事前共有鍵 (ジゼンキョウユウカギ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

事前共有鍵 (ジゼンキョウユウカギ) の読み方

日本語表記

事前共有鍵 (ジゼンキョウユウカギ)

英語表記

Pre-shared key (プリシェアードキー)

事前共有鍵 (ジゼンキョウユウカギ) の意味や用語解説

事前共有鍵(PSK: Pre-Shared Key)とは、暗号化通信を行う際に、通信開始前にあらかじめ当事者間で共有しておく秘密の鍵のことである。PSKは、特に比較的小規模なネットワークや、認証局などの複雑なインフラを必要としない環境で、手軽に安全な通信を実現するために広く利用されている。 PSKの概要は、文字通り「事前に」「共有された」「鍵」である。通信を行うAさんとBさんがいるとする。通常、暗号化通信では、通信内容を暗号化・復号化するための鍵が必要になる。PSKを用いる場合、AさんとBさんは、通信を開始する前に、第三者に知られないように同じ秘密の鍵を共有しておく。この鍵を使って、AさんはBさんに送るデータを暗号化し、Bさんは受け取ったデータを同じ鍵で復号化することで、安全な通信が可能になる。 PSKの具体的な利用例としては、Wi-Fiの暗号化方式であるWPA/WPA2 Personal (TKIP/AES) が挙げられる。家庭や小規模オフィスなどでWi-Fiルーターを使用する際、SSID(ネットワーク名)とPSK(パスワード)を設定することが一般的だ。このPSKが、Wi-Fiルーターと接続するデバイス(スマートフォン、パソコンなど)の間で共有される秘密の鍵となる。デバイスは、このPSKを用いてWi-Fiルーターとの通信を暗号化し、不正なアクセスを防ぐ。 PSKは、設定が比較的容易であるという利点がある。複雑な設定や専門知識を必要とせず、簡単なパスワードを設定するだけで、ある程度のセキュリティを確保できる。また、認証局のような第三者機関を必要としないため、インフラコストを抑えることができる。 しかし、PSKにはいくつかの欠点も存在する。最も大きな欠点は、鍵の共有方法である。PSKは事前に当事者間で安全に共有する必要があるが、この共有プロセスがセキュリティ上の弱点となる可能性がある。例えば、口頭で伝えたり、メールで送ったりするような方法では、第三者に鍵が漏洩するリスクがある。また、鍵が漏洩した場合、その鍵を使用している全ての通信が危険にさらされる。 さらに、PSKは、鍵の管理が煩雑になる場合がある。特に、多くのデバイスやユーザーが同じPSKを使用している場合、誰かが退職したり、デバイスが紛失したりすると、全てのデバイスのPSKを変更する必要が生じる。これは、管理者にとって大きな負担となる。 PSKのセキュリティ強度は、鍵の長さに依存する。短い鍵や推測されやすい鍵を使用すると、攻撃者によって解読されるリスクが高まる。そのため、PSKを設定する際には、できるだけ長く、複雑な文字列を使用することが重要である。一般的に、英数字と記号を組み合わせた、少なくとも12文字以上の鍵が推奨される。 PSKは、小規模なネットワークや、高度なセキュリティ対策を必要としない環境では、依然として有効な選択肢である。しかし、より高いセキュリティレベルを求める場合や、大規模なネットワーク環境では、より高度な認証方式(例えば、RADIUS認証やEAP認証)の利用を検討する必要がある。これらの認証方式では、ユーザーごとに異なる鍵を使用したり、認証局による認証を行ったりすることで、PSKの欠点を補うことができる。 PSKを使用する際には、上記の利点と欠点を理解した上で、適切な利用方法を選択することが重要である。鍵の管理を徹底し、定期的に鍵を変更するなど、セキュリティ対策を講じることで、PSKのセキュリティリスクを軽減することができる。システムエンジニアは、ネットワーク環境やセキュリティ要件に応じて、PSKを含む様々な認証方式を適切に選択し、安全な通信環境を構築する責任がある。

事前共有鍵 (ジゼンキョウユウカギ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説