携帯電話番号ポータビリティ (ケイタイデンワバンゴウポータビリティ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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携帯電話番号ポータビリティ (ケイタイデンワバンゴウポータビリティ) の読み方

日本語表記

携帯電話番号ポータビリティ (ケイタイデンワバンゴウポータビリティ)

英語表記

Mobile Number Portability (モバイルナンバーポータビリティ)

携帯電話番号ポータビリティ (ケイタイデンワバンゴウポータビリティ) の意味や用語解説

携帯電話番号ポータビリティは、利用者が契約している携帯電話会社を変更する際に、これまで使用していた電話番号をそのまま新しい会社でも継続して利用できる制度である。英語ではMobile Number Portabilityと表記され、一般的にその頭文字を取ってMNPと略される。この制度が導入される以前は、携帯電話会社を乗り換えるたびに新しい電話番号を取得する必要があった。そのため、友人や知人、勤務先などへの番号変更の通知や、各種サービスに登録している電話番号の変更手続きなど、利用者に多大な手間と負担が生じていた。また、電話番号が変わることを懸念して、より良い料金プランやサービスを提供する他社への乗り換えをためらう利用者が多く、事業者間の公正な競争が阻害される一因ともなっていた。携帯電話番号ポータビリティは、こうした利用者の不便を解消し、サービスや料金に基づいた自由な事業者選択を促すことで、通信市場全体の活性化を図ることを目的として導入された。この制度により、利用者は電話番号という重要な個人情報を維持したまま、通信キャリアを自由に乗り換えることが可能になった。 携帯電話番号ポータビリティの実現には、複数の通信事業者が連携して電話番号の所属情報を管理する、高度なシステムが不可欠である。通常、電話番号は先頭の数桁とそれに続く番号の組み合わせによって、どの事業者に割り当てられた番号であるかが識別される。しかし、MNPを利用すると、番号自体は元の事業者のものでありながら、実際にその番号を管理・運用するのは移転先の事業者となる。この状態を解決し、正常な通信を確立するために、すべての携帯電話事業者が共同で利用する中立的な管理システムが存在する。日本では、電気通信事業者協会(TCA)が管理する「携帯電話番号ポータビリティ管理システム(NPDb)」がその役割を担っている。このシステムは、日本国内で利用されるすべての携帯電話番号について、現在どの事業者が管理しているかという最新の所属情報を記録した巨大なデータベースである。 ある電話からMNP利用者の番号へ発信する際の通信の流れは、このデータベースへの問い合わせ、すなわちルーティング照会を伴う。まず、発信側の通信事業者の交換機は、宛先の電話番号を受け取ると、その番号が自社のネットワーク内に存在するかを確認する。もし存在しない場合、またはMNPの可能性がある番号だと判断した場合、交換機は携帯電話番号ポータビリティ管理システムに問い合わせを行う。管理システムは、照会された電話番号が現在どの事業者に所属しているかの情報を即座に返す。発信側の交換機は、その応答結果に基づいて、正しい接続先となる事業者(移転先の事業者)のネットワークへ通信を中継する。この一連の処理はミリ秒単位で行われるため、利用者はMNPを利用している相手かどうかを意識することなく通話を開始できる。つまり、MNPとは、電話番号という固定的な識別子に対して、その通信経路(ルーティング)を動的に解決するための仕組みであると言える。 利用者がMNPの手続きを行う際のシステム間の連携も重要である。従来、利用者は移転元の事業者から「MNP予約番号」を取得し、それを持って移転先の事業者で契約手続きを行う必要があった。この予約番号は、移転元事業者の顧客管理システムが発行する一時的な識別子であり、移転処理の正当性を担保する役割を持つ。移転先の事業者は、この予約番号を用いて移転元事業者のシステムに照会をかけ、契約者情報と電話番号の移管を要求する。双方のシステムで合意が取れると、携帯電話番号ポータビリティ管理システムのデータベース情報が更新され、電話番号の所属事業者が正式に変更される。このデータベース更新が完了したタイミングで、回線の切り替えが行われ、利用者は新しい事業者のサービスを利用できるようになる。近年では、事業者間のシステム連携をさらに強化し、利用者が移転先の事業者で申し込むだけで手続きが完了する「ワンストップ方式」も導入されており、利用者利便性の向上とシステムによる手続きの自動化が進んでいる。このように、携帯電話番号ポータビリティは、利用者の利便性の裏側で、複数の事業者システムがリアルタイムに連携し、巨大なデータベースを共有することで成り立っている高度なITインフラの一つである。

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