主成分分析 (シュセイブンブンセキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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主成分分析 (シュセイブンブンセキ) の読み方

日本語表記

主成分分析 (シュセブンブンブンセキ)

英語表記

Principal Component Analysis (プリンシパルコンポーネントアナリシス)

主成分分析 (シュセイブンブンセキ) の意味や用語解説

主成分分析は、多数の変数を含む複雑なデータから、その本質的な情報を損なわずにデータ量を削減する、多変量解析の代表的な手法の一つである。特にシステム開発において、大量のセンサーデータやユーザー行動ログなど、高次元のデータを取り扱う際に、その複雑性を低減し、より効率的な分析や機械学習モデルの構築を可能にする点で非常に重要である。この手法は、互いに相関のある多数の変数から、相関のない少数の新しい変数(主成分)を生成することで、データの次元を圧縮し、データの構造を把握しやすくすることを目指す。これにより、データの特徴を抽出し、可視化を容易にし、さらにはノイズの除去にも貢献する。 主成分分析の具体的な仕組みと応用について、さらに詳しく解説する。まず、主成分分析を行う上で最も重要なのは、元のデータが持つ「変動」や「ばらつき」を最大限に捉える新しい軸を見つけることである。データの中に存在する多様な情報のうち、どの部分が最もデータの全体像を説明する上で重要なのかを、統計的に明らかにする。 処理のステップは通常、以下のようになる。第一に、前処理として元のデータを標準化する。これは、各変数の尺度や単位が異なると、値の大きい変数が分析結果に過剰な影響を与えてしまうことを防ぐためである。標準化では、各変数の平均がゼロ、標準偏差が1になるようにデータを変換する。これにより、全ての変数が公平な重みで評価される。 次に、標準化されたデータから共分散行列を計算する。共分散行列は、全ての変数ペア間での共分散、つまりそれぞれの変数がどれだけ一緒に変動するかを示す行列である。この共分散行列を分析することで、どの変数が互いに強く関連しているか、あるいは独立しているかといった、データ内の相関構造が明らかになる。 この共分散行列に対して、固有値と固有ベクトルを計算する。固有ベクトルは、データが最も大きく分散する方向、すなわちデータの情報が最も多く詰まっている方向を示す。これらの固有ベクトルが、新しい軸である「主成分」となる。各主成分は互いに直交(無相関)しており、元の変数では捉えきれなかった独立した情報を示す。一方、固有値は、対応する固有ベクトル(主成分)がどれだけの分散、つまり情報量を説明できるかを示す数値である。固有値が大きいほど、その主成分がデータの変動をより多く説明していると言える。 続いて、これらの固有値を大きい順に並べ、上位の主成分を選択する。一般的には、累積寄与率(上位の主成分が説明する全分散の割合)が80%や90%を超えるまで、あるいは固有値が急激に減少する点(スクリープロットなどを用いて判断)を目安に、データの情報損失を最小限に抑えつつ次元を削減する適切な数の主成分を選ぶ。 最後に、選択された少数の主成分(固有ベクトル)を用いて、元の高次元データを新しい低次元空間に変換する。この変換によって得られる値が「主成分スコア」であり、これが圧縮された新しいデータ表現となる。これにより、例えば100個の変数があったデータが、たった2つや3つの主成分で元の情報の大部分を保ちつつ表現できるようになる。 主成分分析の主な利点としては、高次元データを2次元や3次元に圧縮することで、散布図などを用いてデータの可視化が容易になる点が挙げられる。また、データの冗長性を排除し、重要な特徴を抽出することで、機械学習モデルの訓練において計算コストを削減し、過学習を防ぐ効果も期待できる。 しかし、この手法にはいくつかの欠点も存在する。主成分は元の変数の線形結合であるため、各主成分が具体的に何を意味するのか、その解釈が難しい場合がある。例えば、「第一主成分」が特定のビジネス指標と直接的に関連づけにくいこともある。また、主成分分析は線形変換に限定されるため、データ内に非線形な関係性が支配的である場合には、その特徴をうまく捉えられない可能性がある。さらに、外れ値の影響を受けやすく、データの前処理が不十分だと結果が歪むこともある。これらの特性を理解し、適切に活用することが、システムエンジニアとしてデータ分析を行う上で求められる。

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