オフサイト(オフサイト)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オフサイト(オフサイト)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オフサイト (オフサイト)

英語表記

off-site (オフサイト)

用語解説

オフサイトとは、物理的に「離れた場所」を指す言葉であり、IT分野ではシステムやデータの運用、あるいはチームの活動において、通常の業務を行う場所とは別の地理的な場所で何らかの作業や保管を行うことを意味する。この概念は、リスクの分散、セキュリティの強化、特定の目的への集中といった、さまざまなメリットをもたらすために利用される。

ITシステムにおけるオフサイトの利用は多岐にわたるが、特に重要なのは、データバックアップのオフサイト保管と、災害復旧(DR: Disaster Recovery)サイトのオフサイト設置である。システムやデータの運用において、自然災害(地震、火災、洪水など)や人為的ミス、サイバー攻撃といった予期せぬ事態が発生し、データが損失したり、システムが停止したりするリスクは常に存在する。これらのリスクに備え、重要なデータやシステム環境を、主要なシステムが稼働する場所とは物理的に離れた場所に保管・構築することがオフサイトの主な目的となる。

データバックアップのオフサイト保管は、企業の事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)や災害復旧計画(DRP)において不可欠な要素である。もし全てのバックアップデータが主要なシステムと同じ場所に存在していれば、その場所が被災した場合、システムだけでなくバックアップデータも同時に失われる可能性が高い。これを防ぐため、例えば主要なデータセンターが東京にあるならば、バックアップデータは大阪や福岡といった別の地理的エリアのストレージに保管するといった対策が取られる。これにより、広範囲な災害が発生しても、少なくともオフサイトに保管されたデータから復旧を開始できる確率が高まる。オフサイトに保管されるデータには、基幹業務システムで扱われる顧客情報や売上データ、社員情報といった重要データだけでなく、OSのイメージファイル、アプリケーションのインストールデータ、システムの設定情報など、システムを再構築するために必要なあらゆる情報が含まれる。これらのデータは、磁気テープ、外付けハードディスク、SSDなどの物理媒体に保存し、定期的にオフサイトの保管施設へ輸送する方法や、ネットワーク経由で遠隔地のデータセンターやクラウドストレージサービスへ転送・同期する方法が一般的である。

災害復旧サイトのオフサイト設置も、システム全体の可用性を高める上で極めて重要である。これは、主要なデータセンターが機能停止した場合に備え、あらかじめ別の場所に代替となるシステム環境を構築しておくことを指す。代替サイトの準備状況によって、コールドサイト(最小限の設備のみを用意し、災害時に機器を搬入して構築を開始)、ウォームサイト(一部の機器を設置し、定期的にデータを同期して、短期間で復旧可能)、ホットサイト(主要サイトと常に同期し、即座に切り替え可能な状態)といった種類がある。これらのサイトは、地理的に十分に離れた場所に設置され、主要サイトとは異なる電力系統や通信経路を利用することが望ましいとされる。これにより、単一障害点(SPOF: Single Point Of Failure)のリスクを低減し、災害時においても事業活動の継続性を確保できるようになる。

また、IT分野におけるオフサイトは、データの保管や災害対策だけでなく、特定の業務活動やプロジェクトの遂行においても用いられる。例えば、重要な会議や集中を要する開発作業、あるいは特定のテーマに特化した研修などを、通常のオフィスから離れた場所で実施する場合がある。これを「オフサイトミーティング」や「オフサイト研修」と呼ぶ。通常の業務環境から離れることで、日常業務の割り込みが少なくなり、参加者は議論や作業に集中しやすくなるというメリットがある。これにより、創造的なアイデアが生まれやすくなったり、短期間で集中的に問題を解決したりする効果が期待できる。例えば、システム開発プロジェクトにおいて、新しい技術の検証やアーキテクチャ設計といったクリティカルなフェーズで、チームが合宿形式でオフサイト作業を行うケースは少なくない。セキュリティ上の理由から、通常のネットワークから隔離された環境で作業を行う必要がある場合も、オフサイトの施設が利用されることがある。

オフサイトを利用する際には、いくつかの考慮事項がある。第一に、コストである。遠隔地の施設利用料、データの転送費用、物理媒体の輸送費用、従業員の交通費や宿泊費など、オンサイトでの運用に比べて追加の費用が発生することが多い。第二に、セキュリティである。オフサイトに保管されたデータやオフサイトで実施される作業環境に対する物理的、論理的なセキュリティ対策は、オンサイトと同様かそれ以上に厳重に行う必要がある。保管施設へのアクセス制御、データの暗号化、セキュアなネットワーク通信経路の確保などが求められる。第三に、運用管理の複雑さである。オンサイトとオフサイト間でデータを同期する際の整合性の確保、災害発生時の復旧手順の確立と定期的なテスト、オフサイト環境の保守・管理など、考慮すべき点は多岐にわたる。

しかし、これらの考慮事項を適切に管理することで、オフサイトはITシステムの可用性、信頼性、そして企業の事業継続性を向上させるための強力な手段となる。システムエンジニアを目指す者にとって、オフサイトの概念とその具体的な適用方法を理解することは、堅牢なシステム設計と効果的なリスクマネジメントを行う上で不可欠な知識であると言える。