再実行 (サイジッコウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
再実行 (サイジッコウ) の読み方
日本語表記
再実行 (サイジッコウ)
英語表記
re-execute (リエグゼキュート)
再実行 (サイジッコウ) の意味や用語解説
再実行とは、コンピュータシステムやプログラムにおいて、一度実行した処理や操作を、何らかの理由により再び実行することを指す。これは、システムの安定性や信頼性を確保するために不可欠な概念である。処理が失敗した際に、その原因が一時的なものであれば、時間を置いて再度実行することで正常に完了する可能性がある。例えば、ネットワークの通信が一時的に不安定になった場合や、アクセス先のサーバーが瞬間的に高負荷になった場合などがこれにあたる。システムエンジニアは、障害発生時にシステムを自動的に復旧させたり、データの整合性を保ったりするために、この再実行の仕組みを適切に設計および実装する必要がある。 再実行が特に重要となるのは、エラーハンドリングの文脈である。システムが遭遇するエラーは、大きく分けて二種類存在する。一つは「一時的なエラー」であり、もう一つは「永続的なエラー」である。一時的なエラーは、ネットワークの瞬断、データベースのロック競合、外部APIの一時的な応答不能など、時間経過によって自然に解消される可能性が高いものを指す。このようなエラーに対して、再実行は非常に有効な回復戦略となる。この自動的な再実行の仕組みは一般的に「リトライ」と呼ばれる。リトライを実装する際には、いくつかの重要な考慮点がある。まず、無限に再実行を繰り返さないように「最大リトライ回数」を設定する必要がある。これを怠ると、解消されないエラーに対して無限に処理を繰り返し、システムリソースを無駄に消費し続ける無限ループに陥る危険がある。次に「リトライ間隔」の設定が重要である。エラー発生後すぐに再実行すると、エラーの原因となった負荷をさらに高めてしまう可能性があるため、一定時間待機してから再実行するのが一般的である。さらに高度な手法として「バックオフ」がある。これは、リトライを繰り返すたびに待機時間を徐々に長くしていく方式で、特に指数関数的に待機時間を増やす「エクスポネンシャルバックオフ」がよく用いられる。これにより、障害が発生しているシステムが回復するための時間を十分に与えることができる。また、多数のクライアントが同時にエラーを検知し、同じタイミングでリトライを開始すると、サーバーに再び膨大な負荷がかかる問題が発生することがある。これを避けるために、バックオフで計算された待機時間にランダムな時間を加える「ジッター」というテクニックも併用される。 一方、永続的なエラーは、プログラムのバグ、設定ファイルの誤り、存在しないデータへのアクセスなど、何度実行しても結果が変わらず、必ず失敗する種類のエラーを指す。このようなエラーに対して再実行を行うことは無意味であり、むしろ問題を悪化させる可能性すらある。したがって、システムはエラーの種類を適切に判別し、再実行すべきエラーとそうでないエラーを区別するロジックを持つ必要がある。 再実行を安全に行うために、システム設計において極めて重要な性質が「冪等性(べきとうせい)」である。冪等性とは、ある操作を一度実行した場合と、何度繰り返し実行した場合とで、得られる結果が常に同じであることを保証する性質を指す。例えば、銀行の振込処理を考えてみる。ネットワークエラーで振込処理がタイムアウトした場合、処理が成功したのか失敗したのかクライアント側では判断できない。このとき、もし単純に処理を再実行してしまうと、二重に振り込みが行われる危険性がある。しかし、この振込処理に冪等性が確保されていれば、何度再実行しても振り込みは一度しか行われない。冪等性を確保する一般的な方法としては、各処理に一意なトランザクションIDを付与し、サーバー側でそのIDを持つ処理が既に実行済みかどうかを記録・確認する仕組みを導入することが挙げられる。これにより、同じIDを持つリクエストが再度送られてきても、初回のみ処理を実行し、二回目以降は実行済みである旨を応答するだけで済む。 再実行は、自動的なリトライだけでなく、手動での操作も含まれる。例えば、夜間に実行される大規模なデータ処理(バッチ処理)が途中で失敗した場合、運用担当者が原因を調査・修正した上で、処理を途中から、あるいは最初から再実行することがある。このような手動再実行を可能にするためには、処理の進捗状況を記録し、失敗した箇所から再開できるような「リラン可能性」を考慮した設計が求められる。どこまで処理が完了したかを記録しておくことで、全ての処理を最初からやり直す無駄を省き、効率的な復旧作業を実現できる。 システム開発において、再実行は単なるエラー対策にとどまらない。ユーザーの誤操作による意図しない再実行(ブラウザの再読み込みボタンの連打など)への対策や、分散システムにおける各コンポーネント間の通信の信頼性確保など、その適用範囲は多岐にわたる。堅牢で回復力の高いシステムを構築するためには、どのような状況で再実行が発生しうるかを想定し、リトライ戦略や冪等性の確保といった技術を適切に組み合わせて設計することが、システムエンジニアにとって不可欠なスキルとなる。いつ、なぜ、何回再実行されたかを正確にログとして記録しておくことも、後の障害調査やシステムの挙動分析において重要な役割を果たす。