドは、データに応じて磁性体を磁化させることでデータを書き込み、磁化された磁性体の磁場の変化を検知することでデータを読み出す。この磁気ヘッドの動きを制御するのが「アクチュエータ」と呼ばれる部品で、非常に精密な位置決めを行うことで、プラッタ上の目的の場所に正確にアクセスできる。 データの記録は、プラッタの同心円上に存在する多数の「トラック」と呼ばれる領域に沿って行われる。各トラックはさらに扇形に分割され、「セクタ」と呼ばれるデータの最小単位を構成する。セクタには通常512バイトまたは4096バイトのデータが格納される。複数のセクタをまとめた論理的な単位は「クラスタ」と呼ばれ、ファイルシステムの管理単位となる。また、複数枚のプラッタにおいて、同じ半径位置にあるトラックの集合体を「シリンダ」と呼ぶ。これらの概念は、オペレーティングシステムが効率的にデータを管理し、アクセスするために利用される。 磁気ディスクの主な特徴としては、まずその「大容量性」と「低コスト性」が挙げられる。同容量のSSDと比較して安価であり、ペタバイト級の大容量ストレージシステムにも広く採用されている。しかし、物理的な駆動部品を持つため、データのアクセス速度は半導体メモリを用いたSSDに比べて遅いという欠点がある。特に、プラッタが回転し、磁気ヘッドが移動するまでの時間(シークタイムと回転待ち時間)がアクセス速度に影響を与える。また、高速回転する部品や精密な磁気ヘッドが内部にあるため、物理的な衝撃に弱く、動作中に大きな衝撃を受けるとデータが破損する可能性がある。消費電力もSSDより大きく、発熱も多い傾向にある。 近年では、記録密度を高めるために、プラッタの磁性体を垂直方向に磁化させる「垂直磁気記録方式(PMR)」や、トラックの一部を重ね書きすることで記録密度をさらに高める「瓦書き記録方式(SMR)」などの技術が採用されている。インターフェースとしては、かつてはIDE(ATA)が主流であったが、現在ではより高速なシリアル転送方式である「SATA(Serial ATA)」がパーソナルコンピュータ向けに、高性能なサーバやストレージシステム向けには「SAS(Serial Attached SCSI)」が広く用いられている。 磁気ディスク、特にHDDは、その大容量とコストパフォーマンスの良さから、今なおデータセンターのサーバー、ネットワークアタッチドストレージ(NAS)、監視カメラシステム、バックアップストレージなど、多岐にわたる用途で利用されている。SSDが普及し、起動ドライブや高速アクセスが必要な場面ではSSDが選ばれることが多いが、大量のデータを長期的に保存するアーカイブ用途や、コストを重視する大容量ストレージにおいては、磁気ディスクが引き続き重要な役割を担い続けている。

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