移動平均法(イドウヘイキンホウ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

移動平均法(イドウヘイキンホウ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

移動平均法 (イドウヘイキンホウ)

英語表記

moving average (ムービングアベレージ)

用語解説

移動平均法は、時系列データ分析で用いられる基本的な手法の一つだ。特に、株価や売上データなど、時間の経過とともに変動するデータの傾向を把握し、将来の予測を行う際に役立つ。システムエンジニアが業務で扱うデータ分析基盤や、予測モデルの実装において、移動平均法の知識は必要となる場面がある。

移動平均法は、ある一定期間のデータの平均値を計算し、その平均値を順次移動させていくことで、データの変動を平滑化する。これにより、一時的なノイズの影響を軽減し、データの長期的なトレンドを把握しやすくする効果がある。具体的には、直近のn個のデータ点の平均値を計算し、それを次の時点の予測値とする。このnは「移動平均期間」と呼ばれ、分析対象のデータや目的に応じて適切な値を選択する必要がある。

移動平均法には、大きく分けて単純移動平均、加重移動平均、指数平滑移動平均の3種類がある。

単純移動平均(SMA: Simple Moving Average)は、最も基本的な移動平均の手法だ。計算方法は非常にシンプルで、指定された期間のデータを単純に合計し、期間数で割ることで平均値を算出する。例えば、5日間の単純移動平均であれば、過去5日間の株価を合計し、5で割ることで、その日の移動平均値を求める。すべてのデータに対して同様の計算を繰り返すことで、移動平均の系列を得る。単純移動平均は計算が容易である一方、すべてのデータ点に同じ重みを与えるため、直近のデータの変動を捉えにくいという欠点がある。

加重移動平均(WMA: Weighted Moving Average)は、単純移動平均の欠点を補うために考案された手法だ。加重移動平均では、各データ点に対して異なる重み付けを行う。一般的には、直近のデータほど大きな重みを与え、過去のデータほど小さな重みを与える。これにより、直近のデータの変動をより敏感に捉え、より精度の高い予測を行うことが期待できる。重み付けの方法は様々だが、例えば、直近のデータにn、その前のデータにn-1、さらに前のデータにn-2…といったように、線形に減少する重みを与える方法が一般的だ。

指数平滑移動平均(EMA: Exponential Moving Average)は、加重移動平均の一種であり、より効率的な計算方法を提供する。指数平滑移動平均では、過去のすべてのデータの影響を考慮するが、古いデータほど指数関数的に減少する重みを与える。これにより、計算に必要なデータ量を少なく抑えながら、過去のデータの長期的な影響も考慮した予測が可能になる。指数平滑移動平均の計算には、平滑化定数と呼ばれるパラメータが用いられる。この平滑化定数は、直近のデータにどれだけの重みを置くかを決定するもので、0から1の間の値を取る。平滑化定数が大きいほど、直近のデータの変動に敏感になり、小さいほど過去のデータの長期的な影響を重視する。

移動平均法は、そのシンプルさから多くの分野で利用されているが、いくつかの注意点がある。まず、移動平均期間の選択は、分析結果に大きな影響を与える。期間が短すぎると、ノイズの影響を受けやすく、期間が長すぎると、データの変動に対する感度が鈍くなる。適切な期間は、分析対象のデータや目的に応じて試行錯誤する必要がある。また、移動平均法は過去のデータに基づいて将来を予測するため、急激なトレンドの変化や、過去にない事象が発生した場合に対応できない場合がある。そのため、移動平均法はあくまで一つの参考として、他の分析手法と組み合わせて利用することが望ましい。

システム開発の現場では、移動平均法は例えば、サーバーのCPU使用率やネットワークトラフィックの監視、異常検知などに活用できる。過去のデータから移動平均を計算し、現在の値が移動平均から大きく乖離している場合に、異常と判断するといった使い方が考えられる。また、小売業におけるPOSデータの分析では、売上データの移動平均を計算することで、季節変動や曜日ごとの売上傾向を把握し、在庫管理や販売戦略に役立てることができる。移動平均法を理解し、適切に活用することで、様々なシステムの運用改善や、データに基づいた意思決定に貢献できるはずだ。

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