回復ポイント目標(リカバリーポイントゴール)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
回復ポイント目標(リカバリーポイントゴール)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
かいふくポイントもくひょう (カイフクポイントモクヒョウ)
英語表記
Recovery Point Objective (リカバリポイントオブジェクティブ)
用語解説
回復ポイント目標とは、システム障害や災害が発生した際に、どの時点のデータまでを復旧させるかを示す目標値のことである。英語ではRecovery Point Objectiveと表記され、その頭文字を取ってRPOと略される。この指標は、システムが停止した時点から遡って、どのくらい前までのデータ損失を許容できるかという時間を表す。例えば、RPOが「1時間」と設定されているシステムの場合、障害発生直前から最大で1時間分のデータが失われることを許容するという意味になる。逆に言えば、障害発生の1時間前までのデータは、必ず復旧できる状態にしておかなければならない。RPOは、事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)計画を策定する上で極めて重要な指標の一つとして位置づけられる。なぜなら、RPOを定めることで、企業や組織が許容できるデータ損失の限界が明確になり、それを実現するために必要なバックアップの頻度やデータ保護の方式を具体的に決定できるからである。RPOの値は短ければ短いほど、失われるデータ量が少なくなるため、利用者や事業への影響を最小限に抑えることができる。しかし、RPOを短くすればするほど、高頻度なバックアップや高性能なデータ複製技術が必要となり、システム導入や運用のコストは増大する傾向にある。したがって、システムの重要度やデータの更新頻度、事業への影響度などを総合的に評価し、コストとのバランスを考慮しながら、システムごとに最適なRPOを設定することが求められる。
回復ポイント目標(RPO)をより深く理解するためには、関連する指標である回復時間目標(RTO)との違いを明確に認識しておく必要がある。RTOはRecovery Time Objectiveの略で、システム障害が発生してから、システムを復旧させてサービスを再開するまでに要する目標時間を指す。RPOが「失われるデータの量(時間)」の目標であるのに対し、RTOは「システムが停止している時間」の目標であるという点で根本的に異なる。この二つの指標は、事業継続性を確保する上で両輪をなすものであり、混同せずに正しく理解することが重要である。RPOを決定する際には、様々な要因を考慮する必要がある。まず、対象となるシステムの業務上の重要性が挙げられる。顧客の注文をリアルタイムで処理するオンライン取引システムのように、データの損失が直接的な金銭的損失や信用の失墜につながるシステムでは、RPOを限りなくゼロに近づける必要がある。一方で、データの更新頻度が低い社内情報共有サイトなどでは、比較的長いRPOを設定することも可能である。また、業界の規制や法的な要件によって、データの保全に関する特定の基準が定められている場合もあり、それらを満たすRPOを設定しなければならない。RPOを実現するための具体的な技術的アプローチはいくつか存在する。最も一般的な方法は定期的なバックアップである。バックアップは取得する間隔がそのままRPOに直結する。例えば、1日に1回、深夜にバックアップを取得しているシステムのRPOは最大で24時間となる。より短いRPOを目指す場合は、バックアップの頻度を上げる必要がある。さらに短いRPO、例えば数分や数秒といったレベルを目指す場合には、レプリケーション(複製)という技術が用いられる。レプリケーションは、本番環境のデータをリアルタイムに近い形で待機環境のストレージに複製する技術である。これには、データの書き込み完了を本番環境と待機環境の両方で確認する同期レプリケーションと、本番環境での書き込み完了後に非同期で待機環境にデータを転送する非同期レプリケーションがある。同期レプリケーションはデータ損失をゼロにできる(RPO=0)可能性があるが、システムの応答性能に影響を与えることがある。非同期レプリケーションは性能への影響が少ない一方、わずかながらデータ転送の遅延が発生するため、ゼロではない短いRPOの実現に適している。その他、ストレージの特定時点の状態を瞬時に保存するスナップショット技術や、データの変更履歴を常に記録し続ける継続的データ保護(CDP)といった技術もあり、これらを組み合わせることで、システムの要件に応じた柔軟なデータ保護戦略を構築することが可能となる。設定したRPOが実際に達成可能であるかを確認するために、定期的な復旧テストを実施することも運用上の重要なプロセスである。