再帰問い合わせ (サイキトイアワセ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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再帰問い合わせ (サイキトイアワセ) の読み方

日本語表記

再帰問い合わせ (サイキトイアワセ)

英語表記

recursive query (リカーシブクエリ)

再帰問い合わせ (サイキトイアワセ) の意味や用語解説

再帰問い合わせとは、自己参照的なデータ構造を持つ情報を、自分自身を参照しながら繰り返し検索・処理するデータベース問い合わせの手法である。一般的なSQL問い合わせでは、テーブル内のレコードを横断的に検索したり、結合によって関連する情報を取得したりするが、階層的に連なるデータ、例えば組織図における上司と部下の関係や、部品構成表における親部品と子部品の関係、ウェブサイトのコメント欄における親コメントと子コメントの関係など、特定のレコードから派生していくデータを効率的にたどることは難しい場合がある。再帰問い合わせは、このような、どこまでも続く可能性のある階層構造やグラフ構造を持つデータを扱う際に、その真価を発揮する。 この問い合わせ手法の基本的な考え方は、まず階層の起点となるデータを特定し、次にその起点から一段階下、あるいは一段階上の関連データを取得し、さらに取得したデータから次の関連データを取得するという処理を、関連データがなくなるまで繰り返す点にある。これは、あたかもツリーの根から枝葉へとたどっていく、あるいは葉から根へとさかのぼっていくようなイメージである。 具体的に、多くのリレーショナルデータベース管理システムでは、SQLの標準機能である「WITH RECURSIVE」句(一部のシステムでは「CONNECT BY」句など独自の拡張が提供される場合もあるが、ここでは標準的なWITH RECURSIVEに焦点を当てる)を用いることで再帰問い合わせを実現する。WITH RECURSIVE句は、共通テーブル式(CTE: Common Table Expression)の一種であり、再帰的な定義を許容する特別なCTEとして機能する。 WITH RECURSIVE句を用いた再帰問い合わせは、大きく分けて二つの部分から構成される。一つは「アンカーメンバー」と呼ばれる部分で、これは再帰処理の最初のステップ、つまり階層の起点となる初期データを定義する。例えば、組織図で特定の上司の配下全てを検索したい場合、その特定の上司自身がアンカーメンバーとなる。部品構成表であれば、最終製品の部品IDがアンカーメンバーになり得る。 もう一つは「再帰メンバー」と呼ばれる部分で、これはアンカーメンバーまたは前回の再帰メンバーの結果を基に、次の階層のデータを取得するロジックを定義する。この再帰メンバーは、前回の結果セットを参照し、それに基づいて新たな結果セットを生成する。この「前回の結果セットを参照する」という部分が、再帰問い合わせの「自分自身を参照する」という核心的な特徴を体現している。 これらアンカーメンバーと再帰メンバーは、「UNION ALL」演算子によって結合される。UNION ALLは、両方のメンバーから得られた結果を行として結合し、一つの結果セットとして出力する。再帰メンバーは、このUNION ALLで結合された結果セットのうち、直前のステップで生成されたデータだけを参照して次のステップを実行する。 再帰問い合わせの処理の流れは以下のようになる。まず、アンカーメンバーが一度だけ評価され、その結果が初期の作業セットとして保持される。次に、再帰メンバーがこの作業セットを「入力」として評価され、新たな結果セットを生成する。この新たな結果セットが、再び再帰メンバーの次の「入力」となる。このプロセスは、再帰メンバーが何も新しい行を生成できなくなるまで、つまり階層の末端に到達するまで繰り返される。最終的に、アンカーメンバーの初期結果と、各ステップで再帰メンバーが生成した全ての結果が、一つの大きな結果セットとして結合され、問い合わせの最終的な出力となる。 例えば、社員テーブルに「社員ID」と「上司ID」という列がある場合を考える。ある特定の社員の配下にある全社員(直属の部下だけでなく、その部下の部下…と続く全員)をリストアップしたいとき、通常のJOINだけでは、階層の深さが固定されていないため、何回JOINすればよいか事前に決定できない。しかし、再帰問い合わせを使えば、アンカーメンバーで「対象の社員ID」を指定し、再帰メンバーで「直前の結果セットの社員IDを上司IDに持つ社員」を検索するというロジックを記述することで、全ての配下社員を一度の問い合わせで取得できる。 再帰問い合わせを利用する上でいくつか注意すべき点がある。最も重要なのは、無限ループに陥らないようにすることである。再帰メンバーのロジックが適切でない場合、循環参照(例:AがBの上司で、BがAの上司というような関係)が発生すると、再帰処理が永遠に終了しなくなる可能性がある。これを防ぐためには、再帰メンバーの条件式を適切に設定し、処理が必ず停止するような「停止条件」を明確に定義することが不可欠である。多くのデータベースシステムでは、再帰レベルの深さに上限が設けられているため、無限ループを検知した場合にはエラーとなるが、これは望ましい挙動ではない。また、再帰問い合わせは、通常の問い合わせと比較して、多くのリソース(CPUやメモリ)を消費する傾向がある。特に、階層が非常に深く、データ量も膨大になる場合には、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性があるため、慎重な設計と、実行計画の確認といった最適化作業が重要となる。 再帰問い合わせは、組織構造の可視化、製品の部品表展開、SNSのコメントツリー構築、ネットワーク経路の探索など、多岐にわたるシステム開発において非常に強力なツールとなる。システムエンジニアを目指す上では、この再帰問い合わせの概念とその実装方法を理解することは、複雑なデータ構造を効率的に扱うための重要なスキルの一つである。

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