オブジェクトストレージ(オブジェクトストレージ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
オブジェクトストレージ(オブジェクトストレージ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
オブジェクトストレージ (オブジェクトストレージ)
英語表記
Object storage (オブジェクトストレージ)
用語解説
オブジェクトストレージは、データを「オブジェクト」という単位で管理するコンピューターストレージのアーキテクチャである。従来のストレージ技術として知られるファイルストレージやブロックストレージとは異なる思想で設計されており、特にクラウド環境で扱われるような、大規模で非構造化なデータの保存と管理に優れた特性を持つ。オブジェクトストレージを理解する上で最も重要な概念は、データの構成単位である「オブジェクト」そのものにある。一つのオブジェクトは、通常「データ本体」「メタデータ」「一意のID」という三つの要素から構成される。データ本体とは、画像、動画、音声、文書、ログファイルといった、保存したいデータそのものを指す。メタデータは、そのデータに関する付加情報であり、データの作成日、更新日、コンテンツタイプ、サイズといったシステムが自動で付与する情報に加え、アプリケーションが独自に定義したタグ情報(例:顧客ID、プロジェクト名、データのカテゴリなど)を自由に付与することができる。そして、一意のIDは、広大なストレージ空間の中からそのオブジェクトを唯一に特定するための識別子である。
オブジェクトストレージの最大の特徴は、ファイルストレージのような階層構造を持たない点にある。ファイルストレージでは、データはディレクトリ(フォルダ)の中にファイルを格納するという階層的なツリー構造で管理される。これは人間にとっては直感的で分かりやすいが、データ量が数千万、数億と増大するにつれて、構造が複雑化し、特定のファイルを探し出す際の性能が低下するという課題があった。一方、オブジェクトストレージでは、全てのオブジェクトが階層のないフラットなアドレス空間に並列で格納される。そのため、保存されているデータ量にほぼ関係なく、一意のIDを指定することで、目的のデータに直接かつ高速にアクセスすることが可能となる。この構造が、ペタバイトやエクサバイト級のデータを扱うシステムにおいても、性能を維持しながらスケールアウトできるという、極めて高いスケーラビリティの源泉となっている。
オブジェクトストレージへのアクセス方法も特徴的である。ファイルシステムのようにOSにマウントして利用するのではなく、通常はHTTP/HTTPSプロトコルをベースとしたRESTful APIを介してデータの読み書きや削除といった操作を行う。これにより、特定のOSやファイルシステムに依存することなく、Webブラウザや様々なプログラミング言語からネットワーク経由で簡単にデータへアクセスできる。このアーキテクチャはインターネットとの親和性が非常に高く、クラウドサービスとして提供されるストレージの多くがこの方式を採用している。特に、Amazon Web Servicesが提供するAmazon S3のAPIは、オブジェクトストレージにおける事実上の業界標準となっている。
また、オブジェクトストレージはデータの耐久性と可用性を非常に高く保つように設計されている。データが書き込まれる際、そのデータは自動的に複数の物理サーバーや、場合によっては地理的に離れた複数のデータセンターに複製(レプリケーション)される。この冗長化により、一部のハードウェアに障害が発生したり、特定のデータセンターが利用不能になったりしても、データが失われるリスクを最小限に抑え、サービスの継続性を確保する。多くのクラウドサービスでは、99.999999999%(イレブンナイン)といった極めて高いデータ耐久性を保証している。
オブジェクトストレージの具体的な用途は多岐にわたる。まず、大容量データのバックアップやアーカイブ先として非常に有効である。変更頻度の低いデータを安全かつ低コストで長期間保存するのに適している。次に、Webサイトやアプリケーションで使用される画像、動画、静的ファイルといったコンテンツの配信元としても広く利用される。コンテンツデリバリネットワーク(CDN)と組み合わせることで、世界中のユーザーへコンテンツを高速に配信することが可能である。さらに、IoTデバイスから収集される膨大なセンサーデータや、ビッグデータ分析のためのデータレイクとして、多種多様な形式の生データを一元的に蓄積する基盤としても活用される。クラウドネイティブなアプリケーションにおいて、ステートレスなコンテナが生成するデータを永続化するための保存先としても重要な役割を担っている。
総括すると、オブジェクトストレージは、現代のデジタル社会で爆発的に増加し続ける非構造化データを、高いスケーラビリティ、耐久性、可用性を維持しながら、効率的かつ低コストで管理するために最適化されたストレージ技術である。その柔軟性と堅牢性から、クラウドコンピューティングを支える中核的な基盤技術の一つとして、その重要性を増し続けている。