オブジェクト指向(オブジェクトオリエンテッド)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オブジェクト指向(オブジェクトオリエンテッド)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オブジェクト指向 (オブジェクトオリエンティッド)

英語表記

Object-Oriented (オブジェクトオリエンテッド)

用語解説

オブジェクト指向とは、ソフトウェア開発におけるプログラミングの考え方や手法の一つである。現代の複雑なシステム開発において広く採用されており、システムエンジニアを目指す上で避けては通れない重要な概念だ。この考え方では、プログラムを「データ」と「そのデータを操作する手続き(処理)」を一体とした「オブジェクト」という単位で捉え、それらのオブジェクト同士が連携することでシステム全体を構築する。現実世界の様々なモノや概念をプログラム上でモデル化することを目指し、これにより、プログラムの構造をより直感的で理解しやすいものにする。

オブジェクト指向の導入は、主にプログラムの再利用性、保守性、拡張性の向上を目的としている。システムが大規模化し、機能が複雑になるにつれて、従来のプログラミング手法ではコードが読みにくくなったり、変更を加えた際の影響範囲が広がりすぎたりといった問題が発生しやすかった。オブジェクト指向は、これらの問題を解決し、より効率的で高品質なソフトウェア開発を可能にするためのパラダイムとして確立された。

オブジェクト指向プログラミングを理解する上で、まず「クラス」と「オブジェクト」の関係を把握することが重要である。 オブジェクトとは、プログラムを構成する個々の具体的な「モノ」を指す。例えば、ECサイトであれば「商品」や「顧客」、ゲームであれば「キャラクター」や「アイテム」などがオブジェクトとなる。それぞれのオブジェクトは、固有の「属性」(データ)と、その属性を操作したり、外部からの要求に応えたりする「振る舞い」(メソッド、関数)を持つ。例えば、「商品」オブジェクトであれば、「商品名」「価格」「在庫数」といった属性と、「価格を変更する」「在庫を減らす」といった振る舞いを持ちうる。 一方、クラスとは、そのようなオブジェクトを生成するための「設計図」や「テンプレート」に相当する。クラスは、どのような属性を持つか、どのような振る舞いをするかという定義を記述する。例えば、「商品」というクラスを定義することで、「りんご」という商品オブジェクトや「バナナ」という商品オブジェクトを、それぞれ固有の属性値(「りんご」の商品名と価格、「バナナ」の商品名と価格など)を持つ具体的なインスタンスとして複数生成できる。クラスは抽象的な概念であり、オブジェクトはクラスを基に作られた具体的な実体であるという関係にある。

オブジェクト指向には、その強力な効果を支える主要な三つの概念がある。これらは「カプセル化」「継承」「ポリモーフィズム」と呼ばれ、これらを理解することがオブジェクト指向の真髄を掴む鍵となる。

まず「カプセル化」とは、データ(属性)と、そのデータを操作する処理(メソッド)を一つにまとめ、オブジェクトの内部構造を外部から隠蔽する仕組みである。これにより、オブジェクトの外部からは、そのオブジェクトが提供する特定のインターフェース(メソッド)を通じてのみデータにアクセスしたり、操作したりすることが可能になる。オブジェクト内部でデータがどのように保持され、どのようなロジックで処理されているかという詳細な実装は、外部からは見えないように「カプセル」の中に閉じ込められる。この情報の隠蔽は、オブジェクトの内部実装を変更しても、そのオブジェクトを利用している外部のコードに影響を与えにくくするという大きな利点をもたらす。例えば、商品の在庫管理方法が変更されたとしても、在庫を操作するメソッドのインターフェースが変わらなければ、外部のコードは変更の影響を受けずに済む。これにより、プログラム全体の保守性が大幅に向上する。

次に「継承」とは、既存のクラス(親クラス、またはスーパークラス)の持つ属性やメソッドを、新しいクラス(子クラス、またはサブクラス)が受け継ぐ仕組みである。子クラスは親クラスの機能をそのまま利用できるだけでなく、独自の属性やメソッドを追加したり、親クラスのメソッドの動作を上書き(オーバーライド)したりすることも可能だ。例えば、「動物」という親クラスが「名前」「鳴く」といった共通の属性や振る舞いを定義しているとする。ここから「犬」や「猫」といった子クラスを派生させると、それらは「動物」クラスの属性や振る舞いを引き継ぎつつ、「犬」は「ワンと鳴く」、「猫」は「ニャーと鳴く」といった具体的な鳴き方を独自に定義できる。継承は、コードの重複を排除し、プログラムの再利用性を高める上で非常に有効である。共通の機能を一度だけ記述すればよく、異なる種類でも共通の特性を持つオブジェクトを階層的に整理し、管理しやすくなる。

最後に「ポリモーフィズム」(多態性、多様性とも訳される)とは、同じ名前のメソッドが、オブジェクトの種類によって異なる振る舞いをすること、または共通のインターフェースを通じて異なる種類のオブジェクトを統一的に扱える性質を指す。上記の例で言えば、「動物」クラスに定義された「鳴く」というメソッドを、それが「犬」オブジェクトから呼ばれれば「ワン」と鳴き、「猫」オブジェクトから呼ばれれば「ニャー」と鳴く、といった具合に、実行時に実際のオブジェクトの種類に応じて異なる処理が実行される。プログラムの呼び出し側は、具体的なオブジェクトが「犬」なのか「猫」なのかを意識することなく、「鳴く」という共通の命令を与えるだけで、それぞれのオブジェクトが適切に反応してくれる。この特性は、プログラムの柔軟性と拡張性を飛躍的に高める。新しい種類の動物(例えば「鳥」)が追加されても、その動物クラスに「鳴く」メソッドを定義しておけば、既存の「動物」オブジェクトを扱うコードを変更することなく、新しい動物も統一的に扱えるようになる。これにより、変化に強く、長期的な運用が容易なシステム構築が可能となる。

これらのオブジェクト指向の概念を理解し、適切に適用することで、大規模かつ複雑なソフトウェアシステムを、より効率的かつ品質高く開発することが可能となる。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、最初は抽象的で難解に感じるかもしれないが、繰り返し学習し、実際にコードを記述する経験を積むことで、その強力な恩恵を実感できるだろう。オブジェクト指向は、現代のソフトウェア開発において不可欠なスキルの一つであり、その習得はキャリアを築く上で大きな強みとなる。