スケールイン (スケールイン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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スケールイン (スケールイン) の読み方

日本語表記

スケールイン (スケールイン)

英語表記

scale in (スケールイン)

スケールイン (スケールイン) の意味や用語解説

「スケールイン」とは、システムが使用するコンピューティングリソースの量を削減する処理を指す言葉である。これは、システムが処理する負荷が減少した際や、初期設計時に過剰なリソースを割り当てていた場合に、不要なリソースを解放し、効率的な運用を実現するために行われる。 システム運用においては、ユーザーからのアクセス数や処理要求の増加に対応するために、リソースを増やす「スケールアウト」や「スケールアップ」が一般的に行われる。スケールインはこれらとは逆の操作であり、リソースを減らすことで運用コストの最適化やリソースの無駄遣いを防ぐことを主な目的とする。 詳細に説明すると、スケールインの最大の目的はコスト削減である。サーバーやデータベース、ネットワーク機器といったハードウェア、またはクラウドサービスにおける仮想マシンやストレージなどのリソースには、購入費用や利用料金、さらには電力消費コスト、運用管理にかかる人件費などが伴う。システムへの負荷が減少し、必要なリソースが少なくなったにもかかわらず、過剰なリソースを稼働させ続けていると、これらのコストが無駄に発生し続けることになる。スケールインは、この無駄を排除し、費用対効果の高いシステム運用を実現するための重要な手段だ。また、不要なリソースを停止することで、消費電力の削減による環境負荷の低減にも貢献する。 スケールインには、大きく分けて二つの種類がある。一つは「水平スケールイン(スケールダウン)」、もう一つは「垂直スケールイン(スケールアップの逆)」である。 水平スケールインは、システムを構成するサーバーやインスタンスの台数を減らすことを意味する。例えば、ウェブサービスへのアクセスがピーク時に比べて大幅に減少した場合、不要になったウェブサーバーやアプリケーションサーバーの稼働台数を削減するケースがこれに該当する。台数を減らすことで、個々のサーバーが消費する電力やクラウドサービスの利用料金を直接的に削減できる。水平スケールインを実行する際には、まずロードバランサ(負荷分散装置)などの機器から、削減対象となるサーバーへの新規リクエストの振り分けを停止する。その後、既存の処理が終了したことを確認し、安全にサーバーを停止、または削除するといった手順が踏まれる。この方法は、ユーザーセッションや状態情報をサーバー自身が保持しないステートレスなアプリケーションにおいて実施しやすく、柔軟なリソース調整が可能となる。 垂直スケールインは、個々のサーバーやインスタンスのスペック(性能)を低下させることを指す。例えば、非常に高性能なCPUや大容量のメモリを搭載したサーバーを稼働させていたが、実際にはその性能の大部分が使われていないと判明した場合、より低スペックなサーバーに切り替える、あるいは現在のサーバーのCPUコア数やメモリ容量を減らすことがこれに該当する。この操作は、一般的にサーバーを一度停止し、設定を変更した後に再起動する必要があるため、システムの一時的な停止を伴う場合が多い。垂直スケールインは、データベースサーバーのように、複数のインスタンスに負荷を分散することが難しいシステムにおいて検討されることがあるが、水平スケールインと比較すると、実施の頻度は低い傾向にある。これは、一般的にシステムの成長に合わせてスペックを向上させる垂直スケールアップが主な利用形態であり、一度上げたスペックを落とすケースは比較的稀であるためだ。 スケールインを実行するタイミングは、システムの負荷状況の監視結果に基づいて判断される。具体的には、アクセス数が減少する夜間帯や休日、季節イベントの終了後、特定のキャンペーン期間の終了後などが挙げられる。システム監視ツールを活用し、CPU使用率、メモリ使用率、ネットワークトラフィックなどのメトリクスが長期間にわたって低い水準で推移している場合に、スケールインの検討が始まる。 クラウド環境では、「オートスケーリング」という機能が提供されており、これを利用することで、システムの負荷状況に応じて自動的にスケールインを行うことが可能になる。管理者が事前に設定した閾値(例えば、CPU使用率が特定の値を下回り、かつその状態が一定時間継続した場合)に基づいて、不要なインスタンスが自動的に停止・削除される。これにより、手動でのリソース調整の手間が省け、より効率的かつコスト効果の高い運用が実現される。 ただし、スケールインの実施にはいくつかの注意点がある。最も重要なのは、サービスの可用性を損なわないことだ。リソースを削減しすぎると、予期せぬアクセス増加があった際にシステムが処理しきれなくなり、パフォーマンスの低下やサービス停止につながる可能性がある。そのため、スケールインの閾値設定や削減するリソース量の決定は慎重に行う必要がある。また、サーバーを削除する際には、そのサーバーが保持していたデータが永続化されているか、または他のサーバーに適切に引き継がれているかを確認することも重要である。特に、ユーザーの状態情報などを持つステートフルなアプリケーションの場合、データの一貫性を保つための周到な計画と手順が求められる。スケールインの実施後には、システムが正常に動作しているか、パフォーマンスに問題がないかを十分に確認し、万が一の事態に備えて迅速に元に戻せるようなロールバック手順も考慮しておくべきだ。 スケールインは、ITシステムを運用する上で、コスト効率と安定性のバランスを取るための不可欠な技術であり、システムのライフサイクル全体を通して継続的に検討されるべきプロセスである。

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