オブジェクト指向プログラミング(オブジェクトオリエンテッドプログラミング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
オブジェクト指向プログラミング(オブジェクトオリエンテッドプログラミング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
オブジェクト指向プログラミング (オブジェクトオリエンテッドプログラミング)
英語表記
Object-Oriented Programming (オブジェクトオリエンテッドプログラミング)
用語解説
オブジェクト指向プログラミングは、現代のソフトウェア開発において広く採用されている主要なプログラミングパラダイムの一つである。これは、プログラムを構成する要素を、現実世界に存在する「モノ」に見立てた「オブジェクト」の集まりとして捉える考え方に基づいている。従来のプログラミング手法である手続き型プログラミングが、処理の「手順」を順に記述していくのに対し、オブジェクト指向では、オブジェクトが持つ「データ(属性)」と「振る舞い(操作)」を一体の部品として扱い、それらの相互作用によってシステム全体を構築する。このアプローチにより、大規模で複雑化するソフトウェアの設計や開発を、より体系的かつ効率的に進めることが可能となる。プログラムの部品化が促進されるため、コードの再利用性が高まり、仕様変更や機能追加が発生した際にも修正の影響範囲を限定しやすくなるという利点があり、保守性や拡張性に優れたソフトウェア開発を実現する上で不可欠な概念となっている。
オブジェクト指向プログラミングを理解する上で、中心となるのが「クラス」と「オブジェクト」という二つの概念である。クラスとは、オブジェクトを生成するための設計図やテンプレートに相当する。例えば、「自動車」というクラスを定義する場合、その設計図には「色」や「メーカー名」といったデータ(属性)と、「走る」や「止まる」といった振る舞い(メソッド)が記述される。一方、オブジェクトは、そのクラスという設計図に基づいて実際に生成された実体のことを指し、インスタンスとも呼ばれる。同じ「自動車」クラスから、「赤いスポーツカー」や「青いセダン」といった、具体的な属性値を持つ個別のオブジェクトを複数生成することができる。このように、クラスを定義し、それに基づいてオブジェクトを生成することで、プログラム内に構造化された部品を作り出していくのが、オブジェクト指向の基本的な流れである。
さらに、オブジェクト指向プログラミングには、その強力さを支える三つの重要な基本原則が存在する。それは「カプセル化」「継承」「ポリモーフィズム(多態性)」である。
一つ目の「カプセル化」は、オブジェクトの内部データとそのデータを操作するメソッドを一つにまとめ、外部から内部の詳細を隠蔽する仕組みである。オブジェクトの利用者は、公開されたメソッドを通じてのみデータにアクセスし、操作を行う。これにより、オブジェクトの内部実装を知らなくても安全に利用できるだけでなく、意図しないデータ改変を防ぎ、プログラムの堅牢性を高めることができる。また、将来的にオブジェクトの内部ロジックを変更する必要が生じても、公開しているメソッドの仕様が変わらなければ、そのオブジェクトを利用している他のプログラムに影響を与えることなく修正が可能となり、保守性を大幅に向上させる。
二つ目の「継承」は、既存のクラスが持つ属性やメソッドを引き継いで、新しいクラスを作成する機能である。元のクラスを親クラス(スーパークラス)、新しく作成されたクラスを子クラス(サブクラス)と呼ぶ。例えば、「動物」という親クラスが持つ「食べる」「寝る」といった基本的な機能を、「犬」や「猫」といった子クラスが引き継ぐことができる。子クラスは、親クラスの機能に加えて、「吠える」や「爪を研ぐ」といった独自の機能を追加したり、親から引き継いだ機能の振る舞いを独自に定義し直したりすることも可能である。継承を用いることで、共通するコードの重複を排除し、プログラムの再利用性を高め、開発効率を向上させることができる。
三つ目の「ポリモーフィズム(多態性)」は、ギリシャ語で「多くの形を持つ」という意味であり、同じ名前のメソッド呼び出しに対して、オブジェクトの種類に応じて異なる動作をさせることができる性質を指す。例えば、前述の「犬」オブジェクトと「猫」オブジェクトが、どちらも親の「動物」クラスから「鳴く」というメソッドを継承しているとする。プログラム上で、それぞれのオブジェクトに対して「鳴く」よう指示した場合、「犬」オブジェクトは「ワン」と鳴き、「猫」オブジェクトは「ニャー」と鳴く。このように、呼び出す側は相手が犬か猫かを意識することなく、単に「動物として鳴く」という共通のインターフェースで命令するだけで、各オブジェクトが自身の特性に応じた適切な振る舞いをする。このポリモーフィズムにより、プログラムは柔軟性と拡張性を獲得し、新しい種類のオブジェクトが追加された場合でも、既存のコードへの変更を最小限に抑えることができる。
これらの概念を駆使することで、オブジェクト指向プログラミングは、複雑なソフトウェアを人間が理解しやすい単位に分割し、それぞれの部品の独立性を保ちながら、システム全体として協調動作させることを可能にする。システムエンジニアを目指す上で、このオブジェクト指向の考え方を深く理解することは、品質の高いソフトウェアを設計し、開発するための基礎的な素養となる。