オブジェクト座標系(オブジェクトザドキョケイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
オブジェクト座標系(オブジェクトザドキョケイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
オブジェクト座標系 (オブジェクトザザイケイ)
英語表記
object coordinate system (オブジェクト・コーディネイト・システム)
用語解説
オブジェクト座標系とは、3Dグラフィックスやゲーム開発において、個々のオブジェクトが自分自身を基準として持つ独自の座標系を指す。この座標系は、ローカル座標系やモデル座標系とも呼ばれ、特定のオブジェクトがどのように配置され、どのような形状を持つかを定義するために不可欠な概念である。オブジェクト座標系の原点、つまり基準点は、通常そのオブジェクトの中心や特定の基準点に設定され、そこから各頂点や構成要素の位置が相対的に定義される。
このシステムがなぜ重要かというと、オブジェクトを独立して設計し、操作できるという利点があるためである。たとえば、一つのキャラクターモデルを考えてみよう。そのモデルを構成する各頂点やポリゴンは、キャラクター自身の体を基準とした座標で定義される。キャラクターの頭が胴体からどれくらいの位置にあるか、腕の指が手のひらからどれくらいの距離にあるか、といった情報はすべてキャラクター自身のオブジェクト座標系の中で表現される。このようにすることで、たとえキャラクター全体が広い仮想空間(ワールド)の中を移動したり、回転したり、拡大縮小されたりしても、キャラクター内部の各要素の位置関係はオブジェクト座標系の中では常に一定に保たれる。
詳細に説明すると、オブジェクト座標系はまず3Dモデルの作成段階で利用される。3Dモデリングソフトウェア(BlenderやMayaなど)では、通常、新しいオブジェクトを作成すると、そのオブジェクトは仮想空間の原点(0,0,0)に配置される。しかし、これは一時的なものであり、そのオブジェクトの内部の形状や構成要素の配置は、そのオブジェクト自身の原点(0,0,0)を基準として定義される。つまり、デザイナーはオブジェクトが最終的にどこに配置されるかを気にせず、そのオブジェクト単体の形状を集中して作成できる。例えば、椅子を作る場合、椅子の脚、座面、背もたれの各部品は、椅子の中心を原点とする座標で配置される。
オブジェクトがゲームエンジンや3Dアプリケーションの中で配置される際には、このオブジェクト座標系はワールド座標系と呼ばれる、より大きな仮想空間全体の座標系に変換される。ワールド座標系は、シーン全体の固定された基準であり、すべてのオブジェクトがその中で絶対的な位置を持つ。オブジェクト座標系からワールド座標系への変換は、モデル変換行列と呼ばれる数学的な操作によって行われる。この行列には、オブジェクトのワールド空間における位置(平行移動)、向き(回転)、そしてサイズ(拡大縮小)の情報が含まれている。この変換によって、オブジェクトの内部構造は保たれたまま、ワールド内の正しい場所に、正しい向きで、正しいサイズで表示される。
オブジェクト座標系のもう一つの重要な側面は、階層構造を持つオブジェクトにおけるその役割である。例えば、腕が肩に、指が手につながっているようなキャラクターを考える。この場合、肩は胴体のオブジェクト座標系の中で相対的な位置を持ち、腕は肩のオブジェクト座標系の中で相対的な位置を持つ。さらに指は腕や手のオブジェクト座標系の中で相対的な位置を持つ。このように、親オブジェクトのオブジェクト座標系を基準として、子オブジェクトのオブジェクト座標系が定義されることがあり、これをローカル座標系と呼ぶこともある。親オブジェクトが移動したり回転したりすると、その子オブジェクトも親の動きに合わせて一緒に移動・回転するが、子オブジェクト自身の内部的な形状や、親に対する相対的な位置は変わらない。これは、キャラクターアニメーションの骨格(ボーン)システムで特に顕著に見られる。各ボーンは自身のオブジェクト座標系を持ち、そのボーンが回転すると、その子ボーンも親のボーンのオブジェクト座標系を基準として連動して動く。
このように、オブジェクト座標系は、個々の3Dモデルを独立して設計し、管理し、そしてそれらをワールド空間に柔軟に配置・操作するための基盤となる。これにより、複雑な3Dシーンやアニメーションを効率的に構築し、現実世界のオブジェクトの関係性に近い形で仮想世界を表現することが可能となる。