オンプレミス(オンプレミス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
オンプレミス(オンプレミス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
オンプレミス (オンプレミス)
英語表記
on-premises (オンプレミス)
用語解説
オンプレミスとは、情報システムを構成するサーバー、ネットワーク機器、ストレージといったハードウェア、およびOS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、データベース、アプリケーションソフトウェアといったソフトウェアの全てを、企業や組織が自社で保有する施設内、または自社が管理するデータセンター内に設置し、運用・保守する形態を指す。この言葉は「on-premises」という英語に由来し、「敷地内で」「構内で」といった意味合いを持つ。つまり、情報システムの全ての構成要素が自社の管理下に物理的に存在することを意味する。
かつては情報システムを導入する際の標準的な形態であった。企業が新たなシステムを構築する際、まず必要なハードウェアを選定・購入し、自社のサーバー室などに設置する。次に、OSやミドルウェアをインストールし、その上に業務アプリケーションを開発・導入して稼働させる。これらの作業は全て自社のIT部門が行うか、外部のシステムインテグレーターに委託して、自社の責任と管理のもとで進められる。システムの設計から構築、運用、保守、そして廃棄に至るまで、そのライフサイクル全体を通じて自社が全面的に管理責任を負うのがオンプレミスの最大の特徴である。
詳細に入ると、オンプレミス環境の構築と維持には多岐にわたる専門知識とリソースが必要となる。まず、物理的なインフラとして、サーバー本体、データを格納するためのストレージシステム、それらを接続するネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)、そして電力供給や空調、防火設備、入退室管理といったデータセンター環境そのものを整備する必要がある。これらは全て自社で購入し、初期投資として計上される。
次に、これらのハードウェア上で動作させるソフトウェアとして、Windows ServerやLinuxといったOS、Webサーバーソフトウェアやアプリケーションサーバーソフトウェアといったミドルウェア、Oracle DatabaseやSQL Serverといったデータベース管理システム、そして最終的に利用者が操作する業務アプリケーションを導入する。これらのソフトウェアも多くの場合、永続ライセンスを購入するか、年間契約を結ぶ形で自社が保有し、その利用権を管理する。
オンプレミス環境の最大のメリットは、その「自由度の高さ」と「セキュリティのコントロール」にある。自社で全てを所有・管理するため、システムの設計や構成、使用する技術スタックにおいて、極めて高いカスタマイズ性を享受できる。特定のベンダーの制約を受けにくく、自社の独自の要件や既存システムとの連携に合わせて、最適なアーキテクチャを自由に構築できる。また、データが自社管理下の物理的な場所にあるため、情報漏洩や不正アクセスに対する物理的・論理的なセキュリティ対策を徹底し、自社の厳格なセキュリティポリシーを直接適用しやすい。金融機関や官公庁など、特に厳しいセキュリティ規制やコンプライアンス要件を持つ業界では、この点がオンプレミスを選択する大きな理由となる。
一方で、オンプレミスにはいくつかのデメリットも存在する。まず、初期投資の大きさが挙げられる。ハードウェアの購入費用、ソフトウェアライセンス費用、設置工事費用、データセンターの設備費用など、システム稼働までに多額の費用が必要となる。また、システムの運用・保守にかかる負担も大きい。サーバーの日常的な監視、障害発生時の迅速な対応、セキュリティパッチの適用、OSやミドルウェアのバージョンアップ、老朽化したハードウェアの交換計画など、多岐にわたる運用業務を自社のIT部門が担うか、専門業者に委託する必要がある。これには高度な専門知識を持つIT人材の確保が不可欠であり、人件費も大きなコスト要因となる。
さらに、オンプレミスは「スケーラビリティ」(システムの拡張性)に課題を抱えることがある。ビジネスの拡大やアクセス数の急増に伴い、システムの処理能力を向上させる必要がある場合、新たなハードウェアの購入、設置、設定といった一連の作業に時間がかかり、迅速なリソース増強が難しい。計画的なキャパシティプランニング(将来の需要予測に基づくリソース計画)が不可欠だが、予測を上回る需要変動には柔軟に対応しにくい。また、災害対策も自社で全面的に講じる必要がある。地震、火災、停電といった事態に備え、耐震設備、自家発電装置、遠隔地へのデータバックアップシステムなどを独自に構築する必要があり、これにも莫大なコストと労力がかかる。
近年、クラウドコンピューティングの急速な普及により、情報システムの構築・運用形態の選択肢は大きく広がった。クラウドサービスは、サーバーやストレージ、ネットワークなどのITリソースをインターネット経由でサービスとして利用する形態であり、オンプレミスとは対照的に、ユーザーは自社でハードウェアを所有せず、必要なリソースを必要な時に必要なだけ利用する「従量課金制」が一般的である。このため、初期投資を抑え、運用負担を軽減し、柔軟なスケーラビリティを実現できるといったメリットがある。
しかし、クラウドコンピューティングの台頭後も、オンプレミスが完全に過去の技術となったわけではない。前述の通り、極めて高いセキュリティ要件や、既存のレガシーシステム(古い技術で構築されたシステム)との密接な連携が必要なケース、あるいは特殊なハードウェアやソフトウェア構成を必要とする場合など、依然としてオンプレミスが最適な選択肢となる場面は多い。また、クラウドへの移行自体にもコストやリスクが伴うため、全てのシステムをクラウドに移行することが必ずしも最善とは限らない。企業は、システムの特性、予算、セキュリティ要件、運用体制などを総合的に考慮し、オンプレミスとクラウド、あるいは両者を組み合わせたハイブリッドクラウドといった多様な選択肢の中から、最適なITインフラ戦略を策定する必要がある。システムエンジニアを目指す者にとって、オンプレミス環境の仕組みやそのメリット・デメリットを深く理解することは、現代のITインフラを語る上で不可欠な基礎知識である。