オンボード(オンボード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オンボード(オンボード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オンボード (オンボード)

英語表記

onboard (オンボード)

用語解説

「オンボード」とは、電子機器のメイン基板(特にマザーボード)上に、特定の機能を持つ部品が直接搭載されている状態を指す言葉だ。物理的に基板にはんだ付けされている場合や、CPUなどの主要な半導体チップの中に機能が統合されている場合もこれに含まれる。例えば、パソコンのマザーボード上にネットワーク機能(LAN)や音響機能(オーディオ)を司るチップが直接実装されている状態を「オンボードLAN」「オンボードオーディオ」と呼ぶ。また、近年ではCPUの内部にグラフィックス処理機能が統合されている場合が多く、これを「オンボードグラフィックス」と表現することもある。このように、別途拡張カードや外部モジュールを用意することなく、主要な基板だけで必要な機能が提供されることがオンボードの最大の特徴だ。これは、システムの小型化、コスト削減、そして設計の簡素化に大きく貢献する。

コンピュータの進化の歴史を振り返ると、オンボード化は非常に重要なトレンドだった。かつては、ネットワーク機能やグラフィックス機能といったものは、それぞれが独立した拡張カードとしてマザーボードの拡張スロットに差し込まれて利用されるのが一般的だった。しかし、技術の進歩とともにこれらの機能を実現する回路の集積度が高まり、低コストで高性能なチップが開発されるようになった結果、主要なマザーボードやCPU自体にそれらの機能を取り込むことが可能になったのだ。

オンボード化の主な利点は多岐にわたる。まず第一に、コスト削減が挙げられる。個別の拡張カードを製造し、それをユーザーが別途購入する必要がなくなるため、システム全体の製造コストやユーザーの購入コストを低く抑えることができる。次に、省スペース化だ。拡張カード分の物理的な空間が不要になるため、機器の筐体をより小型に設計することが可能になる。これはノートパソコンや小型の組み込みシステムにおいて特に重要な要素となる。さらに、電力効率の向上も期待できる。部品間の配線が短縮され、余計なインターフェースを経由しないため、信号の伝送ロスが減り、全体としての消費電力を抑えられる場合がある。また、システムのシンプル化にも寄与する。拡張カードの取り付けや取り外し、それぞれのドライバの管理といった手間が省け、エンドユーザーにとっては使い勝手が向上する。部品点数が減ることで、部品間の接触不良といった潜在的な故障原因も減少するため、信頼性の向上にもつながる。特に、グラフィックス機能がCPUに統合された「内蔵GPU」の場合、CPUとグラフィックスのデータ転送が非常に高速に行われるため、一般的な用途であれば十分な処理能力を発揮し、全体の性能バランスが最適化される。

しかし、オンボード化にはいくつかの課題や限界も存在する。最大の課題は拡張性やアップグレードの制限だ。一度マザーボードやCPUに搭載された機能は、基本的に交換したりアップグレードしたりすることができない。例えば、オンボードグラフィックスの性能が不十分だと感じても、それをより高性能なものに交換することはできないため、別途高性能なグラフィックスカードを増設する必要がある。また、オンボード機能はコストやスペースの制約から、単体の拡張カードに比べて性能が劣る場合が多い。例えば、ハイエンドなゲーミングPCやプロフェッショナル向けのワークステーションでは、オンボードグラフィックスだけでは要求される性能を満たせないため、必ず高性能な専用グラフィックスカードが使用される。さらに、オンボード部品が故障した場合、その機能だけを交換することは難しく、最悪の場合、マザーボード全体を交換する必要が生じる可能性もある。これは修理費用が高額になる原因にもなりうる。ユーザーは、メーカーが提供するオンボード機能の構成に縛られるため、選択肢の自由度が低いという側面もある。

具体的な応用例としては、以下のようなものがある。現在のほとんどのCPUには、基本的な描画処理を行うグラフィックス機能が内蔵されている。これは「内蔵GPU」や「統合型グラフィックス」と呼ばれるが、これもオンボードの一種である。パソコンのマザーボードには、有線LAN接続のためのネットワークコントローラがほぼ必ずオンボードで搭載されている。無線LANモジュールがオンボードで提供されるノートパソコンも多い。音声の入出力を行うためのオーディオコントローラも、一般的なマザーボードにはオンボードで搭載されている。SATAやNVMeといった記憶装置を制御するためのストレージコントローラも、マザーボードのチップセットに統合されている場合が多い。USBポートの機能を提供するUSBコントローラも、マザーボード上のチップセットに内蔵されている。

システム設計においてオンボード機能を選択するか、それとも拡張カードや独立したモジュールを利用するかは、システムの目的によって慎重に判断する必要がある。低コストで省スペース、そして基本的な機能で十分な一般的なオフィスPCやノートPC、あるいは組み込みシステムでは、オンボード機能が非常に有効だ。一方、最高のパフォーマンスや特定の専門機能、将来的なアップグレードの柔軟性が求められるゲーミングPC、サーバー、CAD/CGワークステーションなどでは、オンボード機能に加えて、またはそれとは別に、高性能な拡張カードやモジュールを導入するのが一般的である。システムエンジニアを目指す上では、それぞれのメリットとデメリットを理解し、適切なアーキテクチャを選択する判断力が求められることになる。

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