出版-購読モデル (シュッパンコウトウモデル) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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出版-購読モデル (シュッパンコウトウモデル) の読み方

日本語表記

出版-購読モデル (シュッパン コウトウ モデル)

英語表記

Publish-Subscribe Model (パブリッシュサブスクライブモデル)

出版-購読モデル (シュッパンコウトウモデル) の意味や用語解説

出版-購読モデル(Publish/Subscribe Model、またはPub/Subモデル)とは、システムのコンポーネント間がメッセージを介して非同期に通信するためのデザインパターンである。このモデルでは、情報を送信する側(出版者、Publisher)と、情報を受け取る側(購読者、Subscriber)が直接互いの存在を知ることなく、メッセージブローカー(Message Broker)という中央コンポーネントを介して間接的に連携する。これにより、システム全体の結合度が低減し、柔軟性や拡張性の高いアーキテクチャを実現できる。 このモデルの主要な構成要素は「出版者(Publisher)」「購読者(Subscriber)」「メッセージブローカー(Message Broker)」の三つである。 出版者は、特定の情報やイベントが発生した際に、その内容をメッセージとして生成し、メッセージブローカーに送信する役割を担う。ここで重要なのは、出版者はメッセージを「誰が受け取るか」や「どのように処理されるか」を一切意識しない点である。ただ、ある「トピック」または「チャネル」を指定してメッセージを発行するのみである。例えば、ECサイトで商品が購入された場合、その購入情報を「注文完了」というトピックに発行する。出版者は、購読者が複数存在するかどうか、あるいは購読者が全く存在しないかどうかも知る必要がない。 購読者は、特定の種類のメッセージに関心を示し、それをメッセージブローカーに「購読登録」する。メッセージブローカーは、購読者が登録したトピックに関連するメッセージが発行された際に、その購読者に対してメッセージを転送する。購読者もまた、メッセージが「誰によって発行されたか」や「他にどのような購読者がいるか」を意識することなく、自身が関心のあるメッセージを受け取り、自身の業務ロジックに従って処理を実行する。例えば、上記の「注文完了」トピックを購読するシステムがあれば、在庫管理システムは在庫を減らし、配送システムは配送手配を開始するといった処理をそれぞれ独立して実行できる。 メッセージブローカーは、出版者と購読者の間に位置し、メッセージのルーティングと転送を行う中央集約型のコンポーネントである。出版者から受け取ったメッセージを、そのメッセージのトピックを購読している全ての購読者へ適切に配信する役割を担う。これにより、出版者と購読者の直接的な依存関係が排除され、システム全体の疎結合性が実現される。メッセージブローカーは、メッセージの一時的な保存(キューイング)、フィルタリング、永続化といった機能を持つ場合が多く、これによりシステムの信頼性やスケーラビリティが向上する。例えば、一時的に購読者がダウンしていても、メッセージブローカーがメッセージを保持しておき、購読者が復旧した際にメッセージを再送するといったことが可能になる。 出版-購読モデルの主な利点は多岐にわたる。まず、システムコンポーネント間の疎結合性が高まることで、個々のコンポーネントが独立して開発、デプロイ、スケール可能になる。これは、大規模な分散システムやマイクロサービスアーキテクチャにおいて特に有効である。あるコンポーネントの変更が他のコンポーネントに与える影響が最小限に抑えられるため、システムの保守性や拡張性が向上する。また、メッセージのやり取りが非同期で行われるため、出版者はメッセージを送信した後、購読者の処理完了を待つ必要がない。これにより、システム全体の応答性が向上し、リアルタイム処理が求められるアプリケーションに適している。さらに、メッセージブローカーを介することで、システムの負荷分散が容易になり、高いスケーラビリティを実現できる。複数の購読者が同じトピックを購読することで、メッセージ処理を並列化することも可能である。 しかし、このモデルにはいくつかの考慮事項も存在する。メッセージブローカーはシステムの中核を担うため、その可用性やパフォーマンスがシステム全体の安定性に直結する。メッセージブローカー自体がボトルネックになったり、障害が発生したりすると、システム全体に影響が及ぶ可能性があるため、適切な設計と運用が必要となる。また、メッセージブローカーの導入により、システム全体の構成が複雑になる傾向があり、特にメッセージの流れを追跡するデバッグ作業が困難になる場合がある。さらに、メッセージの順序性が重要となる場面では、メッセージブローカーが提供する保証レベル(例:At-least-once, Exactly-once)を理解し、必要に応じてアプリケーション側で順序性を担保する仕組みを実装する必要がある。これらの点を考慮し、システムの要件に合わせた適切な実装が求められる。

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