オンラインバックアップ(オンラインバックアップ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オンラインバックアップ(オンラインバックアップ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

オンラインバックアップ (オンラインバックアップ)

英語表記

Online backup (オンラインバックアップ)

用語解説

オンラインバックアップとは、稼働中のシステムやデータをネットワーク経由で遠隔地のストレージやクラウドサービスへ保存するバックアップ手法である。従来のオフラインバックアップが、システムを停止させてからデータをテープや外部ディスクに保存し、物理的に搬送・保管するのに対し、オンラインバックアップはシステムを稼働させたまま、継続的にデータを保護できる点が最大の特徴だ。これにより、業務停止時間を最小限に抑え、システムの可用性とデータ保護レベルを大幅に向上させることが可能となる。特に、インターネットや専用回線を介してクラウド上にデータを保管するサービスとしてのバックアップ(BaaS: Backup as a Service)が主流であり、地理的に分散されたデータセンターにデータを保存することで、自然災害や локаルな障害に対する強力な耐性を提供する。事業継続計画(BCP)や災害復旧計画(DRP)において、オンラインバックアップは現代のITインフラに不可欠な要素となっている。

オンラインバックアップの詳細な仕組みを見ていこう。データの整合性を保ちながら稼働中のシステムからバックアップを取得するためには、いくつかの技術が利用される。主要な技術の一つに「スナップショット」がある。これは、特定の時点におけるディスクやデータベースの状態を論理的に記録する技術であり、バックアップ処理が長時間かかっても、その間のデータ変更を考慮せず、スナップショット取得時点のデータを正確にバックアップできる。これにより、バックアップ対象のデータが常に変化している状態でも、整合性の取れたバックアップデータを生成できるのだ。

実際のデータ転送においては、初回のフルバックアップ以降は、変更された部分のみを転送する「増分バックアップ」や「差分バックアップ」が一般的に利用される。これにより、ネットワーク帯域の消費を抑え、バックアップ処理時間を短縮する。増分バックアップは前回のバックアップ以降に変更されたデータのみを、差分バックアップは初回のフルバックアップ以降に変更されたデータのみを保存する。これらの処理は、バックアップエージェントと呼ばれるソフトウェアを保護対象のシステムに導入し、データの抽出、圧縮、暗号化、そして遠隔地への転送を自動的に行うことで実現される。エージェントレス型のバックアップでは、仮想環境などでハイパーバイザーレベルからデータを取得するため、各仮想マシンにエージェントを導入する必要がない。

オンラインバックアップのメリットは多岐にわたる。まず、RPO(目標復旧時点)とRTO(目標復旧時間)の大幅な改善が挙げられる。システムを停止させることなくバックアップが可能なため、バックアップ頻度を高められ、障害発生時のデータ損失を最小限に抑える(RPOの短縮)ことができる。また、遠隔地にデータが保存されているため、システム障害やデータセンター全体が被災した場合でも、比較的迅速にデータを復旧できる(RTOの短縮)。地理的分散は、地震や洪水といった広域災害からのデータ保護に極めて有効である。運用面では、物理的なバックアップメディアの購入、保管、管理が不要となり、これらのコストや手間を削減できる。バックアップ処理の自動化により、運用担当者の負担も軽減される。さらに、クラウドサービスを利用する場合、データ量の増加に柔軟に対応できるスケーラビリティも大きな利点だ。データ転送時や保管時には、暗号化が施されることが一般的であり、不正アクセスからのデータ保護といったセキュリティ面でも強化されている。

一方で、オンラインバックアップには考慮すべきデメリットや課題も存在する。最大の懸念はネットワーク帯域への負荷である。特に初回フルバックアップや大量のデータをリストアする際には、膨大なデータ転送が発生し、ネットワークの混雑を招く可能性がある。安定した高速なネットワーク環境の確保が不可欠となる。また、クラウドサービスを利用する場合、データ量や転送量、データの保持期間に応じて課金されるため、コストが膨らむ可能性もある。長期的な運用を見据え、費用対効果を慎重に検討する必要がある。データのセキュリティについては、サービスプロバイダへの信頼が重要であり、契約前にセキュリティ対策やコンプライアンス要件を十分に確認すべきだ。リストアの際にも、ネットワーク速度がボトルネックとなり、大規模なデータの復旧に時間がかかる場合があるため、RTO要件を満たせるかテストしておくことが重要となる。

システムエンジニアを目指す初心者がオンラインバックアップを理解する上で、特に重要な点は、自社のRPOとRTOの要件に基づいたバックアップポリシーの策定と、定期的なテストリストアの実施である。RPOはどれくらいのデータ損失を許容できるか、RTOはどれくらいの時間でシステムを復旧させる必要があるかを示す指標であり、これらを明確にすることで、バックアップの頻度、保持期間、世代管理などの具体的な戦略を決定できる。バックアップが正しく行われているかだけでなく、実際にそのデータからシステムが復旧できるかを定期的に検証しなければ、いざという時に役に立たない「無効なバックアップ」となるリスクがある。また、どのデータをバックアップ対象とするか(ファイル、データベース、仮想マシン、OS全体など)、どのサービスプロバイダを選ぶか(信頼性、セキュリティ、サポート、コスト)といった選択も、システムの安定稼働と事業継続に直結する重要な判断である。