磁気テープドライブ (ジキテープドライブ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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磁気テープドライブ (ジキテープドライブ) の読み方

日本語表記

じきテープドライブ (ジキテープドライブ)

英語表記

Magnetic Tape Drive (マグネティック テープ ドライブ)

磁気テープドライブ (ジキテープドライブ) の意味や用語解説

磁気テープドライブとは、磁気テープと呼ばれる記録媒体にデータを記録し、または読み出すための装置である。主に大量のデータを長期間保存したり、システム全体のバックアップを取得したりする目的で利用される、伝統的なストレージシステムの一つだ。現代のITシステムにおいては、ディスクストレージやクラウドストレージが主流だが、磁気テープドライブはその特性から、特定の用途において今もなお重要な役割を担っている。特に、大容量データの低コストな保存や、オフラインでの堅牢なデータ保護手段として重宝されている。 磁気テープドライブのデータ記録原理は、テープ表面に塗布された磁性体に磁気ヘッドで磁化パターンを書き込むことでデータを保存する。データの読み出し時には、この磁化パターンを磁気ヘッドが読み取り、電気信号に変換してコンピューターに送る。磁気テープは通常、カセットやカートリッジに格納されており、ドライブに挿入することでデータの読み書きが可能となる。主流の規格としては、LTO(Linear Tape-Open)があり、世代が進化するごとに記録容量とデータ転送速度が向上している。 このストレージシステムは、いくつかの顕著な特徴を持つ。まず、圧倒的な大容量であることだ。1つのテープカートリッジでテラバイト、ペタバイト級のデータを保存でき、最新のLTO世代では非圧縮時で数十テラバイト、圧縮時にはさらにその数倍のデータを記録できる。これは、ディスクストレージと比較しても非常にコスト効率が良い。次に、単位容量あたりのコストが非常に低い点が挙げられる。テープメディアそのものが安価であり、長期保存においては電力消費もゼロであるため、運用コストも抑えられる。 しかし、磁気テープドライブには「シーケンシャルアクセス」という特性がある。これは、データを記録された順番にしか読み書きできないことを意味する。CDやDVDのように、目的の場所へ瞬時にアクセスできる「ランダムアクセス」型のストレージとは異なり、テープの途中に記録されたデータを読み出すには、その場所までテープを早送りまたは巻き戻す必要があるため、アクセスに時間がかかる。このため、頻繁にアクセスするデータや、高速なランダムアクセスを必要とするデータベースのような用途には不向きだ。 その一方で、シーケンシャルアクセスは、大容量のデータを一括でバックアップしたり、アーカイブとして長期保存したりする場合には非常に効率的だ。テープの巻き始めから終わりまで順次データを書き込む、あるいは読み出すことで、非常に高速なデータ転送速度を実現できる。特に、大容量のデータを継続的に書き込む「ストリーミング」処理においては、ディスクストレージよりも高いパフォーマンスを発揮することもある。 磁気テープドライブのもう一つの大きな利点は、その高い信頼性と長期保存性、そしてオフラインでの安全性だ。磁気テープは電力なしでデータを保持できるため、停電やシステム障害の影響を受けにくい。また、テープメディアをドライブから取り出して安全な場所に保管することで、サイバー攻撃やマルウェア感染といったオンライン上の脅威からデータを物理的に隔離できる。これを「エアギャップ」と呼び、災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)において極めて重要な要素となる。多くの企業や組織では、重要なデータのバックアップを磁気テープに保存し、遠隔地の倉庫に保管することで、最悪の事態に備えている。 主な用途としては、企業やデータセンターでの大規模なデータバックアップが挙げられる。膨大なシステムデータを定期的にテープに書き出し、不測の事態に備えるのだ。また、法的要件や監査対応のために、過去の取引履歴やログデータを数年から数十年にわたって保存する「データアーカイブ」にも利用される。医療画像データ、研究データ、放送コンテンツなど、非常に大きなファイルを長期にわたって保存する必要がある分野でも活躍している。さらに、インターネット経由では時間がかかりすぎるような、ペタバイト級のデータを物理的に別の場所に移動させる「データトランスポート」の手段としても使われることがある。 現代においては、SSDやHDDといった高速なディスクストレージ、そして柔軟なクラウドストレージが主流となっているが、磁気テープドライブは「コールドストレージ」と呼ばれる、アクセス頻度が低い大容量データの保存に適したソリューションとしてその地位を確立している。データを保護するための「3-2-1ルール」(少なくとも3つのコピーを2種類の異なるメディアに保存し、1つをオフサイトに保管する)においても、磁気テープはオフサイト保管の有力な選択肢となる。初期投資としてドライブ本体や自動的にテープを交換するライブラリ装置が必要となるが、その後の運用コストと容量単価の安さから、特定のニーズを持つ組織にとって依然として経済的かつ堅牢なデータ保存手段であると言えるだろう。

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