オンライン分析処理(オンラインブンセキショリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オンライン分析処理(オンラインブンセキショリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オンライン分析処理 (オンラインブンセキショリ)

英語表記

OLAP (オーラプ)

用語解説

オンライン分析処理(OLAP)は、企業が持つ膨大なビジネスデータを多角的かつ迅速に分析し、経営戦略の策定や市場動向の把握、そして効果的な意思決定を支援するための情報システム技術である。これは、日常の業務取引を高速に処理するオンライン取引処理(OLTP)とは明確に異なる目的を持つ。OLTPが個々のトランザクション(例えば商品の購入や口座の入出金など)を迅速かつ正確に記録することに主眼を置くのに対し、OLAPは蓄積された過去のデータを様々な切り口から集計・分析し、その中に潜む傾向やパターン、異常値を明らかにすることに焦点を当てる。時間、地域、製品、顧客といった複数の視点からデータを瞬時に組み合わせて分析できる能力は、現代の複雑なビジネス環境において、企業が競争力を維持・向上させる上で不可欠な要素となっている。

オンライン分析処理の導入は、従来のデータベースシステムが抱えていた分析上の課題を解決するために進められた。一般的なリレーショナルデータベースは、データの整合性を保ち、個々の取引を効率的に処理するよう設計されているため、複雑な集計や多角的な分析を行う際には、複数のテーブルを結合する処理が頻繁に発生し、大規模なデータ量になるとその実行に膨大な時間とシステムリソースを要するという課題を抱えていた。この非効率性が、意思決定の遅れを招く原因となることが多かった。OLAPシステムは、この課題を克服するため、分析に特化したデータ構造と処理方式を採用する。まず、業務システムから抽出・変換・格納された過去の履歴データや集計データが、データウェアハウスやデータマートと呼ばれる分析専用のデータベースに蓄積される。そして、OLAPエンジンはこの分析用データベースを基に、データを「多次元キューブ」という概念的な構造で表現する。多次元キューブは、売上高や販売数量、利益額といった数値データ(メジャー)を、時間(年、月、日)、地域(国、都道府県、店舗)、製品(カテゴリ、ブランド、品番)、顧客(年齢層、性別、会員ランク)といった複数の分析軸(ディメンション)で構成される。この構造により、例えば「特定の地域における製品カテゴリごとの月別売上推移」や「主要顧客層の製品別購買傾向」など、多様な視点からの分析が視覚的かつ直感的に可能となる。

多次元キューブ上でのデータ分析は、特定の軸でデータを絞り込む「スライス」操作や、複数の軸に条件を適用して一部分を切り出す「ダイス」操作によって行われる。例えば、スライスは「特定の年(2023年)」にデータを絞り込み、ダイスは「2023年の関東地方におけるスポーツ用品の売上データ」を抽出するような操作に相当する。また、分析の粒度を変更する操作として、年単位のデータから月単位、さらに日単位へと詳細なデータへ掘り下げていく「ドリルダウン」、その逆に日単位のデータから月単位、年単位へと上位レベルの集計データへまとめる「ロールアップ」がある。さらに、ディメンションの配置を入れ替える「ピボット」(回転)操作により、視点を変えた分析が容易に行える。例えば、最初は縦軸に製品、横軸に地域で売上を見ていたものを、縦軸に地域、横軸に時間に変えることで、異なる視点からデータを把握できる。これらの操作を組み合わせることで、ユーザーは膨大なデータの中に隠されたトレンドや異常値、ビジネス上の機会やリスクを効率的に発見できる。

OLAPの実装方式には、MOLAP(Multidimensional OLAP)、ROLAP(Relational OLAP)、HOLAP(Hybrid OLAP)の三つが代表的である。MOLAPは、分析対象となる多次元キューブ自体を専用のデータベース(多次元データベース)として構築し、分析に必要な集計値をあらかじめ計算して格納しておく。これにより、ユーザーからのクエリに対して非常に高速な応答性能を実現するが、キューブのデータ量が増大すると構築やメンテナンスが複雑になる傾向がある。一方、ROLAPは、データウェアハウスとして利用しているリレーショナルデータベースを直接OLAPエンジンが参照し、分析クエリをSQL文に変換して実行する。これは既存のリレーショナルデータベース資産を最大限に活用できる利点があるが、複雑な多次元クエリが増えると、その都度SQLを実行するため、MOLAPに比べてパフォーマンスが劣る場合がある。HOLAPは、MOLAPとROLAPのそれぞれの長所を組み合わせた方式で、詳細なデータはリレーショナルデータベースに、頻繁に参照される集計済みのデータは多次元データベースに保持し、両者を連携させて利用する。これにより、高速な応答性と柔軟なデータアクセスを両立させることを目指す。オンライン分析処理は、経営者やアナリストが迅速かつ正確な意思決定を行うための強力なツールであり、市場の変化に素早く対応し、競争優位性を確立することに大きく貢献する。過去のデータから将来の動向を予測したり、これまで見過ごされていたビジネスチャンスや隠れた問題を浮き彫りにしたりする、ビジネスインテリジェンス(BI)活動の基盤としても不可欠な技術である。しかし、OLAPシステムの導入と運用には、いくつかの課題も存在する。データウェアハウスや多次元キューブの設計は、ビジネス要件を深く理解し、将来の分析ニーズを見据えた適切なモデルを構築する必要があるため、高度な専門知識と経験を要する。また、データの鮮度を保つためには、業務システムからの定期的かつ効率的なデータ抽出・変換・格納プロセス(ETL/ELT)の構築と運用が不可欠であり、システムのメンテナンスコストも考慮に入れる必要がある。

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