オフロード(オフロード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オフロード(オフロード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オフロード (オフロード)

英語表記

offload (オフロード)

用語解説

「オフロード」とは、システムやソフトウェアにおいて、ある主要な処理装置やコンポーネントが担うべきタスクの一部を、別の専用の装置やソフトウェア、またはより適した別の処理系に委譲し、その負荷を軽減する仕組みを指す。この言葉は、本来「荷降ろし」や「車両の積載物を降ろすこと」といった意味を持つが、ITの文脈では、メインの処理系が抱える「荷物」、つまり処理負荷を別の場所に「降ろす」というニュアンスで用いられる。主な目的は、メインの処理系のリソースを解放し、全体的なシステムパフォーマンスの向上、スループットの増大、応答時間の短縮を図ることにある。

システムの処理能力には限界があり、特に汎用的な中央演算処理装置(CPU)は様々なタスクをこなす反面、特定の種類の処理においては効率が悪い場合がある。このような状況でオフロードが有効となる。例えば、高い計算能力を必要とする特定の処理や、入出力(I/O)がボトルネックとなる処理、繰り返し発生する定型的な処理などを、その処理に特化したハードウェアやソフトウェア、あるいは並行して動作する別のリソースに任せることで、メインのCPUはより重要なビジネスロジックやアプリケーション処理に集中できるようになる。

具体的なオフロードの例は多岐にわたる。最も一般的なものの一つに、ネットワーク処理のオフロードがある。ネットワークインターフェースカード(NIC)には、TCP/IPプロトコルスタックの一部処理をCPUの代わりに実行する機能が搭載されていることがある。これをTCP Offload Engine(TOE)と呼び、特に高速なネットワーク通信において、パケットのセグメンテーション(分割)や再構築、チェックサム計算などをNICが肩代わりすることで、CPUのネットワーク処理による負荷を大幅に軽減する。また、Remote Direct Memory Access(RDMA)技術は、ネットワーク上の別のサーバーのメモリにCPUを介さずに直接データを読み書きすることを可能にし、これもネットワークI/Oのオフロードの一種と言える。仮想化環境では、Single Root I/O Virtualization(SR-IOV)のような技術により、仮想マシンが物理NICの機能に直接アクセスできるようになり、仮想化レイヤーによるネットワーク処理のオーバーヘッドを削減する。

暗号化・復号化処理のオフロードも重要な例である。Secure Sockets Layer/Transport Layer Security(SSL/TLS)による通信暗号化は、WebサーバーにとってCPU負荷の高い処理であり、特に大量の同時接続を処理するWebサイトでは深刻なボトルネックとなることがある。このため、専用のSSLアクセラレータやSSLオフローダーと呼ばれるハードウェアデバイスや、特定の機能に特化したネットワーク機器(ロードバランサーなど)が用いられる。これらのデバイスは、SSL/TLSハンドシェイクやデータ暗号化・復号化といった計算集約的な処理を専門に行い、WebサーバーのCPU負荷を軽減する。これにより、Webサーバーはアプリケーションの処理により多くのリソースを割り当てられるようになる。

グラフィックス処理のオフロードも身近な例である。CPUが本来汎用的な計算を担うのに対し、Graphics Processing Unit(GPU)は画像や映像の描画、あるいは並列計算に特化したアーキテクチャを持つ。コンピュータグラフィックスの描画はもちろんのこと、近年ではディープラーニングにおける機械学習の学習処理や、ビッグデータ解析など、大量の並列計算を必要とするタスクをGPUにオフロードすることで、CPU単体では実現不可能な処理速度と効率を実現している。

データベースシステムにおけるオフロードも存在する。例えば、オンライン取引処理(OLTP)が中心のデータベースシステムから、レポート作成やデータ分析などのオンライン分析処理(OLAP)を別のデータベースやデータウェアハウスにオフロードする構成は一般的である。これにより、OLTPシステムはトランザクション処理の応答性を維持しつつ、分析処理による負荷の影響を受けずに済む。また、リードレプリカ(読み取り専用の複製データベース)を作成し、読み取りクエリをレプリカにオフロードすることで、プライマリデータベースの書き込み処理に集中させ、全体のスループットを向上させるケースも多い。

クラウドコンピューティング環境では、広義のオフロードとして、インフラの管理や特定のサービス機能をクラウドプロバイダーに委ねる形態が見られる。例えば、データベースサービス(DBaaS)やメッセージキューサービスなどを利用することは、自社でデータベースサーバーやメッセージキューサーバーを構築・運用する負荷をクラウドプロバイダーにオフロードしていると解釈できる。これにより、企業はインフラ管理の複雑性から解放され、より上位のアプリケーション開発にリソースを集中できる。

オフロードの利点は、メインシステムの性能向上だけでなく、消費電力の削減(専用ハードウェアがより効率的な場合)、専門性の高い処理を専門の機器に任せることによる信頼性の向上などが挙げられる。しかし、オフロードにはデメリットや考慮すべき点も存在する。専用ハードウェアの導入には初期コストがかかり、また、システムのアーキテクチャが複雑になるため、設計、導入、運用、トラブルシューティングの難易度が上がる可能性がある。オフロード先の処理能力がボトルネックになることもあり得るため、どのタスクを、どの程度の粒度で、どの程度オフロードするかの見極めが重要となる。効果的なオフロード戦略は、システムの全体像を理解し、ボトルネックを正確に特定することから始まる。