個人識別符号 (コジンシキベツフゴウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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個人識別符号 (コジンシキベツフゴウ) の読み方

日本語表記

個人識別符号 (コジンシキベツフゴウ)

英語表記

personal identification code (パーソナル・アイデンティフィケーション・コード)

個人識別符号 (コジンシキベツフゴウ) の意味や用語解説

個人識別符号とは、個人情報保護法によって特に厳重な取り扱いが求められる情報の区分の一つであり、特定の個人を識別できる情報の中でも、その識別性が極めて高いものを指す。システムエンジニアにとって、この概念を正確に理解し、適切に取り扱うことは、システムの法適合性、セキュリティ、そして利用者の信頼を確保する上で不可欠である。通常の個人情報が氏名や生年月日など、単体では特定が難しい場合でも、他の情報と組み合わせることで個人を識別できるのに対し、個人識別符号はそれ自体が高い識別性を持つか、または個人に割り当てられた固有の番号など、特定の個人に直接結びつく特性を持つ点が最大の特徴である。 個人識別符号は、主に二つのカテゴリーに大別される。一つは、身体的特徴をデータ化した生体情報であり、例えば、顔認識データ、指紋、虹彩、声紋、歩行の態様、DNAの塩基配列などがこれに該当する。これらの情報は、個人の身体に固有のものであり、一度採取されデータ化されると、その人物を確実に識別する強力な手段となる。もう一つは、国や地方公共団体、または特定の事業者が個人に割り当てた公的な識別子や、特定の利用用途に限定された識別子であり、具体的にはマイナンバー(個人番号)、運転免許証番号、パスポート番号、住民票コード、基礎年金番号、各種健康保険証の記号番号、金融機関の口座番号などが挙げられる。これらの番号は、特定の個人に対して一意に割り当てられ、公的な手続きやサービス利用においてその人物を識別するために用いられる。クレジットカード番号や電話番号なども、文脈によっては個人を識別する上で重要な情報となるが、個人情報保護法における「個人識別符号」の定義は、上記のような高い固有性や公的な性格を持つ情報に焦点が当てられている点に留意が必要である。 システム開発や運用において個人識別符号を取り扱う際には、通常の個人情報よりもさらに厳格な法的義務とセキュリティ要件が課せられることを理解しなければならない。個人情報保護法では、個人識別符号を含む個人情報を「要配慮個人情報」に準じる形で、その取得や利用、第三者提供において、より慎重な配慮を求めている。例えば、生体認証データを取得する際には、その利用目的を明確に特定し、本人からの適切な同意を得ることが不可欠である。また、マイナンバーのような特定の識別子は、その利用範囲が法律によって厳格に定められており、目的外利用は固く禁じられている。 これらの情報をシステムで扱う場合、データのライフサイクル全体にわたる安全管理措置の徹底が求められる。具体的には、設計段階から「プライバシー・バイ・デザイン」の思想に基づき、個人識別符号の収集を最小限に抑える、匿名加工情報や仮名加工情報として利用できないかを検討する、といった配慮が必要である。データベースに保存する際には、強力な暗号化技術を適用し、アクセス制御を厳格に設定し、不要な情報の長期保存を避けるといった対策が必須である。通信経路においては、SSL/TLSなどを用いてデータを暗号化し、盗聴や改ざんから保護する。システムの運用段階では、アクセスログを定期的に監視し、不審なアクセスがないかを確認する、脆弱性診断を継続的に実施する、従業員へのセキュリティ教育を徹底する、といった多層的な対策が求められる。万が一、個人識別符号を含む情報が漏洩した場合には、企業に与える社会的信用の失墜は計り知れず、法的な責任追及や多額の損害賠償請求に発展する可能性も非常に高い。そのため、インシデント発生時の対応計画を事前に策定し、迅速かつ適切に処理できる体制を整えておくこともシステムエンジニアの重要な責務となる。 個人識別符号は、個人の権利利益を侵害するリスクが特に高いため、システムエンジニアは技術的な側面だけでなく、法的な要件、倫理的な側面からもその取り扱いについて深く理解し、常に最新の知見と法規制に対応したシステムを構築・運用していく必要がある。利用者のプライバシー保護に対する社会的な意識が高まる中で、個人識別符号の適切な管理は、ITサービスを提供する上での基盤であり、システムエンジニアとしての専門性と信頼性を象徴するものと言える。

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