純粋関数 (ジュン スイ カン スウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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純粋関数 (ジュン スイ カン スウ) の読み方

日本語表記

純粋関数 (ジュン スイ カンスウ)

英語表記

pure function (ピュアファンクション)

純粋関数 (ジュン スイ カン スウ) の意味や用語解説

純粋関数とは、プログラミングにおける関数の特性の一つで、特定の条件を満たす関数のことを指す。これは、関数型プログラミングの根幹をなす概念だが、オブジェクト指向プログラミングなど、他のパラダイムを用いる場合でも、コードの品質を高める上で非常に重要とされる。純粋関数が持つ主要な特性は二つある。一つは「同じ入力には常に同じ出力が返る」こと、もう一つは「関数の外部に副作用をもたらさない」ことである。これらの特性により、プログラムの予測可能性、テストの容易性、デバッグのしやすさ、そして並行処理の安全性が大きく向上する。 まず「同じ入力には常に同じ出力が返る」という特性について詳しく説明する。この特性は「参照透過性」とも呼ばれ、関数に与える引数が同じであれば、何度呼び出しても常に全く同じ結果が返ってくることを保証する。例えば、二つの数値を加算する関数`add(a, b)`を考える。`add(2, 3)`と呼び出せば常に`5`が返り、他のどのような要因によっても結果が変わることはない。これが純粋関数である。 一方で、純粋関数ではない例として、現在時刻を取得して返す関数、乱数を生成する関数、あるいはグローバル変数や外部データベースの状態に依存して結果が変わる関数が挙げられる。例えば、`getTime()`関数は呼び出すたびに異なる時刻を返すため、同じ入力(引数なし)であっても常に同じ出力は返らない。また、`getRandomNumber()`関数も同様に、呼び出すたびに異なる乱数を返す。さらに、`calculateInterest(amount)`という関数が、現在の金利をグローバル変数や外部設定ファイルから取得して計算する場合、その金利が変更されれば、同じ`amount`を与えても異なる結果が返る可能性がある。これらの関数は、その振る舞いが外部の状態や時間、あるいは内部の非決定性に依存するため、純粋関数ではないと判断される。 次に「関数の外部に副作用をもたらさない」という特性について掘り下げる。副作用とは、関数がその戻り値を返す以外の方法で、プログラムの外部環境や状態に何らかの変化を与えることである。純粋関数は、引数として受け取った値のみを使い、その計算結果を戻り値として返すことだけに専念し、それ以外のいかなる外部の状態も変更しない。 副作用の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。グローバル変数の値を変更する、ファイルにデータを書き込む、データベースの内容を更新する、画面にメッセージを表示する、ネットワークを通じてデータを送信する、あるいは引数として渡されたオブジェクトのプロパティを直接変更する、といった操作は全て副作用にあたる。例えば、`updateUser(user)`という関数が、引数で渡された`user`オブジェクトの`status`プロパティを「アクティブ」に変更し、その変更されたオブジェクトをそのまま返す場合、これは引数として渡されたオブジェクトの状態を変更しているため、副作用があると言える。純粋関数であれば、`updateUser`は新しい「アクティブ」なユーザーオブジェクトを作成して返し、元の`user`オブジェクトは変更しない。このように、副作用がないことで、関数が実行されることによって、プログラムの他の部分に予期せぬ影響が及ぶ心配がなくなる。 これらの特性を持つ純粋関数を採用することには、いくつかの重要なメリットがある。 第一に、**テストの容易性**が向上する。純粋関数は、入力に対して常に同じ出力が保証され、外部の状態に依存しないため、テストケースの作成が非常に簡単になる。特定の入力に対する期待される出力を定義するだけでよく、テストのセットアップやティアダウン(環境の準備と後片付け)がほとんど不要になる。 第二に、**デバッグのしやすさ**が増す。プログラム内でバグが発生した場合、副作用のある関数では、そのバグが他の部分に影響を与え、原因の特定が困難になることが多い。しかし、純粋関数であれば、関数の内部処理と入力値のみに注目すればよく、関数の呼び出し順序や外部の状態変化を考慮する必要がなくなるため、問題の切り分けが容易になる。 第三に、**並行処理(並列処理)の安全性**が高まる。副作用がないということは、複数のスレッドやプロセスから同時に同じ関数が呼び出されても、データ競合(Race Condition)が発生する心配がないことを意味する。各呼び出しは互いに干渉せず、独立して実行できるため、ロック機構などの複雑な同期処理を導入する必要性が減り、並行プログラミングが格段に安全かつ簡単になる。 第四に、**コードの理解しやすさ**と**予測可能性**が向上する。関数の振る舞いがその入力だけで完全に決まり、外部の状態に左右されないため、コードを読んだり、その機能を理解しようとする開発者にとって、関数の動作が非常に予測しやすくなる。 最後に、**最適化の可能性**が広がる。参照透過性があるため、一度計算した結果をキャッシュしておき、同じ入力が再び与えられた際には再計算を省略してキャッシュされた結果を返す「メモ化(Memoization)」といった最適化手法が適用できるようになる。これにより、特に計算コストの高い関数において、プログラムの実行速度を大幅に向上させることが可能になる。 純粋関数だけでシステム全体を構築することは現実的ではないが、可能な限り純粋関数として実装できる部分はそうすることで、システムの堅牢性、保守性、拡張性を大きく高めることができる。システムエンジニアを目指す上で、純粋関数の概念とそのメリットを理解し、副作用を持つ部分と純粋な計算部分を明確に分離して設計する習慣を身につけることは、高品質なソフトウェア開発に不可欠なスキルとなる。この原則を意識してコードを書くことは、バグの少ない、理解しやすい、そして変更に強いシステムを構築するための第一歩となる。

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