経路制御表 (ケイロセイギョウヒョウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
経路制御表 (ケイロセイギョウヒョウ) の読み方
日本語表記
経路制御表 (ケイロセイギョウヒョウ)
英語表記
routing table (ルーティングテーブル)
経路制御表 (ケイロセイギョウヒョウ) の意味や用語解説
経路制御表、またはルーティングテーブルとは、ネットワーク機器、特にルーターが、受信したデータパケットをどこに転送すれば目的地に到達できるかを判断するために用いる情報の一覧である。インターネットをはじめとするIPネットワークにおいて、データ通信の根幹を支える非常に重要な要素である。ルーターは、経路制御表に記載された情報に基づいて、パケットの宛先IPアドレスを分析し、最も適切な次の転送先(ネクストホップ)と出力インターフェースを決定する。これにより、パケットは複雑に分岐するネットワークの中から正しい道をたどって最終的な目的地へと届けられる。経路制御表は、言わばネットワークにおける地図であり、ルーターはこの地図を参照しながらパケットを誘導する役割を担っている。 経路制御表は、複数のエントリ(経路情報)から構成されており、各エントリにはパケットの転送に必要な様々な情報が含まれる。主要な構成要素は以下の通りである。 まず、「宛先ネットワークアドレスとプレフィックス長」は、パケットの宛先が属するネットワークを識別するために使用される。例えば、192.168.1.0/24のような形式で表現され、この情報によりルーターはパケットが特定のネットワークセグメント向けであるかを判断する。プレフィックス長は、ネットワークアドレスのうち何ビットがネットワーク部であるかを示し、ルーティングの際に最も具体的な(プレフィックス長が最も長い)経路が優先される「最長一致の原則」の基盤となる。 次に、「ネクストホップ」または「ゲートウェイ」は、指定された宛先ネットワークへパケットを到達させるために、次にパケットを転送すべきルーターや機器のIPアドレスである。ルーターは、このネクストホップアドレスにパケットを転送することで、最終目的地への経路を順々にたどっていく。直接宛先ネットワークに接続されている場合は、ネクストホップは不要となり、直接出力インターフェースから送信される。 「出力インターフェース」は、パケットを物理的に送信するルーターのポート(イーサネットポートなど)を指す。ルーターは、どの物理的な接続を通してパケットを送り出すべきかを、この情報から判断する。 「メトリック」は、特定の経路の「コスト」や「距離」を示す数値であり、複数の経路が存在する場合に、どの経路が最も効率的または優先されるかを決定するために使用される。一般的に、メトリック値が小さいほど、その経路は「良い」と判断され、優先的に選択される。メトリックは、ホップ数(経由するルーターの数)、帯域幅、遅延など、ルーティングプロトコルによって様々な基準で計算される。 「プロトコル」は、その経路情報がどのように経路制御表に学習されたかを示す。主な学習方法には、ルーターに直接接続されているネットワークを自動的に認識する「直接接続経路」、管理者が手動で設定する「スタティック経路」、そしてルーティングプロトコル(RIP、OSPF、BGPなど)を用いて他のルーターと経路情報を自動的に交換・学習する「ダイナミック経路」がある。直接接続経路は最も信頼性が高く、メトリック値も最も低い(優先度が高い)。スタティック経路はシンプルなネットワークでは有効だが、ネットワークの構成変更に弱い。ダイナミック経路は大規模ネットワークで自動的な経路選択と障害時の経路切り替えを可能にするが、設定が複雑になる場合がある。 ルーターがパケットを受信すると、まずそのパケットの宛先IPアドレスを検査する。その後、経路制御表を上から順に検索するのではなく、より詳細な情報を持つ経路(最長一致)を優先的に探し出す。最適な経路エントリが見つかると、ルーターはそのエントリに指定されたネクストホップと出力インターフェースに基づいてパケットを転送する。もし、経路制御表の中に一致する宛先ネットワークが存在しない場合、多くの場合「デフォルト経路」と呼ばれる特別な経路(通常はインターネットへの出口)にパケットを転送する。デフォルト経路も存在しない場合は、そのパケットは破棄される。 経路制御表は、ネットワークの機能と性能を維持するために不可欠な要素である。適切な経路制御表がなければ、データパケットは目的地に到達できず、ネットワーク通信は成立しない。ネットワーク管理者は、経路制御表の内容を正確に理解し、必要に応じて設定を調整することで、ネットワークの効率性、信頼性、そしてセキュリティを確保するのである。